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ゆめ4
一
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目覚めると、また奥村さんの腕の中だった。
朝食をつくるために抜け出す。
一人分でいいか迷う。トーストとスクランブルエッグくらいなら、すぐに作れる。
人と眠るのにはなれていない。疲れが残っている気がした。頭をすっきりさせたくて洗面所へ向かう。顔を洗いおえ髪を整えていると、いきなり扉が開くのが鏡に映った。
振り向く。奥村さんが不機嫌そうな顔で立っていた。
「そこにいたのか。逃げたかと思うだろ」
たとえ、逃げたとしても、数時間後には研究室で顔を合わす。思わず笑ってしまった。
「朝ご飯、食べます?」
「軽く……」
まだ口をへの字にしたままだ。
前は、一番苦手な相手だったが、だいぶ、なれてきた。
奥村さんは、単に、顔立ちが無愛想なのだ。冷たそうな顔をして、確実に頭も良いのだから近寄りがたく感じるのも無理はない。
「お弁当は……いらないですよね」
「今から、弁当を作る気なのか?」
「まだ、六時前ですから、作れます」
奥村さんが、顔をしかめる。
「まだそんな時間なのか、後一時間は寝るつもりだったのに」
そんなことで怒られても困る。
「コーヒーでも飲みますか?」
一応は機嫌をとってみる。奥村さんは黙って頷いた。
準備をしようとキッチンへ向かう私の後ろをついてくる。
ガスコンロの前に立ち、やかんを目で探す。
奥村さんは腕組みをして、キッチンの入り口に立っている。黙ったまま、私の足下を指さした。
下の扉をあけると、中にやかんが入っていた。それも、銅製だ。
「綺麗ですね。このやかん」
「湯さえ沸けばどんなもんでもいい」
おっしゃるとおりだ。
「低血圧ですか?」
「お前さあ、俺より先に起きるな」
いきなり変な注文をつけられる。
「それ、逆じゃないですか?」
「俺は、亭主じゃない」
そんなことはわかっている。だいたい、私たちは……。
この関係は一体何と呼べばいいのだろう。
私は、研修中だった。
先生と、生徒……。
そう位置づけるのには、抵抗があった。
コーヒーを飲み終わる頃には奥村さんの機嫌もなおっていた。
用意した朝食もすべて食べた。
「お前、本当に料理うまいなあ」
人に食べてもらう機会もなかったので、ほめられるのは嬉しい。
「何か食べたいものを思いついたら言ってください」
奥村さんは少し考えて「炭水化物がもう少し多い方がありがたい」と言った。
今夜はパスタにしようかと考えていた。奥村さんが立ち上がり、何かを取ってきた。
渡されたものは、鍵だった。スワロフスキーのキーホルダーがついている。
「もう場所は覚えただろう。好きな時間で帰ったらいい」
朝食をつくるために抜け出す。
一人分でいいか迷う。トーストとスクランブルエッグくらいなら、すぐに作れる。
人と眠るのにはなれていない。疲れが残っている気がした。頭をすっきりさせたくて洗面所へ向かう。顔を洗いおえ髪を整えていると、いきなり扉が開くのが鏡に映った。
振り向く。奥村さんが不機嫌そうな顔で立っていた。
「そこにいたのか。逃げたかと思うだろ」
たとえ、逃げたとしても、数時間後には研究室で顔を合わす。思わず笑ってしまった。
「朝ご飯、食べます?」
「軽く……」
まだ口をへの字にしたままだ。
前は、一番苦手な相手だったが、だいぶ、なれてきた。
奥村さんは、単に、顔立ちが無愛想なのだ。冷たそうな顔をして、確実に頭も良いのだから近寄りがたく感じるのも無理はない。
「お弁当は……いらないですよね」
「今から、弁当を作る気なのか?」
「まだ、六時前ですから、作れます」
奥村さんが、顔をしかめる。
「まだそんな時間なのか、後一時間は寝るつもりだったのに」
そんなことで怒られても困る。
「コーヒーでも飲みますか?」
一応は機嫌をとってみる。奥村さんは黙って頷いた。
準備をしようとキッチンへ向かう私の後ろをついてくる。
ガスコンロの前に立ち、やかんを目で探す。
奥村さんは腕組みをして、キッチンの入り口に立っている。黙ったまま、私の足下を指さした。
下の扉をあけると、中にやかんが入っていた。それも、銅製だ。
「綺麗ですね。このやかん」
「湯さえ沸けばどんなもんでもいい」
おっしゃるとおりだ。
「低血圧ですか?」
「お前さあ、俺より先に起きるな」
いきなり変な注文をつけられる。
「それ、逆じゃないですか?」
「俺は、亭主じゃない」
そんなことはわかっている。だいたい、私たちは……。
この関係は一体何と呼べばいいのだろう。
私は、研修中だった。
先生と、生徒……。
そう位置づけるのには、抵抗があった。
コーヒーを飲み終わる頃には奥村さんの機嫌もなおっていた。
用意した朝食もすべて食べた。
「お前、本当に料理うまいなあ」
人に食べてもらう機会もなかったので、ほめられるのは嬉しい。
「何か食べたいものを思いついたら言ってください」
奥村さんは少し考えて「炭水化物がもう少し多い方がありがたい」と言った。
今夜はパスタにしようかと考えていた。奥村さんが立ち上がり、何かを取ってきた。
渡されたものは、鍵だった。スワロフスキーのキーホルダーがついている。
「もう場所は覚えただろう。好きな時間で帰ったらいい」
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