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第陀話
椿姫彩園の宴会、開宴
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冬。椿蓮会、当日。
会場では、帝や皇后に正一品の4夫人、その妃達にそれぞれ着いていく侍女達、踊り子や尚琴、三味線や尺八を吹く下女なども居る。
そして、皇帝である雷庵がいるのだが、その顔がいつもと違う顔だった。実は雷庵には瓜二つの弟君がいるらしく、その弟君である雷鵻(らいしゅん)皇太子はまだ来ていない。
周りはヒソヒソと皇帝不在の件で話している。
夜鷹もそれに気づいたので、会の大トリである料理を1通り作り終わったあと、持ち場を離れて雷庵を探しにいった。
「雷庵様~何処ですか? 椿蓮会始まりますので行かないといけないのですが……」
「……あ? 誰お前」
「こら雷鵻、失礼だぞ! 夜鷹、こちらが雷鵻だ」
「いた! 雷庵様……と雷鵻様でしたか」
やっとのこさ見つけたと思ったら、成程どうやら兄弟揃って急用のようだ。
「兄貴と比べてどうだ、俺は!! 美男子だろう?」
「いえ。どちらも美青年だと思いますね。あるいは、どちらも美男子では無いです」
「……は?」
「な、雷鵻。言った通り面白い奴だろう?」
「なんで兄様がそんな事自慢げな顔するんだよ」
「それはまた後で話す。夜鷹、お前もそろそろ行った方がいい。毒味役もあるのだから。俺たちも後から向かう」
「分かりました。お先に行ってまいります」
「頑張れよ~夜鷹」
「はい!」
無事に椿蓮会は始まり、妃たちは世間話や琴の音色を嗜んだりしている中、侍女達は次期皇后へ昇格させる言い争いをしていた。
「あら、舞苺妃のところの侍女達はさりげない飾りがお似合いで~。羨ましいわねぇ」
「そういう凛月妃のところにいる貴方達は、飾りを大胆に飾っちゃって~。逆に妃が目立たなくなりそうでお可哀想ですね」
「まぁ、あのよだかみたいな醜悪娘を引き入れたから、今帝の寵愛を貰えてないのではなくって?」
「名前も不吉だし不潔ですものねぇ」
「夜鷹は舞苺妃様の命を救ったんです! それに帝は舞苺妃の方へ頻繁に来ていますわ! それともあなた達は見た目で人を判断なさるような腐った目しか持ち合わせてないのですか? だとしたら凛月妃が一層お可哀想でなりませんわね。貴方達のような塵しか雇わせて貰えてないのですから」
「な、何ですってー?!」
ますます言い争いを激しくしそうな雰囲気の中、待ったをかけたのは舞苺妃の侍女、楊朱だった。
「ちょ、紗緒! 夜鷹のことで怒るのは分かるけど、今は落ち着いて!」
「ムカついて仕方ないのよ楊朱! いけしゃあしゃあと夜鷹の事なんて何にも知らない癖に~!」
「確かに、夜鷹の事悪くいうのは許せない……殺るん?」
「殺らないわよ猶猶! 天藍も何とか言って!」
「はぁ……いちいち向こうの言葉に反応する気力なんて持たない方が良いわよ、言いたいやつには言わせておけば良いの! 私達は夜鷹を信じる事だけしていればいいの。それに、知らなくて意地悪していたのは私達も同じだし」
「猶猶は冷静に見ていたけどね~」
「うん……止めれば良かった」
シュンと落ち込んだ顔になった猶猶に、天藍はごめんて、と謝った後こう言った。
「気にする余裕あるなら、夜鷹の仕事手伝えば?」
「料理苦手……お裁縫ならお手の物なのに」
「あら以外。そういえば天藍、桜姫と凛瑛は?」
「舞苺妃様の護衛で、夜鷹にお化粧した後すぐどっかいっちゃった」
「護衛ってまた大袈裟な……あの二人、同じ時期に侍女頭になってお互いをライバル視してるらしいし………競ってるとか馬鹿な事してないといいけど……」
「天藍ってたまに毒舌だよね……流石上級者侍女というか……」
「え?なに?」
「なんでもない~」
「てか、夜鷹は?」
「毒味役だってさ」
「えぇ……あの人食べる方じゃなくて作る方でしょ……」
「それはそう」
* * *
その夜鷹はというと…………
「へっっくしゅん! 寒いな……」
外が寒すぎるせいで、くしゃみをしていた。
(一応汁物には生姜湯ともう1つ温まるやつ用意したけどそれでも足りるかどうかだ……。風邪をひかない事を祈るしかない、か……)
「うぅ~さむさむ……温石持ってくればよかったな……」
夜鷹は再度手を擦りながら、家にある温石を思い浮かべ、毒味役の席についた。
続く。
会場では、帝や皇后に正一品の4夫人、その妃達にそれぞれ着いていく侍女達、踊り子や尚琴、三味線や尺八を吹く下女なども居る。
そして、皇帝である雷庵がいるのだが、その顔がいつもと違う顔だった。実は雷庵には瓜二つの弟君がいるらしく、その弟君である雷鵻(らいしゅん)皇太子はまだ来ていない。
周りはヒソヒソと皇帝不在の件で話している。
夜鷹もそれに気づいたので、会の大トリである料理を1通り作り終わったあと、持ち場を離れて雷庵を探しにいった。
「雷庵様~何処ですか? 椿蓮会始まりますので行かないといけないのですが……」
「……あ? 誰お前」
「こら雷鵻、失礼だぞ! 夜鷹、こちらが雷鵻だ」
「いた! 雷庵様……と雷鵻様でしたか」
やっとのこさ見つけたと思ったら、成程どうやら兄弟揃って急用のようだ。
「兄貴と比べてどうだ、俺は!! 美男子だろう?」
「いえ。どちらも美青年だと思いますね。あるいは、どちらも美男子では無いです」
「……は?」
「な、雷鵻。言った通り面白い奴だろう?」
「なんで兄様がそんな事自慢げな顔するんだよ」
「それはまた後で話す。夜鷹、お前もそろそろ行った方がいい。毒味役もあるのだから。俺たちも後から向かう」
「分かりました。お先に行ってまいります」
「頑張れよ~夜鷹」
「はい!」
無事に椿蓮会は始まり、妃たちは世間話や琴の音色を嗜んだりしている中、侍女達は次期皇后へ昇格させる言い争いをしていた。
「あら、舞苺妃のところの侍女達はさりげない飾りがお似合いで~。羨ましいわねぇ」
「そういう凛月妃のところにいる貴方達は、飾りを大胆に飾っちゃって~。逆に妃が目立たなくなりそうでお可哀想ですね」
「まぁ、あのよだかみたいな醜悪娘を引き入れたから、今帝の寵愛を貰えてないのではなくって?」
「名前も不吉だし不潔ですものねぇ」
「夜鷹は舞苺妃様の命を救ったんです! それに帝は舞苺妃の方へ頻繁に来ていますわ! それともあなた達は見た目で人を判断なさるような腐った目しか持ち合わせてないのですか? だとしたら凛月妃が一層お可哀想でなりませんわね。貴方達のような塵しか雇わせて貰えてないのですから」
「な、何ですってー?!」
ますます言い争いを激しくしそうな雰囲気の中、待ったをかけたのは舞苺妃の侍女、楊朱だった。
「ちょ、紗緒! 夜鷹のことで怒るのは分かるけど、今は落ち着いて!」
「ムカついて仕方ないのよ楊朱! いけしゃあしゃあと夜鷹の事なんて何にも知らない癖に~!」
「確かに、夜鷹の事悪くいうのは許せない……殺るん?」
「殺らないわよ猶猶! 天藍も何とか言って!」
「はぁ……いちいち向こうの言葉に反応する気力なんて持たない方が良いわよ、言いたいやつには言わせておけば良いの! 私達は夜鷹を信じる事だけしていればいいの。それに、知らなくて意地悪していたのは私達も同じだし」
「猶猶は冷静に見ていたけどね~」
「うん……止めれば良かった」
シュンと落ち込んだ顔になった猶猶に、天藍はごめんて、と謝った後こう言った。
「気にする余裕あるなら、夜鷹の仕事手伝えば?」
「料理苦手……お裁縫ならお手の物なのに」
「あら以外。そういえば天藍、桜姫と凛瑛は?」
「舞苺妃様の護衛で、夜鷹にお化粧した後すぐどっかいっちゃった」
「護衛ってまた大袈裟な……あの二人、同じ時期に侍女頭になってお互いをライバル視してるらしいし………競ってるとか馬鹿な事してないといいけど……」
「天藍ってたまに毒舌だよね……流石上級者侍女というか……」
「え?なに?」
「なんでもない~」
「てか、夜鷹は?」
「毒味役だってさ」
「えぇ……あの人食べる方じゃなくて作る方でしょ……」
「それはそう」
* * *
その夜鷹はというと…………
「へっっくしゅん! 寒いな……」
外が寒すぎるせいで、くしゃみをしていた。
(一応汁物には生姜湯ともう1つ温まるやつ用意したけどそれでも足りるかどうかだ……。風邪をひかない事を祈るしかない、か……)
「うぅ~さむさむ……温石持ってくればよかったな……」
夜鷹は再度手を擦りながら、家にある温石を思い浮かべ、毒味役の席についた。
続く。
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