神世界と素因封印

茶坊ピエロ

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38.いつぞやを思い出す

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 小鳥が鳴く声。朝だ。昨日帝国とアメリカは戦争状態に入った。だがそんなことよりも俺とミナの父の悲報の方が衝撃が大きく、リビングに行くと台所で叔母さんが料理をしていた。そして少し目元を腫らしたミナが椅子に座っていた。昨晩はずっと泣いていたのだろう。


「おはようカズくん!」


 笑いながら朝の挨拶をするミナ。少し無理してそうだ。少し無理してるのか声に覇気がない。がんばってるミナにそれを言うのは酷だ。


「おはようミナ。一晩泣いてスッキリしたか?」


「うん。ある程度はね。カズくんもお父さん亡くして、お母さんは行方不明で辛いだろうに。ごめんね」


「謝るなよ。父さんと母さんが行方不明になってから2年以上も経つんだ。わりきってたからショックは少ししかないよ」

 それに今度はもしかしたら母さんは生きてるかもしれないしな。
 ミナと2人で話しをしていたらルナトが部屋から降りてきた。


「2人とも早いな。ちゃんと寝れたか?流石に宣戦布告の今日に攻めてくるとは限らないが、逃走に必要な体力くらいはないと困るぞ」


 ルナトは流石だ。昨日のこと引きずってないかとかデリケートな部分には触れないでくれた。


「大丈夫だよ。それに2人が守ってくれるんでしょ?」


「あぁその通り俺はミナを守る。ルナトはソルティアの方に行くかもしれないけどな」


 俺はルナトを茶化す。ミナも笑っていた。照れながらも否定はしなかったので本当に行きそうだ。まぁそうしたら俺が全力でミナを守る。兄さんとカナンさんもいるしな。


「ミナちゃん、笑う元気があるなら大丈夫ね。3人とも早くご飯食べて学校行ってきなー」


 俺たちは返事をしてご飯を食べ始める。ロースカツにご飯に味噌汁。日本食だ。朝からカツは重たいが勝つとカツで戦争に勝つって願掛けをしているのだろうか?いや、叔母さんは斑鳩に強い憎悪を抱いてた。きっと裏切ったあげく兄さん達の死に直結したからだろう。斑鳩に負けるなって意味もこもってるのだろうか?憶測でしかないがそういった意図もあるだろう。
 ご飯も食べ終わり学校へ行く準備もできているので俺たちは家を出る。


「じゃあいってきます」


「今日の夜からはもういないかもしれないけど、気を付けて帰って来るんだよ」


 そうか。もう開戦の火蓋は切って落とされたんだ。叔父さんが言うにはこの家に寝泊まりしているカナンさんを含めた未成年者は最前線には行かない。逆にそれ以外は行くそうだ。メアリーさんや叔母さんは徴兵される。本来、徴兵ってのは戦争の終盤で兵士の補充に行うものだと思っていたが、優秀なメアリーさんと叔母さんは早期投入されるのだろう。


「そっちも気を付けてね」


「香澄よ、マーフィーを支えてやってくれ」


「お母さんをよろしくお願いします」


 三人とも叔母さんにそれぞれ挨拶をして家を出て行く。戦場に行く前の人に対してあっさりとした会話じゃないかって?そりゃあまだ徴兵されると決まったわけじゃないからな。
 兄さんは寝坊しているがそちらはカナンさんに任せて俺たちは学校へ行く。おそらく宣戦布告で色々騒いでるんだろうな。


◇◆◇◆◇


 案の定校内は昨日の宣戦布告の話題で持ちきりだった。


「昨日の宣戦布告見たか?」「我が帝国に喧嘩を売るなんてアメリカはバカだよな」「民間施設にも戦禍はくるのだろうか?」など色々話をしている。
 教室に入るとムラサキがこちらに歩いてきた。


「やぁおはよう君たち。宣戦布告の話は聞いたか?」


「おはようムラサキ。うちは叔父さんが帝国軍元帥だしな、聞いてるよ」


「そうだったな。僕たち学生も徴兵ってされるのかね?」


「今のところ俺たちはされない。これから戦争が続けば、可能性は生まれてくるが他の学生がされないかはわからないな」


 叔父さんたちが俺たちを徴兵しなかったのは親心からか、贔屓なのか、ミナの護衛だからなのかわからないし。


「そうかー。実際の所どうなんだろうな?岡部真理夫って帝国にいるのかね」


 そういえば宣戦布告の声明を俺たちは聞いていない。帝国で岡部真理夫を匿っているっていうのもあったな。実際帝国に岡部真理夫はいないからアメリカの完全な言いがかりなのだが。それに岡部真理夫の作成した兵器を使ってる時点でこちらが匿っていたとしても同罪だと思う。


「いないと思うぞ。それに帝国軍には岡部真理夫が作成した兵器の使用は禁止している。いたとしてもひっそりくらしていてわからないんじゃないか?」


 ルナトはこたえる。帝国では近代兵器の使用は禁止されているのか。知らない情報だった。俺は軍人じゃないしな。


「ふーん。じゃあ別の国で岡部真理夫が近代兵器を大量生産していて、攻め込まれたら対抗策がないのか」


「そんなことはあるまい?帝国にはブレード持ちがいるしな」


「そこのお二方もブレード持ちですしね」


 ソルティアも登校してきた。ムラサキにはまだ俺がブレード持ちのこといってないんだが。


「カズスミもブレード持ちだったのか!?殿下がブレード持ちだったのは知らなかったが」


 ソルティアはまずった!って顔をして俺から目をそらす。あとで覚えてろよ。


「おはようソルティア。あとで説教な」


 ソルティアはビクつく。あ、ルナトが後ろからソルティアに軽くチョップをしている。ルナトが先に説教しそうだな。


「ムラサキ、聞いての通り俺もブレード持ちだ。黙ってて悪かったな」


「いやいいって、僕も聞かなかったしね。じゃあ将来はカズスミも軍人になるわけ?」


「いや、そんな気はまだないよ。まぁ選択肢にはあるだろうけどな」


「僕の近衛兵になってもいいんだぞ?」


「遠慮しとく。なるならルナトのだな」


 ムラサキの近衛になったら色々雑用を押しつけられそうだ。なんだかんだこいつはこの一週間見ててわかった。取り巻きがいないとほとんど何もしない。性格は貴族とかけ離れて穏やかだが、怠け者という面では貴族だなこいつは。


「なにを冗談抜かす。お前は元帥になって私を支えるのだぞ。我が帝国は元帥は宰相も担うからな」


 そっちこそなにを冗談抜かす。それならムラサキの近衛のがマシに思えるぞ。


「元帥は勘弁。仕事が多そうだしな」


「まぁ今はそれでもいい。いずれは納得するのだからな」


 強硬手段を執る気か!ミナを利用すれば俺は確実におちること知っている。くそ。絶対元帥になんかなってやるもんか。


「はーいそろそろホームルーム始めるわよー。席吐いてー」


 カナンさんが入室してくる。もうそんな時間か。俺たちは席につく。


「話は長くなるからまず出席を取りましょうかー。んー?ミルトンがいないわね。ムラサキくんしらないかしら?」


 ミルトンとはムラサキの取り巻き二人組の一人の名前だ。ミルトン・フォン・イエローズ、爵位は子爵だったか?最近じゃ席に縮こまってて何もしてなかったが、等々不登校か?
 そう考えているとミルトン本人が入室してくる。身体をだるそうにしてふらふらしている。具合でも悪いのか?


「遅い。遅刻だぞ。さっさと席付け」


 しかし席に着こうとしない。みれば目が虚ろだ。なんだか様子がおかしい。俺は一応<未来視フューチャーアイ>を使用する。こういうときに便利だ。事前に何が起こるか察知できる。
 視えた未来はいつぞやのときと同じ、人が爆発する現場。その爆発する人物はミルトンだ。だが今回は祐樹はいないのに!でもこうしてはいられない。


「カナンさん。離れて!そいつ爆発するよ」


 俺の声を聞きすぐにその場から離脱する。その後すぐミルトンは爆発した。
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