33 / 60
なずみのホラー便 ※公開順
第27弾 身元不明
しおりを挟む
とある県の山中にて、推定90歳代とみられる男性の”遭難死”したと見られる遺体が発見された。
遺体発見から数日経過しても、この高齢男性の身元は一向に判明しないうえ、ちょうど同時期に同じ地域で”別の失踪事件”までもが発生していた。
その”別の失踪事件”――”4才男児失踪事件”の重要参考人として、警察署に呼ばれた1人の女の口から、俄かには信じがたい供述が紡ぎ出されることとなった。
以下は自己中極まりないうえサイコな女の供述を箇条書きしたものである。
・ 私は行方不明の男児・ケイスケくんの隣家に住んでいる。
・ 皆が必死で捜索中の彼はもうすでに亡くなっている。
・ けれども、私が”直接”彼を殺害したわけではない。
・ 私が彼を連れ出した理由は、大変に可愛らしい容姿である彼の「一生分の姿を見てみたかった」だけだ。
・ 私は今、タイムスリップ写真(昔、撮影した写真と同じ場所で、被写体の方の服装やポーズ、写真の構図などもできうる限り再現して撮影した写真)にハマっていて、その被写体に彼を選んだ。
・ 頸部を軽く圧迫して眠らせた(つまりは軽く絞めて落とした)彼を車に乗せ、彼と2人きりになれる山の麓へ連れていった。
・ スマホにダウンロードしていた「A miserable time slip picture」というアプリ(被写体に向けて画面下部に表示されているメモリを調整すると、0才から100才までの間の被写体の一生分の姿を画面に映し出すことができるアプリ)の年齢バロメーターを徐々にあげていき、眠ったままの彼の一生分の写真を私はノリノリで撮影していたのだが……ついに最終地点である100才にまで到達した時、スマホが電池切れ寸前となった。
・ と同時に、スマホ画面には「完全に電池切れとなる前に、被写体の年齢を元の年齢へと戻してください!!! そうしなければ、現在の画面に映し出されている姿が被写体に”そのまま適用”されてしまいます!!! 早く、一刻も早く、被写体の年齢を元の年齢へと戻してください!!!」というアプリからの警告までもが表示された。
・ 私は急いで年齢バロメーターを彼の元の年齢である4才にまで戻そうとしたが、間に合わず、年齢バロメーターが90才まで来た時、あっけなくスマホの電池は切れてしまった。
・ よって、後部座席であどけない寝顔を見せていた4才のケイスケくんは、90才の老人へとその姿を変えていまい……”見た目はおじいちゃんなのに、頭の中身は母を乞い泣き叫び続ける4才男児のままの彼”に、私はとてつもない不気味さを感じずにはいられなかった。
※女のこの供述には警察からも「お前がやったんじゃないか!」というツッコミが入っていた。
・ この姿のケイスケくんを彼のママの元へと返すわけにはいかないと思った私は、彼にタオルケット1枚だけを持たせ車から降ろした。私はケイスケくんが、通行人に身元不明の老人として保護されるものだと思っていた。彼が山奥へと迷い込み、そのまま山中にて、遭難死するなんてことは私は想定外でしかなかった。
そう、つまり『先日発見された推定90歳代とみられる男性の”遭難死”したと見られる遺体は、行方不明のケイスケくんの遺体である』と女は、供述したのだ。
その後のDNA鑑定によって、年齢が全く違うはずである高齢男性とケイスケくんのDNAは、見事なまでに重なり合い、”身元判明”を示すこととなった。
⇒【ややホラー風味な】身元不明【ショートショート第27弾】
(公開日:2019年2月24日)
★作者コメント★
たまたま隣の家に住んでいただけのサイコ女の身勝手によって、恐怖と孤独、寒さと痛みと空腹のなか、その短き人生を終えたケイスケくんの最期は胸が痛くなりますね。彼の無事を祈って必死で捜索していたご家族の悲しみも察するに余り有ります。
本作に登場するアプリ「A miserable time slip picture」ですが、本作の女とは逆の使い方をすれば、若返ることも可能な夢のアプリだと思いました。
話は変わりますが、最初は「第1弾から第10弾の公開まで頑張ってみよう」と考えていた【ややホラー風味なショートショート】も、先日公開した「銭湯モニター」で早くも28弾となりました。ということは、なずみワールドにおける、サイコな奴らのラインナップや酷い目に遭う(遭わされる)被害者たちがますます増えていっているということですね。
遺体発見から数日経過しても、この高齢男性の身元は一向に判明しないうえ、ちょうど同時期に同じ地域で”別の失踪事件”までもが発生していた。
その”別の失踪事件”――”4才男児失踪事件”の重要参考人として、警察署に呼ばれた1人の女の口から、俄かには信じがたい供述が紡ぎ出されることとなった。
以下は自己中極まりないうえサイコな女の供述を箇条書きしたものである。
・ 私は行方不明の男児・ケイスケくんの隣家に住んでいる。
・ 皆が必死で捜索中の彼はもうすでに亡くなっている。
・ けれども、私が”直接”彼を殺害したわけではない。
・ 私が彼を連れ出した理由は、大変に可愛らしい容姿である彼の「一生分の姿を見てみたかった」だけだ。
・ 私は今、タイムスリップ写真(昔、撮影した写真と同じ場所で、被写体の方の服装やポーズ、写真の構図などもできうる限り再現して撮影した写真)にハマっていて、その被写体に彼を選んだ。
・ 頸部を軽く圧迫して眠らせた(つまりは軽く絞めて落とした)彼を車に乗せ、彼と2人きりになれる山の麓へ連れていった。
・ スマホにダウンロードしていた「A miserable time slip picture」というアプリ(被写体に向けて画面下部に表示されているメモリを調整すると、0才から100才までの間の被写体の一生分の姿を画面に映し出すことができるアプリ)の年齢バロメーターを徐々にあげていき、眠ったままの彼の一生分の写真を私はノリノリで撮影していたのだが……ついに最終地点である100才にまで到達した時、スマホが電池切れ寸前となった。
・ と同時に、スマホ画面には「完全に電池切れとなる前に、被写体の年齢を元の年齢へと戻してください!!! そうしなければ、現在の画面に映し出されている姿が被写体に”そのまま適用”されてしまいます!!! 早く、一刻も早く、被写体の年齢を元の年齢へと戻してください!!!」というアプリからの警告までもが表示された。
・ 私は急いで年齢バロメーターを彼の元の年齢である4才にまで戻そうとしたが、間に合わず、年齢バロメーターが90才まで来た時、あっけなくスマホの電池は切れてしまった。
・ よって、後部座席であどけない寝顔を見せていた4才のケイスケくんは、90才の老人へとその姿を変えていまい……”見た目はおじいちゃんなのに、頭の中身は母を乞い泣き叫び続ける4才男児のままの彼”に、私はとてつもない不気味さを感じずにはいられなかった。
※女のこの供述には警察からも「お前がやったんじゃないか!」というツッコミが入っていた。
・ この姿のケイスケくんを彼のママの元へと返すわけにはいかないと思った私は、彼にタオルケット1枚だけを持たせ車から降ろした。私はケイスケくんが、通行人に身元不明の老人として保護されるものだと思っていた。彼が山奥へと迷い込み、そのまま山中にて、遭難死するなんてことは私は想定外でしかなかった。
そう、つまり『先日発見された推定90歳代とみられる男性の”遭難死”したと見られる遺体は、行方不明のケイスケくんの遺体である』と女は、供述したのだ。
その後のDNA鑑定によって、年齢が全く違うはずである高齢男性とケイスケくんのDNAは、見事なまでに重なり合い、”身元判明”を示すこととなった。
⇒【ややホラー風味な】身元不明【ショートショート第27弾】
(公開日:2019年2月24日)
★作者コメント★
たまたま隣の家に住んでいただけのサイコ女の身勝手によって、恐怖と孤独、寒さと痛みと空腹のなか、その短き人生を終えたケイスケくんの最期は胸が痛くなりますね。彼の無事を祈って必死で捜索していたご家族の悲しみも察するに余り有ります。
本作に登場するアプリ「A miserable time slip picture」ですが、本作の女とは逆の使い方をすれば、若返ることも可能な夢のアプリだと思いました。
話は変わりますが、最初は「第1弾から第10弾の公開まで頑張ってみよう」と考えていた【ややホラー風味なショートショート】も、先日公開した「銭湯モニター」で早くも28弾となりました。ということは、なずみワールドにおける、サイコな奴らのラインナップや酷い目に遭う(遭わされる)被害者たちがますます増えていっているということですね。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる