高次元世界で生きていく

エポレジ

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第3章 真実を探す旅 -学園からの追撃者-

33話 パ・チンコ その①

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「お、建物が見えて来たぞ!」

 ひたすら山道を歩いてくると、ようやく人の気配がする建物が見え始めた。山の中の豊な緑とはうってかわってサボテン、サラサラの砂。

「街が見つかって良かったですわ。さっそく何か食べに行きましょう」

 俺達はOPENの看板がぶら下がった店に入った。



 カランカラン

「あいらっしゃい」

 サングラスをしたムキムキのおっさんにメニュー表を渡される。

「ハンバーガーにステーキに……。おお……なかなかボリューミーなメニューだな」

 心なしか周りの客もみんなゴツイし、今更だけど海外に来た気分。

「相変わらず高次元世界ってよく分かりませんわね。日本語が通じるとはいえ、もはや日本とは思わない方が良いかもしれません」

 結局俺達はハンバーガーとお水を注文した。
 注文を待っている間、他の客とマスターによる会話が聞こえてきた。

「それにしても旦那、聞いたかよ、なにやら高次元世界中に指名手配が出たそうじゃねえか」

「ああ、昨日の客が言っていたよ。近いうちに顔写真付きの紙が配られるそうだ」

「高次元世界の中央に喧嘩を売るなんて、図太い精神の持ち主がいたもんだぜ」

(まさかそれって俺のことなんじゃ……)

 ガクガクと震える俺を見て、雪夜は小声で優しくなだめる。

「糸、大丈夫ですわ。貴方のこととは限りませんし、たとえこの世界の全ての人が敵になったとしても私はずっと味方です」

「雪夜……ありがとう……」

 カランカラン

「あいらっしゃい……って、あんた客じゃねえな」

「はい。指名手配犯の捕獲のお願いに参りました」

(嘘だろ……よりにもよって今来やがったのか……!?)

 俺は必死に顔を隠す。
 雪夜も俺を影にして隠そうとしてくれている。

「この犯人の顔が載った紙を店に貼ってください」

「ほーん。こいつが例の男ねえ……。で、こいつは一体何をしたんだい?」

「詳しく知りませんが、高次元世界の重要な道具を盗んだとかなんとか……。では、私はこれで」

(盗んだ……? 俺は次元計を壊したはずだけど、情報が間違って伝わっているのか……?)

「はいよ。ごくろうさん」

 ガチャ

「だってよ……兄ちゃん」

 ギクッ!!!

 雪夜が俺をマスターから庇う。

「兄ちゃん達も見つけたらよろしくな」

「「……え?」」

 WANTEDと書かれたその紙には、黄色い髪の男の写真が載っていた。

(お……俺じゃない……!?)

「名前は【空原そらばら げん】……マナの能力は謎、しかし空中を飛び回る様子が目撃された……と書かれておりますわ」

「空を飛べるなんて、まるで魔法使いみてえなやつだな」

 コトッ

 マスターは俺達のテーブルにハンバーガーの入った籠と水を置いた。

「で……でかっ!?」

 ハンバーガー……? もはや爆弾。
 しかし、お腹のすかしていた雪夜はこれを笑顔で頬張る。

 カランカラン

 今度はカウボーイのような恰好をした男が来店してきた。

「あいらっしゃい。あそこの席どうぞ」

「いや、おいらは客じゃないでやんす」

「そう、ほんじゃ帰ってくれ」

 マスターがカウボーイを突き返す。

「待ってくれでやんす!! おいらはあそこの男に決闘を申し込みにきたでやんす!!」

 その男は俺に向かって指を差した。

「おおお!!」がやがや

「決闘か!!」がやがや

 周りが盛り上がってきた。

「おいらは尻口。1年生、といえば察しがつくでやんすか?」

「……学園からの追手か。だがこんな正々堂々来るなんて、これまでの奴らとは一味違うみたいだな」

「真っ向から勝負を仕掛けて勝つ、それが男でやんす」

「決闘といいましたが、具体的には何をするのですか?」

「ポーカーでもやると思ったでやんすか? 決闘と言ったら決闘でやんす。どちらかが戦闘不能になるまで戦う、正真正銘の決闘でやんす」

「余程自信がお有りのようですわね。私が捻り潰して差し上げますわ」

「男のおいらは女の子には手を出さないでやんす。九重糸! おいらと1対1の男の決闘、受けるでやんす!! それとも尻尾を巻いて逃げるでやんすか!?」

「糸、変な挑発に乗ってはいけませんわ。私も戦います」

「いや、雪夜は見ていてくれ。俺だって同じ1年生に負けるようじゃ話にならないからな。……いいだろう、尻口。その決闘、受けてたとう!!」

「おおおおお!!」がやがや

「尻口と九重ってやつの決闘らしいぜ!!」がやがや

「俺は尻口に2000円だ!!」がやがや

「俺は九重で!!」がやがや

 客の男達が賭け始めた。

「じゃあ表へ出るでやんす……九重糸!」


 ◇◇◇


 ヒュオオオ……

 乾いた風が砂の大地を吹き抜ける。

「なんですの……尻口が持っているあの武器は……」

「あれは……パチンコ!?」

「そうでやんす。おいらはこのパチンコを使うでやんす」

「じゃあ俺はこの杖を使おう」

「それでは、マスターの私が審判を務めよう。尻口と九重の決闘開始ッ!!」

 ワァァァァァァァァッ!!!

「先手必勝!! 打ち抜くでやんす!!」

 パチンッ!!

 尻口が金色の玉を撃った。

 ボスッ!!

 俺は間一髪かわし、金色の玉は後ろのサボテンにめり込んだ。

「思った以上に速いぞ……それに威力も……! だが、所詮パチンコ! 動き回ればそう簡単には当たるはずがない!」

 俺は的が定まらないように走り出した。

「おいらと戦うとみんなその戦法をとるでやんす。でも、全くの無駄でやんす!!」

 パチーーーンッ!!

 尻口は狙いを定め、再び金玉を一発放った。

「危ないっ!!!」

 雪夜が叫ぶ。

「うわっ!!!」

 バシッ!!!!

 なんと走り回っていた俺の顔面に命中。

「痛え……もう少しで目が潰されるところだった……。だが、こんなに走り回っていたのに命中させるなんてありえない……!!」

「男として堂々と教えてやるでやんす。おいらは【時間の次元】の能力者。2秒先の未来の景色が見える! つまり、未来の君へめがけて撃てば必然的に命中するというわけでやんす!!」
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