余命僅かの令嬢は、二人の死神に恋をする

白風

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婚約破棄と死神

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「俺を拒絶するとは失礼な奴だ! お前なんかとの婚約は破棄する」

 薄暗い室内に怒号が響き渡った。
 彼の名はゴードン。
 侯爵家の男で、私の婚約者だ。
 優しくて思いやりのある人だと思っていたが、違ったらしい。
 彼が無理やり脱がそうとした私の服は、肩の部分が破けてしまっている。

(怖い……)

 頬を涙が伝った。
 数時間前に屋敷に呼び出された私は、ディナーをご馳走になった。
 その後彼の部屋に呼ばれて二人っきりになった瞬間、彼の態度が豹変し身体を求めて来た。
 今まで恋も知らずに育ってきたのもあり、怯えることしか出来なかった。
 そんな態度が逆鱗に触れたらしく、婚約破棄をされてしまった。

(もうこの人とは一緒にいられない)

 咄嗟に私は屋敷を飛び出した。




 あのまま走り続けて自分の家へと戻った私は、部屋に閉じこもっていた。
 ただごとではない様子の私を見た両親は顔を青ざめていたが、今は一人になりたかった。
 ベッドに顔を伏せるようにして、私は泣いた。
 人生で初めて好きと思える男性と出会ったのに、この始末。
 恋なんてするんじゃなかった。
 後悔と恐怖が心を満たしていた。
 それからしばらく経って涙も止まり、呼吸も安定してきた頃。
 ふと室内に気配を感じて振り返った。

「っ!!」

 そこには一人の男が立っていた。
 いつの間に!? というかどうやってここに!?
 得体の知れない存在に、ガタガタと恐怖に震えてしまう。

「ごめんごめん驚かせて。危害は加えないから」

 両手を挙げて後ろに下がり、壁にペタリと背中をつけた。

「こ、ここで何をしてるの!? あなたは誰!?」

 気が動転して声が大きくなってしまった。
 そもそも両親は気付かなかったのだろうか。
 私の心を読んだのか、男は口を開いた。

「突然ごめんね。君の部屋に直接お邪魔させてもらったよ」

 直接? どういうことだ。
 悪い夢でも見ているのだろうか。
 頭がクラクラして、こめかみを押さえた。
 少しして視線を上げると、そこにはまだ男がいた。
 よく見ると変な服を着ている。
 あんなのは初めて見た。
 視線に気付いたのか、男が首を傾げた。

「ああそっか。この世界じゃこの服は変に見えるよね」

 と言いながら服を指差した。

「これはね、Tシャツとジーパンって言うんだ」

 ? 知らない単語なので、何を言っているのか分からない。

 男は「怪しい奴にしか見えないよねーー」と言って苦笑いを浮かべている。
 本当にその通りだ。
 もしかして私は、ゴードンにされたようにまた襲われてしまうのだろうか。
 何が目的なのだろう……。
 男は壁から背を離し、恭しくお辞儀をした。

「俺は別の世界からやって来た死神。君の命を貰いに来た」
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