正夢が見れるなら高次元世界でも無双できる?

エポレジ

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第1章 入学前

17話 闇を乗り越えて

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 ピンポーン

「……はい」

 ガチャ

「……あら、フィアス。おはようございます」

「お、おおおおおはよう雪夜! い、いい天気だね~!」

 空は曇天である。

「そうでしょうか。さて、何の御用でしょう」

 雪夜のサファイヤのように冷徹な目。
 さらに、フィアスには、雪夜の闇がはっきりと見えている。

(糸~……怖すぎるよ~!!!)

 だらだら汗をかいているフィアスは呼吸を整えて、何とか平然を保つ。

「あの、プレゼント持ってきたんだ。これ、杖って言ってね、次元に干渉する助けになってくれるんだって」

「私に……? ありがとうございます。大事にいたしますわ」

 フィアスは杖を雪夜の手に渡す。
 その瞬間――

 ブオオオオッッ!!!!

「ひっ!!!」

 あたりに闇が渦巻く。

「……あ……ああ…………!!」

 あたりの闇が乱れ始めた。
 雪夜は必死に制御しようとしているが、溜まった闇が絶大すぎることと、杖の扱いに慣れていないことで非常に不安定な状態になっている。

「雪夜!! 外へ!!」

「わ、分かりましたわ!!」

 二人は階段を降り、急いで外に出た。

「あ、フィアス! そして雪夜も! うまくいったんだな!!」

 作戦はこうだった。
 フィアスが雪夜に杖を渡す。
 もし雪夜が暴走したらフィアスが一人でこの広場へ逃げてくる。
 うまく雪夜が杖で闇を制御できたら、二人でここへ合流する。
 フィアスと雪夜が二人で来たのだから、作戦は成功したと思った。

「あっ!! ダメ!!! 糸、離れて!!!!」

「えっ」

「ああああ…ああ!!!」

 俺には見えていないけれど、雪夜の闇が俺の闇を吸収して肥大化していく。

「雪夜!!!」

 雪夜は正気と狂気の境で、なんとかもがいている様子だった。
 その境界を越えてしまうとまた犠牲が出てしまう。
 俺はまた見ていることしかできないのだろうか。

「そうだ、杖……!」

 緑色のとても綺麗な杖を握る。
 冷静に、冷静に……。九尾狐さんと繋がった時を思い出せ。

「……っ!」

 俺は杖を雪夜へ向ける。
 この杖は本当に不思議で、魚釣りでもしているかのように、生物に対してビクッと反応する。
 九尾狐さんのようにはっきりとは聞こえなくとも、その反応から、なんとなく心の声が分かる気がするんだ。

(糸……助けて…………!! 闇が大きすぎて制御が効きませんわ……!!)

 一瞬、雪夜と意思疎通ができた。

「闇を少しでも減らすことが出来れば……」

 何か、闇を薄める手段はないのか……?

「闇を減らせばいいんだね」

 そこには前回の夢のように、ダイヤモンドのように白く輝く瞳をしたフィアスがいた。

「待て、フィアス!! それはお前のマナが……!!」

 シュドォォォォォン!!!!!!!

 前回聞いたような音が聞こえる。
 おそらく、闇の一部が振り払われたのだろう。

 シュドォォォォォン!!!!!!!
 シュドォォォォォン!!!!!!!
 シュドォォォォォン!!!!!!!

「やめろフィアス!! それ以上は辞めてくれ!!!」

 白色に近かったフィアスの髪色が、だんだんと黒くなってきている。
 フィアスの髪の色は、もしかしたらマナの残り残量を示しているのかもしれない。

「はあ……はあ…………あと…一回……!!」

 シュドォォォォォォォォォン!!!!!!!

 凄まじい音がした。
 それと同時にフィアスは倒れた。

 フィアスの髪色はさらに黒くなっていく。

「フィアス!!!!!」

 すると杖越しにとても強い生命信号が送られてきた。

(糸……私は大丈夫だよ、少しだけマナを残しておいたから。あとは……お願い……)

 九尾狐さんのようなはっきりとした心の声。
 もしかしたらフィアスは、【生命の次元】にも干渉できるのかもしれない。

「……ありがとう、フィアス。あとは任せろ!」

 俺は再び雪夜の生命波に繋がろうとする。

「雪夜、心を落ち着かせて集中するんだ!」

 雪夜の生命波の乱れを杖で少しずつ穏やかにする。
 このとき、はっきりと【生命の次元】に干渉できている気がした。
 杖に込められた心乃さんのマナが、平凡な俺にも【生命の次元】へ踏み入れることを許してくれているんだ。

(……闇が……まとまってきましたわ……!! 自由に操作できるような感覚……だんだんと分かってきましたわ!!)

 俺には闇は見えないが、精神が安定してきた雪夜は【闇の次元】を制御しつつあるようだ。

(あと少し…………はああああああ!!!)

 パァン!!!!

 何かが弾けた音。

「「……糸!!! 危ない!!!!」」

 何かを打ち出した雪夜と、仰向けで倒れていたフィアスが同時に深刻な表情で叫ぶ。
 二人の様子を見ると、雪夜が最後に振り払った闇の塊が、俺の方へ打ち出されたようだ。

 杖からも、【生命の次元】を通して闇が迫ってきていることをわずかに感じ取れた。

 でも、悔いはない。
 ここで俺がどういう目に遭っても、今回は…成功だ…!

 ドドドーーーーーーン!!!!!!!

 レーザー光線が一直線に俺の目の前を駆け巡った。
 そこには涙目の雪夜とフィアス……そして何かが抉り取られたような地面の跡。

「俺は……無事なのか……? 今、一体何が……」

「間に合って良かった」

 左から誰かがゆっくりと歩み寄ってくる。

「九重くん、だね。辛いこともあったらしいけど、よく【闇の次元】の超能力者の暴走を止めてくれた」

 その男の髪は炎のように赤く、瞳はルビーのように熱く輝き、雪夜や心乃さんに劣らない迫力を放っていた。

「あ……あなたは……?」

「僕は千陽朝日。チューベローズの生徒会長で【エネルギーの次元】の超能力者……なんて言うより、君には苺の兄と言った方が分かりやすいかな」

「苺のお兄さん……?」

「ここで話すのもなんだし、場所を移そうか」
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