empathy

hana4

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「東京ってさ、スマホの中の世界みたいじゃない?」

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渋谷のスクランブル交差点を見下ろすカフェで、涼君が言った。

カラフルなドッドが交差して蠢くように人の波が動く。
その言葉の終わりの方から、切なさが少し込み上げてきた。

「楽しい事も、好きな事も、知りたい事も……何でもある」

ストローを咥えたまま、焦って涼君の表情を確認する。
甘いクリームが口の中でひろがって、冷たさだけが身体の中へ落ちた。


「出会いもすれ違いも、感動も恐怖も……何か人生全てがこの交差点の中にありそうな気がしない?
それが何か似てるなって」

少し困ったように笑う涼君に落ちかけた太陽が影を作ると、教室で明るく振る舞う彼とは違うその表情に思わず見惚れてしまう。

私の作り出した不思議な沈黙を破ったのは涼君の方だった。

「俺の……炎上したやつ知ってたんでしょ?」

「う、うん」

跳ね上がった心臓は、私の表情から涼君にも容易く確認できただろう。
平静を装って振り絞った返事は、彼の眉を更に下げさせてしまった……

「あの日、何食わぬ顔で学校行ったらさ、皆普段と全く同じように話しかけてきて、
最初はそれが心地よかったんだけど
 ──段々、って疑えてきて……」

少し俯きがちになった涼君の長い睫毛に、涙が溜まっていないかを必死で探す。

「そのまま……こう……何ていうか……」
「全部どうでもよくなってきた?」

それが彼の表情を更に曇らせる事なんて簡単に想像できたはずなのに、思わず手元にあったその答えを返してしまう。
まるで彼の事をことを誇示したい私そのものが見えてしまったようで、私の方の瞳が潤んだ。

「そうっ!……はは、情けないよね?あれくらいで」
「そんな事無いよっ!あんな感情になったら誰だってっ」
「なっちゃんてさ、凄い俺の気持ちわかってくれるっていうか……気が合うっていうか……」
「っ、ごめん」
「え?なんで謝るの?なっちゃんのお陰でホント助かったし……」

その目に涙が溜まらない様に見守る私の視線と、涼君の澄んだ瞳がぶつかった。
その反動で左右に揺れる彼の瞳が、濡れていなくて本当に良かった。

すこしぼやけた視界に、決意を込めた様な彼の視線が戻って来る。

二人分だとしても有り余るほどの鼓動の高鳴りを感じ、私は目を見開いてその瞳を確認した。

「……好きです」

店内の騒めきが聞こえなくなり、窓の下では無数のカラフルなドットがまた一斉に動き始めている。
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