正夢が見れるなら高次元世界でも無双できる?

エポレジ

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第2章 劣等生

19話 入学式

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 4月7日、入学式当日。
 あれ以降は特に正夢を見ていない。

 部屋で準備をして、壁越しに繋がっている隣の部屋への扉を開ける。

 ガチャ

「苺、準備できた? 今日は10時に樫木講堂かしきこうどうだよね、一緒に行こう!」

「バカ! アンタと一緒に行くわけないでしょ! 誰かに見られたら同姓してるって勘違いされるじゃないの!」

「同姓みたいなものじゃないか」

「とにかくアタシは先に行くわ! 樫木講堂はセンターゾーンの東側にあるから遅れずに来ることね、フン!!」

 バタンッ!

 苺は相変わらずだけど、今日はいつもと少し違う。
 赤く長い髪も丁寧にまとめ、制服も着こなし、準備万全だった。

「俺も行かないと」

 ガチャ

 ボロボロの赤砂寮を出る。
 すると驚いたことに、昨日までは普通だった寮周りの木が、一気にピンク色の花を咲かせている。

「わあ……綺麗…………」

「ジゲンザクラよ。【時間の次元】をうまく組み込んでいて、時限爆弾のように一斉に咲き誇る。毎年入学式の日に咲くようになってるみたいね」

「あれ、苺。先に行ったんじゃ」

「フン! 樫木講堂の場所分からないだろうから、仕方なしに教えてあげるわ!」

 2人でジゲンザクラの舞う道を歩いていく。

 変な緊張に包まれ、今日の俺と苺の会話はぎこちなかった。
 そうこうしているうちに、いつのまにか青月館の前まで来ていた。

「……あれ、今日はフィアスさんのとこに行かなくていいの? いつも朝ご飯作りにいってるわよね」

「ああ、昨日雪夜に聞いたんだけど、雪夜はもう少し早く集合なんだって。同じクラスのフィアスももう行ってるんじゃないかな」

「あら、そうなの」

 昨日は雪夜の部屋でぬいぐるみを直していた。

「それにしても、やっぱり人が増えて来たね。あれ? 人それぞれ制服の色が違うような」

「ベースの黒は低学年、白は高学年を意味するわ。ラインの青、黄、赤は寮の色と同じよ。私達の赤は下に見られる屈辱的な色なの」

「赤、綺麗なのにな……」

「……!」

 一瞬、苺の顔が赤くなったような。

「ねえ、それより俺の胸についているこのドクロのバッジは何?」

「それは、バカの証よ」

「バ、バカの証!?!?」

「そう。学年の成績下位3名はそれをつけさせられるのよ。上位3名は羽のバッジ」

「ええええ……」

 俺のドクロのバッジは、朝日に照らされてキラキラと輝いていた。

「ん、あの人がいっぱいいる講堂が樫木講堂?中々にでかいな」

 学校内をしばらく歩くと、人だかりができている大きな講堂へとたどり着いた。

「日本にある講堂の中で面積、収容人数ともにダントツの1位。とは言っても、高次元世界にあるチューベローズは全てにおいてずば抜けてるのだけどね」

「新入生の方ですか?こちらへどうぞ!」

 講堂の前の案内さんが誘導してくれる。
 白いベースに黄色の制服。なるほど、この案内さんは高学年のBクラスの方ということか。

 講堂には既にたくさんの生徒が埋まっていた。
 舞台の近くには新入生が、外側には在学生と思われる人が座っている。
 てっきり新入生だけのこじんまりとした式だと思っていたが、全生徒が出席している大きな式だった。

 知らない人が次々と入ってくる。
 そして人の出入りが少なくなってきたころ、時刻は10時を迎えた。

「これより、チューベローズ能力開発学校の入学式を行います」

 司会は学生が務めている。

「まずは、元岡もとおか校長のお話です」

 出てきたのは、見覚えのあるおじいさん。
 そう、なんとバスの中で出会ったあの人だ。

「えー……新入生諸君、入学おめでとう。クドクド話してもどうせ寝るじゃろうし、わしから伝えたいことは3つだけじゃ。まず1つ目、本校は完全寮制じゃから、仲良くするように。2つ目はキャンパスの地下1Fより下へは決して行ってはならんということじゃ。そして最後に3つ目。これは上級生にも聞いて欲しい」

 周りが少しざわつく。

「みなも知っての通り、この学校には誇るべき超能力者が4人おる。超能力者の存在は科学や経済の発展を著しく加速させる、宝物のような存在じゃ。そしてなんと、今年はその宝物が増えた」

 ざわざわ……!!

「マジかよ!」

「5人目の超能力者ってことか!?」

「すごーい!!」

 周りが一気に盛り上がる。

「そしてなんと、そやつは【闇の次元】の超能力者じゃ」

 ワーーーーーッ!!!

「嘘ーー!?!?」

「やばっ!!!」

「【闇の次元】の研究がついに進展するな!!」

 構内のボルテージは最高に上がっている。

「……全く、どうしてすぐ公にしたがるのかしら、この校長は」

「はは、お祭りごととか好きな人だからね。そういえば、弥生も例の一件ではお手柄だったじゃないか。九重くんが持っていた緑色の杖、弥生のだろ」

「さあ、何のことかしら」

「目的は分からないけど、どうやら裏で何かを企んでいるみたいだね」

「こっちのセリフよ。私でも心が読めないあなた達は、何を考えているか不気味でしょうがないわ」

「……」

 舞台袖で3人の超能力者が校長の話を聞いていた。

「つまりわしが言いたいのは、みなも新入生に負けないように頑張れということじゃ。以上」

 パチパチパチパチ

「元岡校長、ありがとうございました。続きまして在校生祝辞。在校生を代表して千陽生徒会長、よろしくお願いします。」

「はい」

 舞台袖から朝日さんが歩いてくる。

「新入生の皆様、ご入学おめでとうございます。本校では――」

「やっぱり苺のお兄さんってかっこいいね」

「そうかしら。まあこういうときだけね」

「――簡単ではございますが、以上で祝辞とさせていただきます」

 パチパチパチパチ

「千陽生徒会長、ありがとうございました。続きまして新入生答辞。新入生総代、松蔭雪夜さん、よろしくお願いします。」

「はい」

 舞台のすぐ近くに座っていた雪夜が舞台に上がる。

「このたびは、私たち新入生のために、心のこもった祝辞をいただき誠にありがとうございます。先輩の祝辞を受け私たちは――」

「なるほど、雪夜は答辞の打ち合わせのために早く集合だったのか。あれ、ということはフィアスは……」

 そのころ、青月館の205号室ではフィアスが目を線にしながらベッドに転がっていた。

「糸~ごはんまだ~?」

「最後になりますが、本日は立派な入学式を催していただきありがとうございました」

 パチパチパチパチ

「ありがとうございました。以上をもって今年度の入学式を終了いたします。新入生の皆様のこの後についてはこちらを参照ください」

 講堂が明るくなると同時に、中央の画面にでかでかと案内が映し出された。

【集合時刻・場所】
 各クラスの新入生は本日13時に以下の場所に集合すること。
 青月館の生徒→Aクラス:センター1号館101号室
 黄泉荘の生徒→Bクラス:センター1号館102号室
 赤砂寮の生徒→Cクラス:ちゃぶだいの森

「「ちゃぶだいの森って何!?」」

 Cクラスに配属された俺と苺の声は見事に重なった。

「糸、そして苺。おはようございます」

「あ、雪夜。お疲れ様」

 人だかりの中、答辞をしていた雪夜と出会った。
 最優秀の成績を示す、羽のバッジがよく似合っている。

「新入生総代だなんて、雪夜ってばすごいのね。アタシのことは苺で良いわよ」

「ありがとう、苺。それよりも13時に集合だなんて、時間が空いてしまいましたわね」

「とにかく一回外に出よう。時間があればフィアスも誘って早めのお昼ご飯にでもしようよ」

 しかし俺たちが講堂の外へ出ると、すさまじい部活の勧誘がやってきたのだった。
 雪夜に向かって。

「あっ! 来たぞ、新入生の超能力者、松蔭雪夜だ!!」

「ほんとだ! ねえ、少しお話しよ?私達6D漫画部なんだけど……」

「いやいや! 俺達の超次元サッカー部にこそふさわしい!!」

「ワイらのパワフル野球部に決まっとるやろ!」

「おい抜け駆けすんなよ! 松蔭さんは絶対オカルト麻雀部に間違いねえ!」

「私達のレインボー茶道部だって!!」

 樫木講堂を出たとたん、雪夜の周りにたくさんの先輩方が押し寄せてきた。

「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいまし!」

「そうよ! アンタら、雪夜が困ってるじゃない!」

「ん? その赤髪……もしかして君は噂の千陽朝日先輩の妹さんかい!?」

「えっ!! そんなの絶対才能あるじゃない! ねえ、あなたもうちの部に入らない?」

「奢るからお昼一緒に食べよ~??」

「わっわっ!! なんでアタシまで勧誘される流れになってんのよ!?」

「いい加減にしてください! ちょっと強引すぎますよ!!」

「君は?」

「1年Cクラスの九重糸です」

 ドクロのバッジがキラリと輝く。

 ぽいっ

「お願い松蔭さん! ちょっとだけお話聞いてくれるだけでいいから!」

「千陽さんも、明日の夜新歓コンパやるんだ! 是非パンフレットに目を通しといてよ!」

「おいいいい!!! 俺だけポイ捨てかよ!!」

 人だまりに周りが気付き、さらにその人だまりが大きくなっていく。
 まるで有名人だ。もう俺の入る隙間はない。

 こりゃ絶対押し負けて、二人は先輩方とお昼ご飯を食べることになるんだろうな。
 この謎の13時までの時間はこういうことか。

「…いいさ、俺はボッチ飯にはならない。フィアスがいるもんニ」

 ふてくされながらフィアスのいるであろう青月館へ向かおうとしていると、黒いレトロな帽子を被った少女が話しかけてきた。

「ねえ、君新入生でしょ? 私サークルの勧誘してるんだけどさ、良かったら話だけでも聞いてくれないかな!」

 黒色のベースに黄色いラインの制服。低学年のBクラスの学生のようだ。

「は、はい!!」

 誰にも勧誘されなかったこともあり勧誘されて嬉しくなっちゃったので、その人について行くことにした。
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