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早めにかけておいたアラームの音で目を覚ますと、若菜は迅る想いで階段を駆け降りた。
「……お母さんっ!!」
「どうしたの?そんなに驚いて?ずいぶんと早起きね。そんなに焦らなくても入学式には間に合うから大丈夫よ?でも良かった。その様子じゃ熱もすっかり下がってるんでしょ?」
若菜は母に抱きつきたい気持ちをグッと堪え、思わず満面の笑みがこぼれてしまうのは我慢しなかった。目の前には、若菜にとっては四年ぶりの再会であるこの世界の母相馬美幸の姿がある。
「ねえお母さん、先に高校行っててもいい?あっ、入学式は来るの?」
「なあに?昨日決めてあったじゃない?若菜は自転車で、お母さんはバスだから高校で待ち合わせしようって」
「あっ……そう、そうだったね!」
「もう、あんまりはしゃぎすぎて転ばないでよ?」
「うふふっ、大丈夫、だいじょうぶ!」
…………
……
自分の仮定が立証された若菜の足取りは軽かった。高校へ向かう途中の小さな坂道を自転車で一気に登り、下り坂はブレーキも握らずにスピードに乗った。その勢いでスカートは春風を含んで膨らんで、見上げた空は葉桜模様になっている。
高校の直ぐ側まで来ても、辺りにはまだ誰もいないようだった。若菜は一度自転車から降りて思いっ切り伸びをした。夜のあいだに冷やされた土と柔らかい暖かさの匂いがする。こんなにも希望に満ちた朝は生まれて初めてかもしれない。足元がソワソワと落ち着かないことさえ心地良く、何だかもう、希望しかない。
「よしっ」
決意を新たに若菜は小さく呟くと、高校までの道のりを急いだ。
誰よりも早く到着したことも、クラス発表の中に懐かしい名前が沢山あることも、更には四年前に仲良くなった相川美緒(あいかわみお)の名前があることも、若菜を飛び上がらせるには十分だった。続々と同級生が登校し始めることもすっかり忘れた若菜は、身体の底から沸き立つ喜びに身を任せる。
「若菜……?なに一人で踊ってるんだよ?ってか、今日テンションおかしくね?」
「……お母さんっ!!」
「どうしたの?そんなに驚いて?ずいぶんと早起きね。そんなに焦らなくても入学式には間に合うから大丈夫よ?でも良かった。その様子じゃ熱もすっかり下がってるんでしょ?」
若菜は母に抱きつきたい気持ちをグッと堪え、思わず満面の笑みがこぼれてしまうのは我慢しなかった。目の前には、若菜にとっては四年ぶりの再会であるこの世界の母相馬美幸の姿がある。
「ねえお母さん、先に高校行っててもいい?あっ、入学式は来るの?」
「なあに?昨日決めてあったじゃない?若菜は自転車で、お母さんはバスだから高校で待ち合わせしようって」
「あっ……そう、そうだったね!」
「もう、あんまりはしゃぎすぎて転ばないでよ?」
「うふふっ、大丈夫、だいじょうぶ!」
…………
……
自分の仮定が立証された若菜の足取りは軽かった。高校へ向かう途中の小さな坂道を自転車で一気に登り、下り坂はブレーキも握らずにスピードに乗った。その勢いでスカートは春風を含んで膨らんで、見上げた空は葉桜模様になっている。
高校の直ぐ側まで来ても、辺りにはまだ誰もいないようだった。若菜は一度自転車から降りて思いっ切り伸びをした。夜のあいだに冷やされた土と柔らかい暖かさの匂いがする。こんなにも希望に満ちた朝は生まれて初めてかもしれない。足元がソワソワと落ち着かないことさえ心地良く、何だかもう、希望しかない。
「よしっ」
決意を新たに若菜は小さく呟くと、高校までの道のりを急いだ。
誰よりも早く到着したことも、クラス発表の中に懐かしい名前が沢山あることも、更には四年前に仲良くなった相川美緒(あいかわみお)の名前があることも、若菜を飛び上がらせるには十分だった。続々と同級生が登校し始めることもすっかり忘れた若菜は、身体の底から沸き立つ喜びに身を任せる。
「若菜……?なに一人で踊ってるんだよ?ってか、今日テンションおかしくね?」
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