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第参話

まさかの後宮入り!?

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伽哩を食べ終わり、お腹いっぱいになった夜鷹は皿を洗い、水をきって専用の手拭いで拭った。
雷庵はいつの間にか椅子に座って呆けている。
皿を洗い終わり、一段落しているとスパァン!と夜鷹の家の扉を勢いよく開け、見知らぬ男が乱入した。
いきなり自分の家に入ってこられて驚かない人なんていない、ましてや来客(雷庵)がいるのに。

「ちょ、ちょっとどなたですか......」
「あ、すみませんいきなり! ......っておいこの雷庵アホ陛下! また脱走しやがりましたね!」
「うるさい。あと敬語って知ってるか? 学び直してこい脳筋部下」
「政の書類を投げ出して都へ遊びに行く陛下よりはマシですう!」

色々と突っ込みたいが、夜鷹にはそれよりも驚くことがある。

「へ..........陛下あああああああああっ!? ......むぐ」
「静かにしろ!声がでかい!(小声)」

阿鼻叫喚とはまさにこのことかと、夜鷹は妙に冷静な頭で考えたのだった。
......今それを考えてる場合か、とも思いながら。



































*  *  *  *  *


事の顛末を説明するとこうだ。
雷庵は今までサボって溜まりに溜まった政治関係の書類や、後宮での妃たちの争いと現帝との対談、その他諸々を休む間もなく片付けて三日三晩徹夜をし、食事もろくに取れず極度の睡眠不足になっており、気晴らしに何処かへ行こうと決めたのが都(華街ともいわれる)であり、更にその日の気温は高く、水も飲まずふらふらと歩いたのが良くなかったのか熱中症になり、そこを夜鷹が何にも知らず助けた、ということだった。

まあいかにも身分の高そうな服を着ていたのだからそうなのだろうが、まさか桜雅国の次期皇帝とは。
世間は思ったより

「そんなことが......あの、このことは誰にも言いませんので、華街に行きましょう! そこに行けば甘味がありますよ!」
「夜鷹様......なんともお優しい心遣い、ありがとうございます。ほら雷さん」
「お前は全く......昔のあだ名で呼ぶやつがどこにいるんだ。夜鷹、案内してくれるととても助かる。礼を言う」
「とんでもないことでございます」
「陛下を助けてくれたお礼に、なにか必要なものはありますか? 服でもなんでもいいのですが」
「え......そんな、誰かを助けるのは当たり前のことでございます。特に何もございません......」
「じゃあ、服はどうだ? その茶色の服しか無さそうだが」
「雷さん! 失礼ですよ命の恩人に向かって!」

雷庵の言う通り、夜鷹には茶色の、下が短洋袴(現代で言うスカート)の服しかないのだ。
一応買っておいたほうがいいだろう。

「あ......確かに服はこれしかありませんが、大丈夫です」
遠回しに遠慮します、と言った夜鷹は、へニャリと微笑んだ。頭の天辺は黒く、茶色から白になっている特徴的な髪が少し吹いた風でふわりと浮かぶ。

「............っ!」

一瞬だけ雷庵は驚いた顔をし、袖で顔を隠しながら、

「遠慮するな」

とだけ呟いた。
お付きの部下の人は何かを知っているかのようにニヤニヤしているが、よくわからないので夜鷹は放っておいた。

(名前まだ聞いていなかったなあ。まあ今度聞こう)

夜鷹は良くも悪くも、切り替えが早いのだ。

「それに、後宮に入れなければならんからな」

雷庵はひどく難しい顔をしながら、爆弾発言をした。
「え......?」
「後宮入りさせるってことは、気に入ったみたいですね~」

部下の人は雷庵に殴られていたが、そんなことよりも!

「!?!??!」

声にならないほど驚いた夜鷹は、遠い目をしながら心のなかで叫んだ。

(何を考えてるの!? てか許可を取れよせめて!! このアホ陛下ああああああ!!)

そんなこんなで、夜鷹たちは華街に出ることになった。






続く!


~あとがき~

さてどうもこんにちは!
今回はいきなりの全く新しい小説を始めてみました!

さて、いきなり後宮入りさせられる羽目になった夜鷹ちゃん。
これから一体どうなるんでしょうか……?

ドタバタなギャグ後宮物語を、今後ともぜひよろしくお願いいたします。
ではでは~。
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