感じさせて……。

紫倉 紫

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ゆめ4

十四

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 今日は、第二金曜日だから、顕微鏡での観察もある。数が多いので、すぐにでも始めたかった。
 一つ一つ、保温庫内の温度をみていく。中から取り出し藻の葉緑素の変化を記録する。
 一番厳重に管理されているのは、37度の分だ。台数も8台ある。
 弱った株が出てくるとすぐに排除する。最初の頃は、湯と呼べる温度にほとんどの株が耐えられなかったらしいが、今では、結構増えてきた。
 津山さんに、チェックするポイントを伝えなくては。
 ピンセットで藻の一部をとりセットした。顕微鏡を覗いてまずはいつもの通り観察にはいった。
 津山さんがすぐ隣にきた。ある程度は仕方ないと思うが、どうせ、二人同時には覗けない。腕に腕が触れる。
 私は集中できずに焦点ハンドルに触れてしまった。
「あっ」
 私が顔を上げると「貸してください」と言って、焦点ハンドルを持つ私の手に、手を重ねてきた。
 無理矢理に割り込んで接眼レンズを覗きこむ。
 私は精一杯避けたけれど、それでも津山さんと密着してしまった。
 男性用の香水だろうか。嗅ぎ慣れない香りがした。
 体に触れる熱も、何もかもが不快だ。
 観察対象を長時間外に出していると、正確な記録がとれない。
 しっかりしなければ。
 津山さんが、ハンドルを動かすのをやめた。
「合ったのなら、どいてもらえる?」
 津山さんは、少し離れてくれた。
 覗いて、焦点が合っていることを確認し、写真を撮った。
 目で観察した後は、葉緑素系で量を測定する。
 この手順で、各温度帯の変化を記録していく。
 後は、データに入力しグラフ化して教授へ報告する。
 最近は随分落ち着いている。
 引き継ぎは結構難しい。
 微妙な変化は、違和感として見つけられるだけだ。
 庫内の照明はLEDなので、切れることはほとんどないが、それでも、気を抜いてはいけない。常にチェックをして置かなければ。
 はっきりとした日程はきいていないけれど、奥村さんについて研究所をあける日までに、きちんと引き継いでおかないと、少しの失敗で今までの記録がすべてだめになることも考えられる。
 さっきほどでないにしても、津山さんはやはり距離が近い。
 そのうち慣れるだろうか。気が重かった。
 そうこうしているうちに、奥村さんが迎えに来た。
 時計を見ると、12時ちょうどだった。
 とにかく津山さんと離れたかったので助かった。
「時間も時間なので、お昼にしましょ」
 立ち上がって、奥村さんの方へ向かう。
 いつも通り無表情の奥村さんをみて、不思議とほっとした。
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