ドス黒なずみ童話 ② ~どこかで聞いたような設定の娘の眠り~【なずみのホラー便 第41弾】

なずみ智子

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ドス黒なずみ童話 ② ~どこかで聞いたような設定の娘の眠り~

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 現実は童話のようにはうまくいかない。
 そして、誰もが童話に憧れる心を持ち続けているとは限らない。


 灰と埃だらけの娘・エラ。
 過労と睡眠不足、不衛生な生活環境、栄養不足によって、15才の彼女はまさに倒れる寸前であった。
 少し咳き込んだだけで、灰と埃に汚染された喉のさらにその奥から焼けつくような痛みが生じる。

 語り継がれし『シンデレラ(灰かぶり姫)』とこのエラという娘には、幾つかの共通点があった。
 まずは、エラという名前だ。
 次に、エラは幼い頃に自身の母親を亡くしており、父親は別の女性と結婚した。女性とは再婚同士の結婚であった。
 しかし、その父も数年前に亡くなり、エラの家の実権は、継母と継母の連れ子である2人の義姉によって握られてしまっていた。

 そして、『シンデレラ』に登場するいびり役の人たち同様、彼女たち3人はエラに好意的であるとは言い難かった。いや、絶対の好意的とは言えやしないのは、今のエラが置かれている状況を見れば一目瞭然だ。
 
 エラは継母たちに何もかもを取り上げられた。
 今は亡き両親がエラのために残しておいてくれた物の何もかもが、継母たちの物となってしまった。
 今のエラが持っているのは、亡き両親が授けてくれた、この肉体ぐらいだ。けれども、この肉体ですら彼女たちの意地悪と我儘によって散々に酷使され、痛めつけられている。

 エラを守ってくれていた最後の砦であった父が生きていた頃に比べると、この家の使用人の人数は5分の1にまで減っていた。人員は減ったも仕事量には変化なし、というよりも、継母や2人の義姉に重箱の隅をつつくがごとき難癖をつけられ続け、肉体的にも精神的にも休まる時などなかった。
 ゆっくり休みたい。ゆっくり眠りたい。
 エラの願いは、ただそれだけであった。


 ある日のことであった。
 エラの家にも、お城から舞踏会の招待状が届けられた。
 これも『シンデレラ』と同じ展開だ。
 継母も2人の義姉も、ドレスの新調やお肌の手入れ、更なる厚化粧の研究など、来るべき舞踏会の日に向けての期待と興奮で超ハイテンション状態となったのも、ほぼ同じ展開と言えよう。

 だが、エラは『シンデレラ』のように、自分も舞踏会に行きたいとは一言も言わなかった。
 継母たちに叱られ「お前ごときが王子様の目に留まるはずないでしょ」と馬鹿にされることを恐れて、言わなかったのではない。
 舞踏会や王子様になど、エラは何の興味も抱いていなかった。
 エラはただ休みたかった。灰だらけの不衛生な寝床にとはいえ、体を横たえて眠りたかったのだ。

 そして、奇しくも舞踏会の日はエラの16才の誕生日でもあった。
 舞踏会のため継母たちが不在となる時間、つまり一時的とはいえいつもより長く休むことができる時間は、神様から自分への誕生日の贈り物なのだとエラは感謝することにした。
 さらに、おそらくであるが、舞踏会から継母たちが戻って来てしばらくの間は、非日常の興奮が冷めていないため、いつになく上機嫌な状態が続くかもしれない。確固たる理由や落ち度もなく、怒鳴り散らされたり、物を投げつけられたりする可能性は格段に下がるであろう。


 ゴッテゴテに着飾り完全武装状態となった継母たちが乗る馬車の音が、遠ざかっていくのを確認したエラは、灰だらけの黴臭い寝床に身を横たえた。
 眠りという束の間の幸せの門をくぐり始めたエラの耳に、とてつもなく不快な音が聞こえてきた。
 不快な音の主たちが床を駆けまわる音だけでなく、チューチューという鳴き声までもが。
 ネズミになど、とっくの昔に慣れっこになっていたエラであったも、”様々な病原菌を運んでくるうえ”に備蓄している食料にまで損害をもたらす奴らは歓迎できない動物であった。

 嫌悪と苛立ちで、ムクリと起き上がったエラ。
 案の定、2匹のネズミがすぐ近くにいた。
 自分と同じく灰をかぶったかのような毛色のネズミたちは意外に可愛い顔であり、真っ黒なつぶらな瞳でエラをじいいっと見上げている。


「エラ、私たちはあなたを迎えに来ました」
「私たちがあなたをお城の舞踏会にお連れいたします」


 な、なんと!
 ネズミが喋った!? 
 ネズミは鳴いたのではなく、人間の言葉を喋った!? 
 そのうえ、ちゃんと敬語を使っている!!
 
 エラは積み重なった疲労とストレスによって、ついに自分の耳がおかしくなったとしか思えなかった。
 しかし、エラの”幻聴”はまだまだ続いた。


「さあ、エラ、立ち上がって。今からあなたはお城の舞踏会へと行くのです」
「あなたのための素敵なドレスだけでなく、例の”ガラスの靴”も用意しています。王子様の心と体を焦らすだけでなく、あなたを実際以上にミステリアスな謎めいた女に見せるというアイテムも」


 …………。
 エラは考える。
 もしかして、この2匹のネズミは、あの有名な『シンデレラ』と同様の運命を、私にもたらしてくれようとしているのかしら?
 灰だらけの私はひょっとして、”シンデレラガール”に選ばれてしまったのかしら?
 けれども、私は……


「……ごめんなさい。私、疲れているのよ。眠れる時に少しでも眠っておきたいの。だから、舞踏会に行く気はないわ」


 エラの口から紡ぎ出された言葉に、2匹のネズミは顔を引き攣らせた。
 ネズミたちは、てっきりエラが『まあ! うれしい! 本当にうれしいわ! 私も舞踏会に行くことができるのね!』と涙を溢れさせんばかりに喜ぶと思っていた。
 それなのに、全く予想外の反応がエラから返ってきた。


 再び灰の中へと身を横たえたエラに焦ったネズミたちは、続ける。
「エ、エラ! 早く起き上がってください!」
「あなたはガラスの靴を履きたいとは思わないんですか?!」


 再び眠りの門をくぐろうとしていたエラは、やかましいネズミたちの声に顔をしかめた。そして、目をつむったまま答える。

「……年頃の娘だからって、誰もがガラスの靴を履きたいとは限らないでしょ? それにガラスの靴って伸縮性に富んでないから、堅そうだし痛そうだし、第一、途中で割れちゃったら危ないでしょ? 絶対に怪我するわよ」

 …………。
 その最もな意見に、ネズミたちは沈黙する。しかし、彼らは諦めなかった。

「ガラスの靴が嫌だというなら、他の靴を用意いたします」
「ですから、舞踏会へ行きましょう。舞踏会に参加した女性たちの誰よりも素晴らしくて美しいドレスを身にまとうことができるのですよ」


「………あのね、たとえ、これから私が湯あみをして、灰も埃も垢も全て落としたとしても、私の体はドレスの華やかさに耐えうることができる状態じゃないのよ。荒れてひび割れた手は手袋で誤魔化せるにしても、肌は荒れに荒れて水気もなくがさついているし、デコルテや服で隠れている場所には虫刺されや湿疹だってあるし、胸だってげっそり肉が落ちているわ。私の目の下の隈やこけた頬、皮がめくれた唇を見て! これは、どれだけ厚く塗りたくたって隠せやしないでしょうよ。そもそも、ダンスの仕方なんて、とうの昔に忘れてしまったわ。ダンスを踊りたいとも思わないわ」

 長年にわたり、ロクな休息もなく、心身ともに酷使されてきたエラ。
 今宵のシンデレラとなるはずの彼女には、シンデレラ願望などはもはや、その手で一掴みできる灰の量すらなくなっているのだろう。
 こうなったら……と2匹のネズミは顔を見合わせ頷きあった。


「分かりました。あなたの言うことは最もですね」
「ですが、あなたは私たちが企画ならび運営をしている”シンデレラ・プラン”のヒロインに選ばれたのですよ」


「…………”シンデレラ・プラン”だか、何だか知らないけど、私は眠りたいのよ。お願い、貴重な睡眠時間の邪魔をしないで」
 
 苛立ちが声にありありと滲んでいるエラは、寝返りをうち、やかましいネズミたちへと背を向けた。


「エラ、どうか起き上がってください。今、起き上がらないとあなたの人生はずっとこのままです。ここから抜け出すことはできませんよ」
「そうですよ、エラ。私たちは数年前からあなたを”シンデレラ・プラン”の候補者として見ておりました。私たちが長年練っていたあなたのためのプランが、やっと実を結ぶ時が近づいてきたのです」


 ついにエラがガバッと勢いよく起き上った。
 灰が舞った。その灰はネズミたちにも降りかかった。

 起き上がったエラの顔は歪んでいた。
 そう、怒りによって歪んでいた。

「今、何て言ったの!?」

 眠りをしつこく邪魔されたことに対する怒りではないのか?
 「え? え?」と尻尾とお尻を縮こまらせてズリズリと後ずさった2匹のネズミをエラは睨み付けた。


「あなたたち、今、確かに言ったわよね? 私を”数年前からシンデレラ・プランの候補者として見てた”って!? それはつまり、あなたたちは私が継母たちからいじめられ……いいえ、こうして虐待を受けていることを数年前から知っていたってことよね!? だったら、なんでもっと早くに助けてくれなかったの!!?」

 エラの目からは涙が溢れ出した。
 溢れた涙は、彼女の頬にこびりついた灰のうえに流れていく。


「あ、あの……申し訳ないですが、”シンデレラ・プラン”のヒロインの適用は満16才以上からとなっております」
「そっそうなのですよ。偶然にも舞踏会が開かれる本日がちょうどあなたの16才の誕生日でありましたため、私たちは急いで……」


「何それ? 私が16才になるのを待ってたってオチなの? あのねえ、決まりだか何だか知らないけど、”助ける力を持っているなら”いじめも虐待も気づいた時に助けてよ!!! 助けて欲しかったわよ!!!」


 今にも血を吐かんばかりにエラは喚いた。
 荒れた手で頬の涙をゴシゴシとぬぐったエラは、”小さな傍観者たち”をなおも睨みつけた。


「あなたたちのシンデレラ・プランの候補者は、私の他にもいる……いいえ、”いた”んでしょ? でも、あなたたちがくだらない年連制限に縛られている間に、何人かの候補者は……虐待死や過労死や自殺によって”永遠の眠り”についてしまったんでしょ? そうでしょ?!」


 エラが言ったことは、見当違いなことではなかった。事実であった。
 だから、2匹のネズミは何も答えることができなかった。うなだれることしかできなかった。


「それにね、あなたたち、さっき『起き上がらないとあなたの人生はずっとこのままです。ここから抜け出すことはできません』なんてことも、いけしゃあしゃあと言ったわよね。でもね、私の心には、もはや起き上がる力すら残っていないのよ。本当に、心ってじわじわと殺されていくものなのよ……」


 2匹のネズミは思う。
 もはや、自分たちではエラを……エラの心を救うことはできない。彼女を今宵の『シンデレラ』にすることはできない。
 でも、それなら……


「本当に申し訳ございませんでした。エラ、あなたの願いをもう一度、教えていただけますか?」
「エラ、私たちはあなたの願いを確認したいのです。そう……あなたを助けることができなかった私たちのせめてものお詫びとして。今からでも、私たちにできることを……」


 なおもしつこく食い下がってくるネズミたちに、エラは声を荒げる。

「だから、最初から言ってるでしょ!!! 私は”眠りたい”って言ってるでしょ!!! 邪魔しないで! お願い! 早くどこかへ行って!!!」


「”眠りたい”……それがあなたの願いで間違いありませんね」
「確かに確認いたしました。でも、その願いを叶えることができるのは、私たちではありません」


「………別にあなたたちに、どうこうしてもらおうなんてハナから思っていないわ。そもそも、私はこのままじゃ、きっと20才までも生きられないでしょうよ。過労死か衰弱死、それか衝動的に首を吊って死ぬことになるかもね。私は大人にすらなれないわ。今夜、私のささやかな眠りを邪魔しにきたのが、あなたたちじゃなくて、死神だったら良かったのに。そうしたら、私はこの生き地獄から解放されて”永遠の眠り”につくことができたのに」


 エラは再び灰の上へと身を横たえた。

「さようなら。救世主気取りで私に止めを差しにやってきたネズミさんたち」

 オロオロとし続けているネズミたちへと背を向けたまま、エラは言った。




※※※



 次の日の朝。
 エラが16才を迎えて2日目となる朝。
 灰の上に横たわったまま、息をしていない彼女が、他の使用人たちによって発見された。
 エラの体はまだ温かかった。
 しかし、いくら体を揺さぶっても、名前を呼んでも、彼女が瞳を開けることも、起き上がることもなかった。
 彼女を散々虐め抜いてきた継母も2人の義姉も、昨晩の舞踏会の酒が抜けきっていない頭と体のまま、息をしていない彼女の姿を確認することとなった。

 血も涙もない継母たちは”エラの埋葬”を、他の使用人たちに一任し、部屋を出ていった。
 義理とはいえ一応は家族のカテゴリーに入っていた彼女の葬儀すら執り行う気がないのは、明らかであった。


「エラお嬢様、可哀想に。こんなに若くして、死んじまって」
「ごめんよ。”我が身可愛さ”に助けてやれなくて」
「次の人生では、どうか幸せになってくだせえ」
「そうですよ、エラお嬢様。素敵な男性と巡り合って、可愛い子供を産んで……」


 身分高き主人たちには逆らえなかった他の使用人たちの言葉、そして彼らの目から溢れている本物の憐憫と悔恨の涙からすると、エラと彼らの人間関係はそう悪いものではなかった。
 もしかしたら、心をじわじわと殺されていっていた彼女であったも、彼らの存在がエラの生への希望のわずかな灯火となっていたのかもしれない。


 そんな彼らの涙と言葉に答えるかのように、エラの唇がかすかに動いた。

――!

 まさか、エラお嬢様はまだ生きている?!
 驚く使用人たち一同の目の前で、なんとさらに驚くべき現象が起こった!

―――!!!


 まだ温もりを残しているエラの体が眩いばかりの光にパアアッと包まれたかと思うと、一瞬にして消失したのだ。
 まるで魔法のように、エラは消えてしまった。
 そう、魔法のように……



※※※


 エラの体を消失させる段取りを組んだのは、もちろん、あの2匹のネズミであった。
 いや、正確に言うと、”仮死状態となっているエラ”を継母たちにも確認させ、エラが出奔したわけではないことを証明したうえで、自分たちと同じく”シンデレラ・プランに携わっている魔法使い”の力によって、茨の蔦で覆われたこのお城まで連れてきたのだ。

 銀色の髪の穏やかで上品なおばあさんといった風情の魔法使いは、2匹のネズミににっこりと微笑んだ。
「間に合って良かったです。あのまま、エラがすぐに埋葬されていたら、まさに”早すぎた埋葬”(※注1、下部にて解説)になっていましたからね」と。


「ええ、本当にありがとうございます」
「今回はエラを『シンデレラ』とすることはできませんでしたが……私たちはエラの願いを叶える”架け橋”とならなくてはと思った次第です」
 ネズミたちは答えた。


「本当にそうですね。私自身もエラの言葉を聞いて、もう一度”シンデレラ・プラン”そのものを考え直すことにしました。私たちの『シンデレラ』となるには16才からなんて、アホな年齢制限なんて設けず、いじめも虐待も気づいた時に助けなきゃならなかったですね。”善は急げ”というわけです。私たちはその力を持っているのですから。助けるためのツールも、”王子様との素敵な舞踏会”や”ミステリアスな魅力の演出ならびにセックスの寸止めの役割を担うガラスの靴”に固執する必要はなかったですね」

 上品さの塊のごとき外見である老女の魔法使いは、顔を赤らめることもなく、その口よりごく普通にセックスという言葉を紡いでいた。
 
「ネズミたちよ、後は全て”スリーピングビューティー・プラン”に携わっている者たちに任せましょう。”床ずれ”などに対してのケアの知識も抜群のあの者たちは、きっといい仕事をしてくれるはずです。エラも、灰だらけの体を清められ、この茨の蔦に覆われた城にて”ゆったりと長き眠りについている間に”肌荒れも完治し、栄養状態も戻るでしょう。きっと娘らしい薔薇色のみずみずしいほっぺたに戻っているはずです。そして、いつの日か……素敵な男性が彼女の長き眠りを口づけによって覚ますでしょう。あの伝説の『眠り姫』のように……」

 2匹のネズミは、エラの願いを――”眠りたい”という願いを確かに叶えた。
 ガラスの靴を履かなかった『シンデレラ』候補を『眠り姫』へとスライドするための架け橋となったのだ。


 しかも、それだけじゃなかった。

「魔法使い様……”今の私たち2匹だからこそ出来るプラン”を聞いていただけますでしょうか?」


「今のあなたたちだからこそ出来るプラン? それはいったい何かしら?」


「実はですね……エラをあそこまで苛め抜いた継母や2人の義姉たちが、あのままのうのうと生きていくのだと思うと、私たちはどうしても許せませず……私たち自身の死をも覚悟の上で、死神に”ある菌”をこの身へと授けてもらったのです」

「とりわけ高い致死性を持つ菌を保有した私たちが、エラの継母たちが就寝中のベッドの中へと潜り込み……”足の裏をガブリ”ならび”鼻先でウ○チ”のコラボレーションでの嫌がらせ計画を考えているんです」


「まあ! それはいい考えだわ。あなたたちだけじゃなくて、他のネズミたちにもお願いしてみたら、どうかしら? エラの家にはあなたたちが行くとしても、罪のない少年少女をエラのような目に遭わせている家の者の元には、他のネズミたちが向かうと……なんだったら、私の方から”ノミたちにだって”口を聞いてあげてもいいわ」


「……そうでございますか。そうなると、私たちはノミたちに”採血されてしまう”ことになりますが、多少の痛みと痒みは仕方ありません。それに私たちの新たなプランによって、エラの家の使用人の幾人かは巻き込んでしまうでしょうが、私たちも含め、多少の犠牲はやはり致し方ないことかと……」



 時の彼方に思いをはせるかように、どこか遠い目をした魔法使いは頷く。

「ええ、大義を通すためには多少の犠牲は不可欠と言っていいでしょう。久々にドス黒い死が……”黒死病”(※注2、下部にて解説)が人間たちの社会に広がり、覆い尽くしていくことになるのね」

 そして――

「さあ、ネズミたちよ。さっそく今夜からエラの継母たちの元に行ってらっしゃいな。彼女たちに苦しみながらの”永遠の眠り”を運んであげなさいな。”善は急げ”よ」



―――fin―――


※注1 早すぎた埋葬……”仮死状態で肉体は完全に死んでいないのに埋葬されてしまい、エラが真っ暗な墓の中で目を覚ましてしまったかもしれない”という恐ろし過ぎるシチュエーションを本作中では指しています。なお、エドガー・アラン・ポー作の同名の小説については、多くの方々がご存知だと思います。


※注2 黒死病……感染症の「ペスト」のことです。人間が罹患すると皮膚が黒くなります。感染源には、ペストに感染したネズミやそのネズミの血を吸ったノミによるものがあります。
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