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「行ってきまーーす!」
明るい声で両親に言うと、私はお祖父様と一緒に家を出た。
婚約者である公爵家のアルト様から、ディナーに誘われたのだ。
大事な話があると言っていたから、もしかしたら一緒に暮らし始める話かしら!?
胸がドキドキします。
そんな私をよそにお祖父様は
「シバくのもシバかれるのも気持ち良いんじゃぁ~~!」
と、恍惚とした表情で叫んでいた。
……ご近所からの視線が痛い。
私は謝りながら頭を下げつつ、「静かにして!」とお祖父様を叱った。
「クレハは厳しいのぉ~~」
一瞬ションボリしたがすぐに気を取り直して、ルンルンした足取りで山の方へと行ってしまった。
最近毎日山に行っているみたいだけど、何があるのだろうか?
シバくシバかれるとか言っていたから、いかがわしいことをしているのではと思ってしまう。
昔はお偉方の傭兵として活躍してたみたいだけど、今はそんな面影など殆どない。
年齢にしては体格がガッシリしているが。
侯爵家としての自覚を少しは持って欲しい。
だが私も含めて家族は、お祖父様の行動には口を出さないようにしていた。
残りの人生を好きに過ごしてもらいたい。と思っているからだ。
そんなことを考えていると、アルト様の屋敷に到着した。
(これからはここに住むことになるのかしら)
とワクワクしながら、扉をノックした。
ナイフとフォークの音だけが響く中、小さく切った魚を口に入れた。
目の前の席にはアルト様が座っており、彼の両親もこの場にいる。
いつ重大発表されるのか。ということばかり気になってしまい、食事が上手く喉を通らない。
ちまちまと食べ続けてやっと半分程消費した時、アルト様が口を開いた。
「皆に知らせたいことがある」
やっとキタッ! 待っていましたわ!
胸を高鳴らせていたが、次の一言で絶望の底に落とされた。
「カルラ、入って来てくれ」
アルト様に呼ばれて入って来たのは、姉のカルラだった。
胸元の開いたドレスを纏い、優雅に歩く姉。
アルト様に近付くと、その頬にキスをした。
ニヤニヤとしながら私を見てくる姉の瞳には、ギラギラとした意志が秘められているように感じた。
アルト様は姉と視線を交わした後、私に向かって口を開いた。
「私はカルラを愛している。これらから共にこの屋敷で暮らすことにした。クレハとの関係は今日で終わりだ」
「…………どうして」
やっと出てきた言葉はその一言だった。
どうして姉がここに?
何で私が捨てられた?
疑問が頭を支配する。
「残念だったわね。クレハは身の丈にあった男性を探しなさいよ」
半年前から家に帰って来ていないと思ったら、男を漁っていたのか。
姉は昔から色恋沙汰は常に絶えなかった。
そして常に私の恋は姉に邪魔されて来た。
好きになったり付き合い始めた男性は、ことごとく姉に奪われた。
今回も……。
涙が溢れて滴り落ちた。
シワが出来るのも構わず服を握りしめた。
この場にいるのがツラくなり、私は立ち上がり部屋を飛び出した。
(どうして姉はいつもいつもいつも!)
邪魔ばかりするのだろう。
私は昔から姉より勉強が出来た。
両親も将来を期待して可愛がってくれた。
対する姉は頭は良くなかったが、容姿だけは抜群に良かった。
親からの愛が妹ばかりに注がれているが面白くなかったらしく、私の恋人を奪うことを繰り返して来たのだった。
憎い。
憎悪の炎が燃え上がるのを感じた。
屋敷を出た私は、そのまま走り続けた。
明るい声で両親に言うと、私はお祖父様と一緒に家を出た。
婚約者である公爵家のアルト様から、ディナーに誘われたのだ。
大事な話があると言っていたから、もしかしたら一緒に暮らし始める話かしら!?
胸がドキドキします。
そんな私をよそにお祖父様は
「シバくのもシバかれるのも気持ち良いんじゃぁ~~!」
と、恍惚とした表情で叫んでいた。
……ご近所からの視線が痛い。
私は謝りながら頭を下げつつ、「静かにして!」とお祖父様を叱った。
「クレハは厳しいのぉ~~」
一瞬ションボリしたがすぐに気を取り直して、ルンルンした足取りで山の方へと行ってしまった。
最近毎日山に行っているみたいだけど、何があるのだろうか?
シバくシバかれるとか言っていたから、いかがわしいことをしているのではと思ってしまう。
昔はお偉方の傭兵として活躍してたみたいだけど、今はそんな面影など殆どない。
年齢にしては体格がガッシリしているが。
侯爵家としての自覚を少しは持って欲しい。
だが私も含めて家族は、お祖父様の行動には口を出さないようにしていた。
残りの人生を好きに過ごしてもらいたい。と思っているからだ。
そんなことを考えていると、アルト様の屋敷に到着した。
(これからはここに住むことになるのかしら)
とワクワクしながら、扉をノックした。
ナイフとフォークの音だけが響く中、小さく切った魚を口に入れた。
目の前の席にはアルト様が座っており、彼の両親もこの場にいる。
いつ重大発表されるのか。ということばかり気になってしまい、食事が上手く喉を通らない。
ちまちまと食べ続けてやっと半分程消費した時、アルト様が口を開いた。
「皆に知らせたいことがある」
やっとキタッ! 待っていましたわ!
胸を高鳴らせていたが、次の一言で絶望の底に落とされた。
「カルラ、入って来てくれ」
アルト様に呼ばれて入って来たのは、姉のカルラだった。
胸元の開いたドレスを纏い、優雅に歩く姉。
アルト様に近付くと、その頬にキスをした。
ニヤニヤとしながら私を見てくる姉の瞳には、ギラギラとした意志が秘められているように感じた。
アルト様は姉と視線を交わした後、私に向かって口を開いた。
「私はカルラを愛している。これらから共にこの屋敷で暮らすことにした。クレハとの関係は今日で終わりだ」
「…………どうして」
やっと出てきた言葉はその一言だった。
どうして姉がここに?
何で私が捨てられた?
疑問が頭を支配する。
「残念だったわね。クレハは身の丈にあった男性を探しなさいよ」
半年前から家に帰って来ていないと思ったら、男を漁っていたのか。
姉は昔から色恋沙汰は常に絶えなかった。
そして常に私の恋は姉に邪魔されて来た。
好きになったり付き合い始めた男性は、ことごとく姉に奪われた。
今回も……。
涙が溢れて滴り落ちた。
シワが出来るのも構わず服を握りしめた。
この場にいるのがツラくなり、私は立ち上がり部屋を飛び出した。
(どうして姉はいつもいつもいつも!)
邪魔ばかりするのだろう。
私は昔から姉より勉強が出来た。
両親も将来を期待して可愛がってくれた。
対する姉は頭は良くなかったが、容姿だけは抜群に良かった。
親からの愛が妹ばかりに注がれているが面白くなかったらしく、私の恋人を奪うことを繰り返して来たのだった。
憎い。
憎悪の炎が燃え上がるのを感じた。
屋敷を出た私は、そのまま走り続けた。
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