日本帝国恋愛譚

弍-大正時代

ふと、時計を見るともう、家を出ないといけない時間になっていた。私は風呂敷きを手にとり、中にキャラメルと芥川龍之介の『羅生門』を包んで玄関に向かい、編み上げのブーツを履いた。このコーデも、ハイカラで可愛いと呼ばれている。（でも私はドレスのコーデの方がお洒落で可愛いと思っている。）
　私は急いで家を飛び出して、近くのバス停に向かった。バスを待っている間は羅生門を読んでいた。芥川龍之介の芸術至上の作品はやはり表現が綺麗で、その世界に引き込まれていく。他にも、志賀直哉の『暗夜行路』、永井荷風の『あめりか物語』も、良く読んでいる。私は基本読書が好きなので、沢山の作品が続々と発売されているのが嬉しい。他にも、沢山の大衆雑誌を読むのも楽しみの一つだ。最近は付録が付いてくる子ども向け雑誌だってある。
　約九ページ程読んだ所でバスがやってきた。バスガールに声をかけられてバスに乗車した。やっぱり社会で働く女性は格好いいな。と思った。平塚らいてう達が青鞜社を立ち上げて、様々な活動を行った事によって男女差別が減少し、女性の社会進出が見られる様になった。バスガールの仕事もその活動のお陰で人気が出て来た仕事である。私の母と姉は電話交換手の仕事をしている。この職業も、女性の社会進出によって人気が出てきた職業の一つだ。私もあと数年で職を手にする事が出来るので、自分の将来に大きな希望を抱いていた。
　そんな事を考えていると銀座の辺りにやってきた。やはり都会の中の都会という事もあり、皆、お洒落で格好いい。女性も、美しい人が沢山いた。私も将来、あんなに綺麗になれるのだろうか。