ヨダカの桜吹く後宮異能料理帖

亜夏羽

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第鉢話

毒を以て毒を制す

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毒味役の席に着いた夜鷹は、料理が運ばれるまで素直に座っていた。
今回毒味するのは、林檎蜂蜜酒に鶏の丸焼き1切れと鶏白湯スープ、ほうれん草と竹輪の胡麻和えだ。
(まずは林檎蜂蜜酒からか。銀食器に入っているけど、見た目に異常はなし。匂いは良し。これくらい私にだって分かる、簡単な毒味の仕事。その後は飲み込むだけ……)
夜鷹は一気に酒を飲んだ。
皆が固唾を呑んで見ている中、夜鷹はこう言った。

「……毒入りですね」
と。
周りはザワつき、言った本人は水場へ直行したので、もうてんやわんやだった。
ただ2人を除いて。




















水場へ移動した夜鷹は、水で口をゆすいで吐き出した後、ほっと一息ついて空を見た。
(私は料理は好きでも、毒を好んで食らう趣味は無いからなぁ~……。飲み込んでなかったから良かったけど、あのまま間違って飲んでたら今頃は河豚の毒が全身に回って死んでただろうな。私は"まだ”死にたくないし、危なかったな~。雷庵様は今頃何をしてるんだろう……?)
「おい! 夜鷹!」
「……殿下?」
噂をすれば本人だ。しかも何やら焦っている。
「殿下こそ、何故ここに? 会はどうしたのですか」
「会も何も、皆大混乱だ。医官を呼ぶから、早く戻るぞ」
「え、ちょっ、ちょっと……! 毒は全て吐き出しましたよ……?!」
(……変な人。髪もボサボサだし、何をそんなに急いでいるのやら。陛下とか殿下とか言いつつ、この人も"人間”なのか?)
夜鷹はほんの少しだけ、変な気分になった。















*         *         *  

数週間後。
夜鷹は周りの侍女の気遣いにより、1週間くらいの休暇を与えられた。
舞苺妃も「好きなことして良いわよ~。この間の毒味役の事もあったし、家に帰っても大丈夫だからね!」と言われた為、妃様と陛下に念の為報告しておいた方が良いだろう。
そう思った夜鷹は、文を書いて雷庵の部下である伊織に、雷庵に渡して貰うようお願いした。
すると、雷庵が前に買ってくれた匙や服、木靴を渡してくれ、気をつけて行けと不安げな顔で言われた。
伊織には哀れみの目線で見られたので、夜鷹は不思議に思いながら此処を出る支度をした。
師匠に会いに行かなければいけないからだ。
身支度を殆ど済ませ、明日の早朝に出発するために酒を出して飲んだ。
ぷはーっ、と勢いよく息を吐き出し、つまみに鶏肉が入った包子を1口食べた。
うん、美味い。
そうして飲み食いした後、夜鷹は気絶したように眠ってしまった。













続く。




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