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~第四章~
領都カザン!【一】
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バルトロ領の領都カザンは農耕が盛んな長閑な田舎町だった。
特に目立った外壁も無く民家と麦畑……。
そんな田舎町に似つかわしくない一軒の立派な屋敷。
おそらくは、あの立派な屋敷が領主の屋敷なんだろう。
カザンの玄関口には多数の民衆が僕らを迎えてくれた。
民衆の多くは老人と女、子供……穴が空いたりほつれてる服を着ていて、どこか生気を感じられない様な疲れ切った顔を一様にして見て取れた。
その民衆の真ん中に威厳かつ立派な身なりをした一人の人物が気持ち悪いぐらいの笑顔でマーチンさんに声を掛ける。
「新領主のマーチン様お待ちしておりました。私はこのカザンの領主代理を務めております、カザン町長のダンテ·アンドロマリウスと申します」
マーチンさんは馬車から降りアンドロマリウス町長に感謝の言葉を与える。
「出迎えご苦労である。アンドロマリウス町長。とりあえずは屋敷に向かいたいのだが……」
「はい、こちらでございます」
そう言うとアンドロマリウス町長の手は立派な屋敷には向かわず左手に手を向ける。
「僕はあの立派な屋敷が領主の屋敷だと思ってたけど……違うのか……」
「私もそう思ってた……」
僕とレインの希望を打ち砕きアンドロマリウス町長が案内した家は……屋根には穴があき風雨に晒された家だった。
「アンドロマリウス町長、これはどういうことかな?」
「はて?どうと申されますと……此方が領主様の屋敷で御座います」
「ほぅ……なら一つ聞くが町にあるあの立派な屋敷は?」
「あれは私めの屋敷で御座います。あの様なみすぼらしい屋敷には領主様をお泊めできる様な……それに此方が前領主様のお屋敷にございますので……」
「…………まぁ良い。また明日、アンドロマリウス町長にはいろいろ聞きたい事がある。相手してくれたまえ」
「はい。では私はこれにて失礼します」
「ワッハハハ 《大鴉の尻尾》のマーチンよ。ずいぶん舐められたの~」
「ん?《蒼き深雷》のビダンか………だな。ハッハハハ」
「いやいや、笑えないからぁー!」
レインが二人に突っ込み、カリンさんと僕、カヴァル、ブッフォンが頭を掻いた。
スズは呆然と荒れた廃屋をみて固まっていた。
そんなスズの横でサクラがドンマイ!とスズの肩に手を置いていた。
「さて、面白いもの見れたし儂らは帰るぞ!」
「《蒼き深雷》護衛ご苦労だった。気をつけてな」
「魔獣が居ないんじゃ寝ながらでも帰れるわ ガッハッハッ」
そう言い残し四十名の《蒼き深雷》のメンバーはグラン·カルロリムへ帰還して行った。
「……また露骨な嫌がらせですね。どうしますかマーチン様?」
僕らと廃屋を眺めるアニマさんがポツリとマーチンさんに問う。
「まぁ、とりあえずは野営だな。ギルド職員、開拓民の皆には悪いが……」
「ですね、とりあえずは野営ですね……」
「そう決まれば皆取り掛かろう。明日から本格的に動くしな」
「分かりました。ではギルド、開拓民の皆様には私から指示を出しておきますね」
「あぁ、頼んだ」
「ねぇ?マーチンさんあの町長嫌いでしょ?」
レインはマーチンさんのある癖を見抜いていた。
「あぁ、顔に出てたか?隠したつもりだったんだが……」
「顔には出てないわよ。でも普段、君付けしてるマーチンさんが、あの町長には君付けしてなかったから……嫌いなんだろうな~って思っただけよ」
「なるほどな、以後気をつけよう」
マーチンさんは笑いながらレインの肩をポンポンと軽く叩いた。
一方………。
「よし!じゃあ私たちはご飯だね。サクラちゃん頑張ってたくさん作ろ」
「うん!なに作る?」
スズとサクラは百名分の調理に楽しそうに取り掛かった。
開拓民の女性も自ら手伝いに入り、その夜は夜空の中、大宴会となったのだった…。
こうして前途多難な新生活が幕を明けたのだった………。
特に目立った外壁も無く民家と麦畑……。
そんな田舎町に似つかわしくない一軒の立派な屋敷。
おそらくは、あの立派な屋敷が領主の屋敷なんだろう。
カザンの玄関口には多数の民衆が僕らを迎えてくれた。
民衆の多くは老人と女、子供……穴が空いたりほつれてる服を着ていて、どこか生気を感じられない様な疲れ切った顔を一様にして見て取れた。
その民衆の真ん中に威厳かつ立派な身なりをした一人の人物が気持ち悪いぐらいの笑顔でマーチンさんに声を掛ける。
「新領主のマーチン様お待ちしておりました。私はこのカザンの領主代理を務めております、カザン町長のダンテ·アンドロマリウスと申します」
マーチンさんは馬車から降りアンドロマリウス町長に感謝の言葉を与える。
「出迎えご苦労である。アンドロマリウス町長。とりあえずは屋敷に向かいたいのだが……」
「はい、こちらでございます」
そう言うとアンドロマリウス町長の手は立派な屋敷には向かわず左手に手を向ける。
「僕はあの立派な屋敷が領主の屋敷だと思ってたけど……違うのか……」
「私もそう思ってた……」
僕とレインの希望を打ち砕きアンドロマリウス町長が案内した家は……屋根には穴があき風雨に晒された家だった。
「アンドロマリウス町長、これはどういうことかな?」
「はて?どうと申されますと……此方が領主様の屋敷で御座います」
「ほぅ……なら一つ聞くが町にあるあの立派な屋敷は?」
「あれは私めの屋敷で御座います。あの様なみすぼらしい屋敷には領主様をお泊めできる様な……それに此方が前領主様のお屋敷にございますので……」
「…………まぁ良い。また明日、アンドロマリウス町長にはいろいろ聞きたい事がある。相手してくれたまえ」
「はい。では私はこれにて失礼します」
「ワッハハハ 《大鴉の尻尾》のマーチンよ。ずいぶん舐められたの~」
「ん?《蒼き深雷》のビダンか………だな。ハッハハハ」
「いやいや、笑えないからぁー!」
レインが二人に突っ込み、カリンさんと僕、カヴァル、ブッフォンが頭を掻いた。
スズは呆然と荒れた廃屋をみて固まっていた。
そんなスズの横でサクラがドンマイ!とスズの肩に手を置いていた。
「さて、面白いもの見れたし儂らは帰るぞ!」
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「魔獣が居ないんじゃ寝ながらでも帰れるわ ガッハッハッ」
そう言い残し四十名の《蒼き深雷》のメンバーはグラン·カルロリムへ帰還して行った。
「……また露骨な嫌がらせですね。どうしますかマーチン様?」
僕らと廃屋を眺めるアニマさんがポツリとマーチンさんに問う。
「まぁ、とりあえずは野営だな。ギルド職員、開拓民の皆には悪いが……」
「ですね、とりあえずは野営ですね……」
「そう決まれば皆取り掛かろう。明日から本格的に動くしな」
「分かりました。ではギルド、開拓民の皆様には私から指示を出しておきますね」
「あぁ、頼んだ」
「ねぇ?マーチンさんあの町長嫌いでしょ?」
レインはマーチンさんのある癖を見抜いていた。
「あぁ、顔に出てたか?隠したつもりだったんだが……」
「顔には出てないわよ。でも普段、君付けしてるマーチンさんが、あの町長には君付けしてなかったから……嫌いなんだろうな~って思っただけよ」
「なるほどな、以後気をつけよう」
マーチンさんは笑いながらレインの肩をポンポンと軽く叩いた。
一方………。
「よし!じゃあ私たちはご飯だね。サクラちゃん頑張ってたくさん作ろ」
「うん!なに作る?」
スズとサクラは百名分の調理に楽しそうに取り掛かった。
開拓民の女性も自ら手伝いに入り、その夜は夜空の中、大宴会となったのだった…。
こうして前途多難な新生活が幕を明けたのだった………。
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