empathy

4.

楽しみにしていたはずのドラマを見逃した。

今日20:00に解禁だったMVもそういえば観ていない。

ご飯も食べたくないし、お風呂に入るのも面倒くさい。

明日は学校に行こうと思っていたけど、起きれなくてもいい気がする。

このまま目を閉じて、ベッドに沈んで消えてしまったら気持ち良さそうだなと思った。

（……やばい）

腰の辺りから沈んで行った私の姿が消え、跡形もなくなったベッドを想像した。
そして私はそのワクワクをギリギリでどうにか制し、自分の感情に視点を戻した。

私はこの感覚を「知って」いた。

それは過去イチ母を心配させた「同期」だった。
中3の頃だったから、思春期とか受験のストレスのせいもあったかもしれない。
「自分が消えていく様子を想像するコトだけにワクワクする」
その先にある大きな幸福感だけが正しい気がして、後はどうでもよくなった。

その時はたまたま、いつもは呑気な主治医が珍しく「医者の顔」をして私を眠らせてくれたから、今もこうして生きているのだけど。

「この先また、この感情の類と「同期」したときの為に……」と、その人が抜けた後に主治医は現代人に蔓延る病について色々と教えてくれた。

「……どうしよう」

何もしたくない感情に必死で抵抗しながら、自分の感情を探る。
不安と焦りの感情は二人とも持っているらしく、無駄に心臓が速く動いて痛い。