5 / 8
5
しおりを挟む
「……」
若菜は寧々のその発言に答えることは出来なかった。岳が同じ高校に進学したということをこの世界の若菜が知っていたかどうかわからない。例えその答えを間違ってしまったとしても、寧々と海音に誤魔化すことは出来ると思う。しかし、いつも冷静で大人な岳は誤魔化せる気がしなかった。
「別に、ここが一番家から近かったから、来ただけ」
若菜は自分の表情が硬くなっていることに気付いていたが、上手く言葉が出てこない。そんな時、岳が少し面倒くさそうな声で呟くと。寧々はそれですら満足と言わんばかりの表情で「そうなんだぁ」と子猫のような声を出す。海音は寧々の変貌に呆れながらも「ここが岳の近所で良かった」という点で、寧々と意気投合しているようだった。
「……ってか、若菜?大丈夫?」
若菜にいち早く気が付いた様子の岳は、心の底から心配している様子でその顔を覗き込む。
「あっ……うん。ごめん。大丈夫。私も……寧々?と離れちゃったのは寂しいけど」
「っえ、若菜?今日何か変じゃない?」
「そう?……あっ昨日、ちょっと熱あったせいかな?」
「大丈夫?あっ!もしかして、まだ具合悪い?」
寧々のことを探りながらの会話で若菜は疲労困憊だった。「わからない」という状態に置かれると、人はものすごくストレスを感じるらしい。いつもの年よりは遥かに安心感のあるこの世界でもこれだ、“いつもの年”の若菜はこれ以上のストレスを始業式で感じることになる。「それに比べれば」と自分に言い聞かせ、若菜はなんとか心を保っていた。
「ねねーっ?教室行かないの?」
その時、教室の入り口から寧々を呼ぶ声がした。
「いま行くね!若菜ごめん、お大事にね?それから海音、ほら、わたしにも友達いることわかったでしょ?んじゃ、終わったらまた来るからっ!」
「うるせえな。中学から全然成長してないじゃんね?」
「ホント、進藤は変わらないな……」
(進藤……寧々ちゃんっていうのか。ちゃんと覚えなきゃ)
寧々のことを名字で呼んでいた岳のおかげで、若菜はやっと寧々のフルネームを知ることができた。ずいぶんとこの世界の若菜とは仲が良いらしい寧々とはきっと沢山の時間を一緒に過ごすことになるのだろう。距離の近い寧々に少しだけ苦手意識を抱いてしまった若菜は、今後のことを頭の中でシミュレーションしておく必要性を感じていた。
「若菜大丈夫?まだ熱あるんじゃない?」
岳の声にハッと我に返ると、若菜は「大丈夫だよ!」と大きめの声で答える。
「めっちゃ元気じゃん。でも今日は何か、いつもの若菜ってよりかは、あの、バカナだった頃を思い出すかも」
「はあ?ってか、未だにバカナって呼んでたの?」
「……?」
「何を今さら。ってか、なんなん?中学入ってからは大人ぶって、バカナって呼んでもツッコミもしなかったクセに!」
「……えっ?あー、それは、まぁ」
「若菜っ……」
「あっそういえば!美緒ちゃんも一緒のクラスじゃん!もう来たかなあ?」
岳の呼びかけを遮るようにして話を逸らした若菜は、教室の入り口の近くにあるはずの美緒の席をキョロキョロと探す。
「美緒ちゃんって……え?」
若菜は寧々のその発言に答えることは出来なかった。岳が同じ高校に進学したということをこの世界の若菜が知っていたかどうかわからない。例えその答えを間違ってしまったとしても、寧々と海音に誤魔化すことは出来ると思う。しかし、いつも冷静で大人な岳は誤魔化せる気がしなかった。
「別に、ここが一番家から近かったから、来ただけ」
若菜は自分の表情が硬くなっていることに気付いていたが、上手く言葉が出てこない。そんな時、岳が少し面倒くさそうな声で呟くと。寧々はそれですら満足と言わんばかりの表情で「そうなんだぁ」と子猫のような声を出す。海音は寧々の変貌に呆れながらも「ここが岳の近所で良かった」という点で、寧々と意気投合しているようだった。
「……ってか、若菜?大丈夫?」
若菜にいち早く気が付いた様子の岳は、心の底から心配している様子でその顔を覗き込む。
「あっ……うん。ごめん。大丈夫。私も……寧々?と離れちゃったのは寂しいけど」
「っえ、若菜?今日何か変じゃない?」
「そう?……あっ昨日、ちょっと熱あったせいかな?」
「大丈夫?あっ!もしかして、まだ具合悪い?」
寧々のことを探りながらの会話で若菜は疲労困憊だった。「わからない」という状態に置かれると、人はものすごくストレスを感じるらしい。いつもの年よりは遥かに安心感のあるこの世界でもこれだ、“いつもの年”の若菜はこれ以上のストレスを始業式で感じることになる。「それに比べれば」と自分に言い聞かせ、若菜はなんとか心を保っていた。
「ねねーっ?教室行かないの?」
その時、教室の入り口から寧々を呼ぶ声がした。
「いま行くね!若菜ごめん、お大事にね?それから海音、ほら、わたしにも友達いることわかったでしょ?んじゃ、終わったらまた来るからっ!」
「うるせえな。中学から全然成長してないじゃんね?」
「ホント、進藤は変わらないな……」
(進藤……寧々ちゃんっていうのか。ちゃんと覚えなきゃ)
寧々のことを名字で呼んでいた岳のおかげで、若菜はやっと寧々のフルネームを知ることができた。ずいぶんとこの世界の若菜とは仲が良いらしい寧々とはきっと沢山の時間を一緒に過ごすことになるのだろう。距離の近い寧々に少しだけ苦手意識を抱いてしまった若菜は、今後のことを頭の中でシミュレーションしておく必要性を感じていた。
「若菜大丈夫?まだ熱あるんじゃない?」
岳の声にハッと我に返ると、若菜は「大丈夫だよ!」と大きめの声で答える。
「めっちゃ元気じゃん。でも今日は何か、いつもの若菜ってよりかは、あの、バカナだった頃を思い出すかも」
「はあ?ってか、未だにバカナって呼んでたの?」
「……?」
「何を今さら。ってか、なんなん?中学入ってからは大人ぶって、バカナって呼んでもツッコミもしなかったクセに!」
「……えっ?あー、それは、まぁ」
「若菜っ……」
「あっそういえば!美緒ちゃんも一緒のクラスじゃん!もう来たかなあ?」
岳の呼びかけを遮るようにして話を逸らした若菜は、教室の入り口の近くにあるはずの美緒の席をキョロキョロと探す。
「美緒ちゃんって……え?」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる