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アルト様の屋敷を飛び出した後、私は川へと来ていた。
ここは町外れにあって人も殆どいないので、何か考えごとなどをしたい時によく来ているのだった。
(これからどうしよう……)
土手に座り、一人うなだれていた。
私の顔は今、汗と涙で酷い見た目になっていることだろう。
「姉のバカヤローッ!!」
やけくそ気味に叫ぶと、川の向かい側にいた野良猫がビクッとこちらに振り向いた。
猫は気楽でいいよな~~。
身分とかに縛られないし。
そんなことを思ってしまった。
今頃屋敷ではアルト様と姉はイチャイチャしているに違いない。
「あーーもうっっ!!」
嫌な妄想を消し去るかのように、がしがしと頭をかいた。
そもそもアルト様は本当に私を愛していたのだろうか。
こんなにもあっさり捨てられてしまうと、好かれていたのか自信もなくなってくる。
屋敷を立ち去る前に、せめて確認しておけば良かったかな……。
とも思ってしまった。
「はぁ……」
駄目だ。ネガティブな気持ちしか出てこない。
視線を上げてぼーっと川の上流の方を見た時、何かが流れて来ているのが見えた。
そこそこ大きいものだ。
段々と近づいてくるにつれて、その姿は大きくなってきた。
そして正体が分かった。
あ。人だ。
「人っ!?」
川の上流から、『どんぶらこどんぶらこ』と人が流れて来た。
思わず立ち上がり、それを凝視した。
身じろぎ一つしない人。
水の流れにされるがままの人。
大丈夫か? 人。
目の前に来た時、濡れることも気にせず川に入り、咄嗟にその人の服を掴んだ。
「お、重い……!」
自分の身も水流に巻き込まれそうになりながらも必死に足を踏ん張り、渾身の力を振り絞ってなんとか引き上げることに成功した。
息が苦しい。
取り敢えず救出出来て良かった。
だが安堵するのはまだ早い。
その人の顔を見ると、息をしていなかった。
助けを呼ばなくては。
「誰かーー! 助けてーー! 手を貸して下さいっ!」
大声で周囲に叫ぶと、通りがかった男性二人がこちらに駆け寄って来てくれるのが見えた。
少し安堵し、助けた人に視線を戻した。
整った顔が印象的な男性だ。
肌は白を通り越して真っ青だ。
頬に触れると氷のように冷たい。
外の気温はそれ程寒くはないので、長い間水に流されていたのだろうということが推測できた。
(取り敢えず呼吸を確保しなくては!)
詳しい知識はなかったが、胸を両手で圧迫してみることにした。
『どんっどんっ』というリズムに合わせて男性の身体が衝撃に揺れた。
一心不乱に続けていると、「げほっ!げほっ!」と男性が息を吹き返した。
「良かった! 大丈夫ですか!?」
呼吸は落ち着いたようだが、視線が定まっていない。
ここでようやく先程の男性二人が到着した。
その二人は、寒さでブルブルと震えている男性を持ち上げると、私は診療所へと案内した。
ここは町外れにあって人も殆どいないので、何か考えごとなどをしたい時によく来ているのだった。
(これからどうしよう……)
土手に座り、一人うなだれていた。
私の顔は今、汗と涙で酷い見た目になっていることだろう。
「姉のバカヤローッ!!」
やけくそ気味に叫ぶと、川の向かい側にいた野良猫がビクッとこちらに振り向いた。
猫は気楽でいいよな~~。
身分とかに縛られないし。
そんなことを思ってしまった。
今頃屋敷ではアルト様と姉はイチャイチャしているに違いない。
「あーーもうっっ!!」
嫌な妄想を消し去るかのように、がしがしと頭をかいた。
そもそもアルト様は本当に私を愛していたのだろうか。
こんなにもあっさり捨てられてしまうと、好かれていたのか自信もなくなってくる。
屋敷を立ち去る前に、せめて確認しておけば良かったかな……。
とも思ってしまった。
「はぁ……」
駄目だ。ネガティブな気持ちしか出てこない。
視線を上げてぼーっと川の上流の方を見た時、何かが流れて来ているのが見えた。
そこそこ大きいものだ。
段々と近づいてくるにつれて、その姿は大きくなってきた。
そして正体が分かった。
あ。人だ。
「人っ!?」
川の上流から、『どんぶらこどんぶらこ』と人が流れて来た。
思わず立ち上がり、それを凝視した。
身じろぎ一つしない人。
水の流れにされるがままの人。
大丈夫か? 人。
目の前に来た時、濡れることも気にせず川に入り、咄嗟にその人の服を掴んだ。
「お、重い……!」
自分の身も水流に巻き込まれそうになりながらも必死に足を踏ん張り、渾身の力を振り絞ってなんとか引き上げることに成功した。
息が苦しい。
取り敢えず救出出来て良かった。
だが安堵するのはまだ早い。
その人の顔を見ると、息をしていなかった。
助けを呼ばなくては。
「誰かーー! 助けてーー! 手を貸して下さいっ!」
大声で周囲に叫ぶと、通りがかった男性二人がこちらに駆け寄って来てくれるのが見えた。
少し安堵し、助けた人に視線を戻した。
整った顔が印象的な男性だ。
肌は白を通り越して真っ青だ。
頬に触れると氷のように冷たい。
外の気温はそれ程寒くはないので、長い間水に流されていたのだろうということが推測できた。
(取り敢えず呼吸を確保しなくては!)
詳しい知識はなかったが、胸を両手で圧迫してみることにした。
『どんっどんっ』というリズムに合わせて男性の身体が衝撃に揺れた。
一心不乱に続けていると、「げほっ!げほっ!」と男性が息を吹き返した。
「良かった! 大丈夫ですか!?」
呼吸は落ち着いたようだが、視線が定まっていない。
ここでようやく先程の男性二人が到着した。
その二人は、寒さでブルブルと震えている男性を持ち上げると、私は診療所へと案内した。
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