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第2章 地下世界
21話 そして計画は破綻する
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「俺がターゲットにしているのは魔物じゃない。魔物を狙う人のほうだ」
「だろうね。そしてその人たちが黄金の大砲を持っているんだろ」
西城はなんでもお見通し、というように俺の計画を言い当てる。
「どうしてそこまで……」
「もし魔物狙いならば、俺にクリスタルを差し出すことがおかしい。結局倒しても1つしかドロップしないのだからね。とすると、黄金の大砲を持っている奴らをうまく利用してクリスタルを奪う計画しか考えられない」
「その通りだ。奴らは今、B5のボスを死神だと思っている。だが、死神は俺が倒した。つまり、奴らは死神用の弾を積んでB5へ行くものの、そこには違う魔物がいて狼狽える。その隙に、奴らからクリスタルを奪うんだ!」
「どうだろ、そんな上手く行くかな。予想通りに事が運んだとして、結局君もB5へ行くんだろ。そこでどうやって魔物と戦うつもりだ? さっき言ってた素手かい? ふふ」
西城は小馬鹿にしたように言うが、確かにここが作戦の急所。適当にしてはいけないと伝えてくれているのだろう。
「そこなんだよな……。俺まで倒されてしまったら元も子もない……」
「それなら、増援を雇うってのはどうだろう」
「雇うって……俺は今、1つもクリスタルを持ってないぜ」
「俺と一緒さ。分かり易く、『ドロップしたクリスタルを差し出す』と言えばいい。ドロップするクリスタルが確実に貰えるとなれば、それなりに強いパーティーでも動くはずだ」
確かに、俺の目的は盗まれたクリスタルを奪い返すこと。ドロップするクリスタルは目的物ではない。
「分かった、そうしよう」
「OK。時間はない、すぐに強そうなパーティーを見つけにいこう!」
◇◇◇
「西城、あのゴツイ男達のパーティーはどうだ?」
「ダメだ。確かにフィジカルはあるが、次元の力は全くない。その証拠に見て見ろ、全然スライムを倒せていない」
「なるほど……。だったらどのパーティーが良さそうだ?」
「そうだな……。お、九重、あそこのパーティーとかいいんじゃないか?」
西城の指が差す方には、男女4人組のパーティーが順調にスライムを倒していた。
「よし、声を掛けてこい、九重!」
「えっ、俺!?」
「当り前だろ、君の作戦なんだから」
「分かったよ……」
俺はトボトボとそのパーティーのいる方へ向かって行った。
「あの、すみません。ちょっとお話を……」
「なに? アンタ誰? いきなり鬱陶しいんだけどー」
「明美、こんなやつ無視しとけよ」
「あわわ、そんな、無視はよくないですよ……」
「うるせえなァ。時間の無駄だ、どっか行け!」
なんだこの言われよう。ああ、もういいさ。
俺が去ろうとした瞬間、西城が口を挟んだ。
「クリスタルがもらえると言っても、無視しますか?」
「「!?」」
「クリスタルだとォ!?」
「話だけは聞いてやろうじゃないのさ」
態度クルー。人間って生き物は本当に分かり易いな。
「これからB5のボスを倒しに行くんだが、人が足りない。手伝って欲しいんだ」
「なんでそれでクリスタルはうちらにくれるわけさ。アンタらに得がないじゃない」
「こいつら俺達を騙そうとしてるぜ。行こう」
「なら、先にくれてやるよ」
西城は自分の持つクリスタルを差し出した。
「!? ま……前払いだと……!?」
「おい、西城! 何もそこまでする必要ねえだろ!! 持ち逃げされるリスクだって……!」
「九重、あれを見ろ」
「!!」
西城の視線の先には、黄金の大砲を持ってB5へ向かおうとしている新庄とその面々がいた。
「もう時間はないんだ。手段を選んでいる場合じゃない」
「……そうだな」
「お前ら、これでも俺達が信じられないか!? 俺達の目的は単なる魔物狩りじゃない。お前たちを決して裏切ったりしない。頼む、手を貸してくれ!」
「…………いいだろう。手を貸してやろう」
「仕方ないわね」
「ま……待ってください!! B5ですよ! 相手がどの魔物かも分からない状態で突っ込むつもりですか!? 危険です! ここは断りましょう!!」
パーティーの女の子が1人、必死に止める。
止められるのは俺達にとっては都合よくないが、こうやって素直な行動をしている人がいるということは、俺達を裏切ったりしないだろう。この子の存在そのものが、このパーティーが俺達を裏切らないという証明になっている。
「うるせえな、二宮。クリスタル1つだぞ! こんな上手い話、他にないぜ!」
「そんな……」
「よし、決まりだな。さあ、行くぞ!」
二宮という女の子には申し訳ないが、この4人組はB5へ同行してくれることになった。
◇◇◇
B4を魔物に見つからないように潜り抜け、無傷でB5へと続く階段まで辿り着いた。
そして、B5へと繋がる階段の底からはお目当ての叫び声が聞こえてきた。
「ぐああああああああ!!」
「クソッ……大蜘蛛だと!? 森田の情報と違うじゃねえか!! あの後に誰か死神を倒しちまったってのか!?」
「死神用の弾しか積んでないぜ……!! うわああああああ!!!」
「誰か助けてくれええええええええ!!!」
「ふふ。九重、計画通りだな。どうする、もう行くか?」
「西城の経験では、大蜘蛛は糸で拘束して、じわじわと攻撃するんだよな。もう少し待ってみよう」
「うぎゃあああああ!! なんだこれ……ネバネバして動けねえ!!!」
「誰か……誰かあああああああ!!!!」
「よし今だ!! 皆行くぞ!!」
タッタッタッ!!!
俺達はB5へ駆け下りた。
案の定、部屋の中央には恐ろしい大蜘蛛の化け物がいて、壁には糸でグルグル巻きにされた新庄どもが拘束されていた。
「さあ……ここからが勝負だ! みんな、まずは大蜘蛛を倒すぞ!!」
バチュンッ!!!
(なんだ!? 体が……痺れて動けない……!?)
「九重、すまんな。しばらくそこで見ていてくれ」
「…………は?」
西城は、包帯を脱ぎ捨て、骨折しているはずの手で武器を掴んで飛び出していった。
「だろうね。そしてその人たちが黄金の大砲を持っているんだろ」
西城はなんでもお見通し、というように俺の計画を言い当てる。
「どうしてそこまで……」
「もし魔物狙いならば、俺にクリスタルを差し出すことがおかしい。結局倒しても1つしかドロップしないのだからね。とすると、黄金の大砲を持っている奴らをうまく利用してクリスタルを奪う計画しか考えられない」
「その通りだ。奴らは今、B5のボスを死神だと思っている。だが、死神は俺が倒した。つまり、奴らは死神用の弾を積んでB5へ行くものの、そこには違う魔物がいて狼狽える。その隙に、奴らからクリスタルを奪うんだ!」
「どうだろ、そんな上手く行くかな。予想通りに事が運んだとして、結局君もB5へ行くんだろ。そこでどうやって魔物と戦うつもりだ? さっき言ってた素手かい? ふふ」
西城は小馬鹿にしたように言うが、確かにここが作戦の急所。適当にしてはいけないと伝えてくれているのだろう。
「そこなんだよな……。俺まで倒されてしまったら元も子もない……」
「それなら、増援を雇うってのはどうだろう」
「雇うって……俺は今、1つもクリスタルを持ってないぜ」
「俺と一緒さ。分かり易く、『ドロップしたクリスタルを差し出す』と言えばいい。ドロップするクリスタルが確実に貰えるとなれば、それなりに強いパーティーでも動くはずだ」
確かに、俺の目的は盗まれたクリスタルを奪い返すこと。ドロップするクリスタルは目的物ではない。
「分かった、そうしよう」
「OK。時間はない、すぐに強そうなパーティーを見つけにいこう!」
◇◇◇
「西城、あのゴツイ男達のパーティーはどうだ?」
「ダメだ。確かにフィジカルはあるが、次元の力は全くない。その証拠に見て見ろ、全然スライムを倒せていない」
「なるほど……。だったらどのパーティーが良さそうだ?」
「そうだな……。お、九重、あそこのパーティーとかいいんじゃないか?」
西城の指が差す方には、男女4人組のパーティーが順調にスライムを倒していた。
「よし、声を掛けてこい、九重!」
「えっ、俺!?」
「当り前だろ、君の作戦なんだから」
「分かったよ……」
俺はトボトボとそのパーティーのいる方へ向かって行った。
「あの、すみません。ちょっとお話を……」
「なに? アンタ誰? いきなり鬱陶しいんだけどー」
「明美、こんなやつ無視しとけよ」
「あわわ、そんな、無視はよくないですよ……」
「うるせえなァ。時間の無駄だ、どっか行け!」
なんだこの言われよう。ああ、もういいさ。
俺が去ろうとした瞬間、西城が口を挟んだ。
「クリスタルがもらえると言っても、無視しますか?」
「「!?」」
「クリスタルだとォ!?」
「話だけは聞いてやろうじゃないのさ」
態度クルー。人間って生き物は本当に分かり易いな。
「これからB5のボスを倒しに行くんだが、人が足りない。手伝って欲しいんだ」
「なんでそれでクリスタルはうちらにくれるわけさ。アンタらに得がないじゃない」
「こいつら俺達を騙そうとしてるぜ。行こう」
「なら、先にくれてやるよ」
西城は自分の持つクリスタルを差し出した。
「!? ま……前払いだと……!?」
「おい、西城! 何もそこまでする必要ねえだろ!! 持ち逃げされるリスクだって……!」
「九重、あれを見ろ」
「!!」
西城の視線の先には、黄金の大砲を持ってB5へ向かおうとしている新庄とその面々がいた。
「もう時間はないんだ。手段を選んでいる場合じゃない」
「……そうだな」
「お前ら、これでも俺達が信じられないか!? 俺達の目的は単なる魔物狩りじゃない。お前たちを決して裏切ったりしない。頼む、手を貸してくれ!」
「…………いいだろう。手を貸してやろう」
「仕方ないわね」
「ま……待ってください!! B5ですよ! 相手がどの魔物かも分からない状態で突っ込むつもりですか!? 危険です! ここは断りましょう!!」
パーティーの女の子が1人、必死に止める。
止められるのは俺達にとっては都合よくないが、こうやって素直な行動をしている人がいるということは、俺達を裏切ったりしないだろう。この子の存在そのものが、このパーティーが俺達を裏切らないという証明になっている。
「うるせえな、二宮。クリスタル1つだぞ! こんな上手い話、他にないぜ!」
「そんな……」
「よし、決まりだな。さあ、行くぞ!」
二宮という女の子には申し訳ないが、この4人組はB5へ同行してくれることになった。
◇◇◇
B4を魔物に見つからないように潜り抜け、無傷でB5へと続く階段まで辿り着いた。
そして、B5へと繋がる階段の底からはお目当ての叫び声が聞こえてきた。
「ぐああああああああ!!」
「クソッ……大蜘蛛だと!? 森田の情報と違うじゃねえか!! あの後に誰か死神を倒しちまったってのか!?」
「死神用の弾しか積んでないぜ……!! うわああああああ!!!」
「誰か助けてくれええええええええ!!!」
「ふふ。九重、計画通りだな。どうする、もう行くか?」
「西城の経験では、大蜘蛛は糸で拘束して、じわじわと攻撃するんだよな。もう少し待ってみよう」
「うぎゃあああああ!! なんだこれ……ネバネバして動けねえ!!!」
「誰か……誰かあああああああ!!!!」
「よし今だ!! 皆行くぞ!!」
タッタッタッ!!!
俺達はB5へ駆け下りた。
案の定、部屋の中央には恐ろしい大蜘蛛の化け物がいて、壁には糸でグルグル巻きにされた新庄どもが拘束されていた。
「さあ……ここからが勝負だ! みんな、まずは大蜘蛛を倒すぞ!!」
バチュンッ!!!
(なんだ!? 体が……痺れて動けない……!?)
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「…………は?」
西城は、包帯を脱ぎ捨て、骨折しているはずの手で武器を掴んで飛び出していった。
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