暑い日の昼下がり、ベッドで熱くなる二人

トルマ・フラーナ

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 だいたいの後処理を終えたあたりで、ルシアはシーツのシワを伸ばすようなしぐさをしながらつぶやいた。

「シーツ、におっちゃうかも……」
「あー……この暑さだしな。洗濯するか」
「お願い。じゃあ、わたしはシャワー浴びてくるね」
「え」
 洗濯係を彼に押し付けて、彼女はさっさとバスルームへ向かっていく。
 
 その後ろ姿。
 汗まみれの背中。
 じっとりと濡れた肩甲骨が優美に動く。
 火照った尻や太ももが匂い立つような色味をおびて、なんとも肉感的で魅力的だ。
 股間からはさっきの中出しの残滓ざんしがまだ垂れ落ちて糸を引き、内ももをいやらしくよごしている。

 彼は思う。シャワーを浴びてるところに乱入してバックでもう一発……くらいはできそうだな……。
 けれど愛の営みは、さっきようやく終わったばかりだった。
 
 とりあえずシーツだ。
 汗とかその他の水分を大量に吸って、ずいぶん重くなった大判の布をベッドから引きはがす。洗濯機に放り込んでスイッチを押す。

 年代物の機械にふさわしい、ゴゥン、ゴゥンという音を立てて、大ざっぱに動き出した。
 ザザァ、と温水が入っていくのをボケーっと見ていると、急にガクッと水量が減る。彼女がシャワーを使い始めたらしい。

「今のうちに新しいのに替えとくか……」
 今洗っているやつを干すと今日中には乾いてしまうだろうから、また同じのを使ってもいい。
 けれど人生ナニがあるかわからない。夜までセックスはないだろうと思ってマットレスのままにしておいたら、なぜか急に二人とも欲情してしまって、ヤる雰囲気になってしまったので、慌ててシーツを用意する――というのでは格好がつかない。

 替えのシーツをゴソゴソと取り出し、寝室に入る。窓から入ってくる光の角度がほんの少し変化しているが、まだまだけだるい昼下がりの時間だ。

 シーツのすぐ下に敷いていたベッドパッドをクンカクンカし、彼女の汗とか体液とか愛液が浸透していないか確認する。別に残っていてもいいんだが……と思うけれど、シーツを広げ、シワを伸ばし、枕も整えてメイキングする。
 
 この真新しいシーツの上で気持ちよさそうに寝そべる裸の彼女を想像する。
 ついでに「気持ちーのにゃー」とか猫語でしゃべりながら、ごろにゃんゴロゴロする姿も想像する。やがて見られていることに気付いてもじもじするが、別に隠そうともしないで、彼からの視姦を逆に愉しんでいる姿を妄想したりもする。
 さらにあろうことか、挑むような目つきになって急に起き上がったかと思うと、M字開脚して「ね? 絞りたてラブジュースだよ? 飲んで……」と下腹部をうごめかして淫口から濃厚愛液をトロトロと押し流して誘惑してきて――あたりまで妄想して、ちょっとだけ彼は勃起してしまった……。
 
 下半身をぶらぶらさせ続けるのも具合が悪い。下着と、ソファに放っておいたシャツを羽織る。
 それからキッチンに行き、冷蔵庫を開け、冷たい水を新しくグラスに注いだあたりで、ガチャリと音がした。


  ◇


「ふぅ……」
 ルシアがバスルームから出てきた。
 髪はざっとタオルを当てただけのようで、頬や首あたりに濡れた毛先がまとわりついている。
 洗いたての肌には水分がまだたっぷり残っていて、生まれたてのように、ぷるんと潤っていた。
 胸から下は、バスタオルで隠されている。全裸でうろうろすることも多いけれど、今日はまだ陽が高いためか多少の節操は残っているようだった。

 まあ、陽が落ちたらまた脱ぐんだろう、と彼は思う。
 白熱灯のライトに、彼女の色白の肌はしっとりとよく映える。そしてソファでしっぽり、しどけなくしなをつくって、美しい肢体の各部をこれ見よがしに魅せつけると彼が激しく欲情するのを、彼女はよく知っている。

 今彼女がまとっているバスタオルには、ちょっとだけアレンジが施されていた。水着の着替えなんかで使うラップタオルぽいやつで、片方にゴムを通し、豊満な乳房の上でうまいこと引っかかるような構造だ。チューブトップなミニスカワンピースにも見えなくもない。スナップボタンひとつで脱ぎ着できるので、ずいぶんラクチンらしい。

「あ、お水いいな。ちょうだい♪」
 彼の手にあった冷たい水を目ざとく見つけておねだりしてきた。しょうがないなあ……と手渡そうとすると、
 
「そうじゃなくて……ね?」
 媚びるような目つきである。なるほど、そっちか、と彼は理解した。
 水を口に含む。
 それから彼女に近付き、指をそえてアゴを上げさせる。
 すると彼女はキスするときの顔つきのまま、
 
「あ~ん」
 と口を開けた。

 ぴったりと口唇を合わせてから、彼は口もとをゆるめる。
 とろとろ……と水が口移しされていった。
 それを彼女はおいしそうにコク……コク……と飲んでいく。
 
 けれどこのやり方はいつもうまくいかない。お互いの口唇にどうしてもすき間ができてしまう。
 
 彼女の口の端から、たらたらと水がこぼれていった。
 ほっそりとしたアゴから、なまめかしい陰影をみせる首すじの谷をつたい、鎖骨のくぼみで水たまりをつくり、そこから上胸のふくらみへと至るのだけれど、乳房の盛り上がりで道の変更を余儀なくされ、曲線を描きながら中央へ。
 水は胸の谷間に吸い込まれていく。

「んん……っ」
 冷たい水に肌をなぞられて彼女の肢体が震える。
 その様子は、抱いている彼の手や腕にもしっかり伝わってきていた。
 
 ゴゥン……ゴゥン……と洗濯機の音。
 それよりも大きい音が耳もとで鳴っている。

 ドッドッドッド……!
 脈動の音だ。
 血流は陰茎の海綿体にもドクドクと注がれていき、ヅクヅクとした痛いような強さで勃起がおこっていった。
 そうだ……と彼は思う。もう一度、もう一度……この極上のカラダを再びこの手に――

 ブーンンンン……トットットット……。
 
 すると、まったく違う音が聞こえてきた。窓の外からである。
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