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ゆめ4
十六
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教授の実験のこと?
「俺が一番得をしてるのに、批判するのはおかしいな」
得……。
私は口元が緩んでしまうので、うつむいてごまかした。
そこまで、私の料理を気に入ってくれてるなんて、嬉しかった。
「ありがとうございます……」
「お前……」
奥村さんが呆れたような口調で言う。
顔をみる。
「絶対、思い違いをしてる」
首をかしげる。何が違うのかわからない。
「それより、今日は一緒に帰ろう。教授もいないから、とくに急ぎの仕事は抱えていない」
それで、朝もゆっくり来たらしい。
ずるい。
私は朝から、気持ちの悪い……森本って人だ。
それに、津山さんも苦手だし、散々な目にあっている。
「今夜、最後のに飲酒の条件がついてる。帰りに買うから、好きなのを選ぶといい」
4コマすると言っていた。急に憂鬱になる。
それに、あまりお酒は好きじゃない。
それでも、ひとまず頷いた。
午後も、常に津山さんがそばにいる状態で、落ち着かなかった。
奥村さんが五時過ぎに研究室へ来た。
「打ち合わせするぞ」
「なんのですか?」
「打ち合わせは打ち合わせだ」
早く帰ると言われていたので、片付けはすませておいた。ドアの方へ駆け寄る。
奥村さんは先に歩き始めた。ようやく追いつく。
「白衣」
「打ち合わせの後でも……」
「帰るぞって言えば良かったか?」
やっとわかった。私は白衣を置くためにいったん戻った。
中から笑い声が聞こえた。津山さんの声だ。相手は誰かわからない。
私と接している時と口調の差がすごい。誰でも二面性があるものだ。それでも津山さんのは、不快だった。
白衣をしまって、駆け戻る。
奥村さんの前で立ち止まる。
突然、奥村さんが私に手のひら向けて差し出してきたので、なんとなく手に持っていたバッグを渡した。
「お手って言ってるのに、荷物を持たしてくる犬があるか」
慌てて、バッグの持ち手に手を伸ばした。奥村さんがしっかり握って「仕方ないから持ってやる」と言った。
「あ、ありがとうございます」
「今日は、まあだいぶ気の毒だからなあ」
研修内容のことだろうか。まだ七日は経っていない。そこまではなくても、少し踏み込んだ何かをされるのかもしれない。
「明日は休みだろう。少々遅くなってもかまわないから、何か食いに行くか?」
急ぎで使い切らなければいけない食材はない。
「寿司でも、焼き肉……は、やめておくか……お前の好きなもんで」
急に言われても何も思いつかない。どうせなら、自分で作れない料理がいい。
「ラーメンでも良いですか?」
「はあ? せっかく前倒しで元気づけようと思って言ってやったのに」
「食べてみたいラーメンがあるんですけど、すごく並ぶんですよ。一人で行く勇気がなくって」
奥村さんは本気で嫌そうな顔をしながら「安い『前払い』だ」と言った。
誰かとだったら並んでいても退屈しないと思っていたけど、私と奥村さんにはこんな人に聞かれそうな場所で話せる共通の話題はなかった。
「俺がこの苛立ちに耐えるのは、相当、特別だとわかっとけよ」
言われなくても、顔を見れば十分すぎるくらいわかる。
二十分ほど並んでようやく入れたが、二十分も店内には居なかった。
味は人気店だけあって複雑なうまみが混在する濃厚なスープが美味しかった。個人宅では出せない味だ。
奥村さんも「まあ、また一人で並ぶのが嫌だったら付き合ってやるよ」と言っていたので、満足はしたのだと思う。
「俺が一番得をしてるのに、批判するのはおかしいな」
得……。
私は口元が緩んでしまうので、うつむいてごまかした。
そこまで、私の料理を気に入ってくれてるなんて、嬉しかった。
「ありがとうございます……」
「お前……」
奥村さんが呆れたような口調で言う。
顔をみる。
「絶対、思い違いをしてる」
首をかしげる。何が違うのかわからない。
「それより、今日は一緒に帰ろう。教授もいないから、とくに急ぎの仕事は抱えていない」
それで、朝もゆっくり来たらしい。
ずるい。
私は朝から、気持ちの悪い……森本って人だ。
それに、津山さんも苦手だし、散々な目にあっている。
「今夜、最後のに飲酒の条件がついてる。帰りに買うから、好きなのを選ぶといい」
4コマすると言っていた。急に憂鬱になる。
それに、あまりお酒は好きじゃない。
それでも、ひとまず頷いた。
午後も、常に津山さんがそばにいる状態で、落ち着かなかった。
奥村さんが五時過ぎに研究室へ来た。
「打ち合わせするぞ」
「なんのですか?」
「打ち合わせは打ち合わせだ」
早く帰ると言われていたので、片付けはすませておいた。ドアの方へ駆け寄る。
奥村さんは先に歩き始めた。ようやく追いつく。
「白衣」
「打ち合わせの後でも……」
「帰るぞって言えば良かったか?」
やっとわかった。私は白衣を置くためにいったん戻った。
中から笑い声が聞こえた。津山さんの声だ。相手は誰かわからない。
私と接している時と口調の差がすごい。誰でも二面性があるものだ。それでも津山さんのは、不快だった。
白衣をしまって、駆け戻る。
奥村さんの前で立ち止まる。
突然、奥村さんが私に手のひら向けて差し出してきたので、なんとなく手に持っていたバッグを渡した。
「お手って言ってるのに、荷物を持たしてくる犬があるか」
慌てて、バッグの持ち手に手を伸ばした。奥村さんがしっかり握って「仕方ないから持ってやる」と言った。
「あ、ありがとうございます」
「今日は、まあだいぶ気の毒だからなあ」
研修内容のことだろうか。まだ七日は経っていない。そこまではなくても、少し踏み込んだ何かをされるのかもしれない。
「明日は休みだろう。少々遅くなってもかまわないから、何か食いに行くか?」
急ぎで使い切らなければいけない食材はない。
「寿司でも、焼き肉……は、やめておくか……お前の好きなもんで」
急に言われても何も思いつかない。どうせなら、自分で作れない料理がいい。
「ラーメンでも良いですか?」
「はあ? せっかく前倒しで元気づけようと思って言ってやったのに」
「食べてみたいラーメンがあるんですけど、すごく並ぶんですよ。一人で行く勇気がなくって」
奥村さんは本気で嫌そうな顔をしながら「安い『前払い』だ」と言った。
誰かとだったら並んでいても退屈しないと思っていたけど、私と奥村さんにはこんな人に聞かれそうな場所で話せる共通の話題はなかった。
「俺がこの苛立ちに耐えるのは、相当、特別だとわかっとけよ」
言われなくても、顔を見れば十分すぎるくらいわかる。
二十分ほど並んでようやく入れたが、二十分も店内には居なかった。
味は人気店だけあって複雑なうまみが混在する濃厚なスープが美味しかった。個人宅では出せない味だ。
奥村さんも「まあ、また一人で並ぶのが嫌だったら付き合ってやるよ」と言っていたので、満足はしたのだと思う。
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