神世界と素因封印

茶坊ピエロ

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41.お人好し

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「アァァァァ・・・オレハ・・・コンナコトォォ・・・コロスコロスコロス・・・」


 祐樹は正気じゃなかった。しかし攻撃は強力だ。突撃で矛を連続で突き刺してくる祐樹。俺は<未来視フューチャーアイ>を使用して避けたが通常なら尋常じゃない速さだ。ブレードが暴走したら身体能力でも上がってるのか。矛を腕で受けとめる。
 すると祐樹の後方から黒い球体が出てきた。球体は渦巻いて俺に直進してきた。
 痛い。
 なんなんだこの強さは!こっちは忌纏いみまといで速度も防御面は強化されてるんだぞ。それを貫通するダメージってなんだ。無防備な情態で直撃してたら痛みだけじゃすまなかった。俺は手刀で斬撃を飛ばしてそれを防いでる間に離脱。ヨシュア兄さんも斬撃を飛ばしてくれたので隙ができた。


「ヤバイなこれは。どうしようヨシュア兄さん?」


「ここには皇帝はいない。カズの暴走も結構大変だったんだ。生徒全員を護りながらじゃキツイ。自分で暴走させたんだ。このまま放置したら帝都にいく。あれを害獣と見做して討伐するしかない」


「やっぱそうなるか・・・」


「キツイなら下がってもいいぞ?」


「いいや、やるよ。このまま放置なんて、せめて俺の手で葬ってやる祐樹」


 俺のことを思って言い方を変えてくれたのだろう。討伐と言うが実際の所祐樹を・・・友達だったやつを殺害することだ。だけどミナを未遂とはいえ殺そうとした。ミルトンを実際に殺した。だからここで殺されても因果応報だ。今も攻撃をなんとか受けきっているけど、中々厳しい。忌纏を破ってくる時点で恐ろしいな。
 そう割り切って決意すると横からベロニカが掴みかかってくる未来が視えた。巻き込まれる可能性もあるのに好戦的だな。俺は少しずれて避けた。この情態でベロニカまで相手はさすがにキツイぞ。そう思っていたが躱されたことに驚いただけで交戦の意思はないようだ。何か話があるのだろう。兄さんはそれを察して時間をつくってくれた。


「あのさ・・・。こんなこと虫がいいってわかってるんだけど・・・。お願いだ!祐樹ちんをたすけて!」


 驚いた。まさか敵である俺に助けを乞うなんて。しかしそれは正直現状ではキツイ。


「無理だ。状況的に全員を護りながら捕縛はキツイんだ」


「それならアタイ達があんたの仲間を守るよ!」


 今、達って言ったか?見ればルナトと交戦していたやつも全員攻撃をやめて俺の方をみている。なるほど全員の総意ってことか。


「たしかにこの人数がいたら護れるかもしれない。だけど敵であるお前等を信用しろと?しかもお前はブレード持ちだ。祐樹のように敵も味方も関係ない暴徒にならないと言える?」


「うっ・・・。アタイも知らなかったんだ。ブレードを前に掲げて施錠アンロックと言えばブレード本来の力を使えるって」


「それは誰に?」


「斑鳩という男さ。アタイ達の隊長だ」


 あいつぅぅ。そういうことなら俺にも責はあるか。けれどそれが信用に値するかはまた別の話だ。ルナトも黙ってベロニカの話を聞く。


「学生のことは悪かったよ。命を奪っといて謝って済むことじゃないけど。アタイ達も斑鳩に命令されてたんだ。仕方なかったんだ」


 命令だ、戦争だ。たしかに仕方ないといえば仕方ないのかもな。まぁそれは俺がミルトンと親しい間柄じゃないから言えることだが。


「じゃあここで祐樹を助けるのは斑鳩の命令を反故することになるんじゃないのか?その施錠だって斑鳩はこういう意図を持って伝えたんじゃないか?」


「アタイ達はみんな孤児だったから。拾ってくれた斑鳩のためにどんなことでもしたかったんだ。でもそんなアタイ達を引っ張ってきて、他国にまで行って養ってくれた祐樹ちんは斑鳩なんかより大切なんだ」


 そういって必死に頼み込んでくるベロニカ。俺としてもできることなら祐樹は殺したくはない。裏切られてもどこか友達でいたいとか思ってるんだろうな。そう考えていると俺を後押しする声が聞こえる。


「祐樹くんを助けてあげてカズくん。この人は多分嘘はついてないよ」


「コラ、ミナ!」


 ミナがカナンさんの制止を振り切り俺のもとに駆け寄って来る。


「あんた・・・」


「ミナ、本当か?それにこいつらは一応アメリカ軍の人間だぞ。その、恨んでないのか?」


「わたしの魔眼は生物には適用外。でも人を見る目はあると思ってるよ。恨んでないって言ったら嘘になるけど、憎悪を向けるのはアメリカの首相と斑鳩という男でしょ。彼女達は関係ない」


 たしかにミナは人を見る目がある。祐樹やチャーリーとは放課後には絶対会っていなかったし。それにミナの言う通りこいつらを恨むのはお門違いか。


「ミナがそういうならきっとそうなんだろう。ベロニカだったか?喜べ、祐樹は助けてやる」


「ふふっ。カズくん、何その喋り方。それにカズくんも内心は助けたかったんじゃない?」


 俺は目をそらす。少し調子に乗って口調を変えてしまった。そしてミナには俺の気持ちはお見通しのようだ。


「大丈夫だよ和澄くん。私やソルティア様もついてる。ムラサキくんだってさ。女の子のお願いを聞くのも男の甲斐性だよ」


「本当にありがとうよ」


「「「ありがとうございます」」」


 見ればベロニカだけでなく全員が頭を下げていた。祐樹はそれだけ慕われていたのだろう。あいつ人望があるな。
 話が終わったと思いルナトが俺の方に歩いて来る。


「全く。わかっているのか?一応は宣戦布告してきた敵国の軍だ。恩を売ってどうする?」


「わかってるさルナト。売るなら仇より恩を売った方がなにかありそうだって思わないか?」


「楽観的だな。しかし嫌いじゃない。俺たちはまだまだガキだ。後々なにか面倒が起きたら、そのことは大人達に任せようじゃないか」


 ルナトも賛成してくれているようだ。そして祐樹の仲間達の方に向く。


「お前たち。和澄もこういってるし、黒澤祐樹は助けてやる。しかし全員捕縛ということに変わりはない。そこはわかっているな?」


 全員が首を縦に振っている。さすがルナト。今、反論する奴らはいないだろうが釘をさすことを忘れない。
 祐樹を相手に時間稼ぎをしてくれていた兄さんは痺れを切らしてこっちにきた。


「カズ。いい加減辛いんだが。話はついたのか?」


「ごめん兄さん。話はついたよ。祐樹を助けるから協力して!」


「はぁ。まぁお前のことだからなんかそうなる気はしてたけどさ」


「言いたいことは私もわかるぞヨシュア。お人好しにもほどがある」


 俺はお人好しでも無いと思うけどな。普段一体どういった風に見られているんだ俺は!時間稼ぎをしていないので祐樹が遠距離攻撃を放ってくる。先ほど喰らった闇属性の渦巻いてくる攻撃だ。直撃したら痛いので避ける。


「殿下も大概ですけどね。ってことはブレスレット型のブレードの隔離空間を作るのか」


「ゴメンね兄さん。頼りにしてる」


「おっしゃ覚悟決めたぞ。任された!そっちも頼むぜカズ、殿下」


 そうして一歩下がる兄さん。俺とルナトは前に出る。


「カナンさん、万が一があったらみんなを頼みます」


「まぁもう緊急時だから先生はいいけどね。お姉さんに任せて頂戴!」


 まだ先生呼びにこだわっていたのか。なんだかんだカナンさんも余裕あるよな。


「さてルナト。作戦はどうする?」


「シンプルにそのままブレードを奪おう。今回はお前の時とは違って素手で誰でも奪うことができる」


「了解だ。問題は取りにくいブレスレット型ってことだな」


 ブレスレット型だから外すのに手間取る可能性がある。あの至近距離で闇属性の渦を喰らうのはちょっと簡便だな。俺はルナト右手を肩にやり、左の手の平を自分の背中に向けた。ルナトは俺の意図を察して水を背中に作り出す。そして氷属性を操り凍らせて背中に氷を纏った。長い時間この情態でいると凍傷を起こしそうだ。


「冷たいな。しかし良い護りになるのではないか」


「結構くるな。短期決戦で済ませたい。いくぞルナト第二ラウンド開始だ」


「そうだな。騒ぎを聞きつけて軍がそろそろ来る。それまでに決着を付けないとな」


 長引けば兵隊達がくる。帝国兵がここに駆け付けたら祐樹は確実に殺される。俺の時とは違って祐樹はアメリカの人間で、しかも侵略行為をしてきた言うなれば敵だ。救う義理も義務もない。
 俺とルナトはお互い頷くと、俺は跳躍しルナトは駆け出す。俺は空中で停止し右足を向けてそのまま祐樹へ突撃し蹴り飛ばす。吹き飛んでいってる祐樹にそのまま拳を叩きつけて打ち落とすルナト。ルナトは地面に埋まったその隙にブレスレットを取ろうとする。しかし次にはルナトごと瓦礫を吹き飛ばし祐樹は立ち上がった。


「アァァァァァ・・・ガァアアアアアアア・・・・」


「最初から上手くいかないか。平気かルナト?」


「ぺっ。口の中砂だらけになったけどな」


 目立った外傷はないみたいだ。祐樹は矛を投げつけてくる。俺は掴むがその瞬間爆発した。祐樹にはこの魔眼もあったな。しかし叫び方といい、闘い方といい、見た目は人間なのに獣だな。闇属性の渦と同時にやられたら厳しいのに、そういった絡め手はしてこない。だから次はしてこないと油断できるわけではないが。


「油断するな和澄。私たちはあと持って数十分程度しか忌纏を維持できないんだ。突然切れたら爆風でバラバラ死体の完成になるぞ」


「悪いな、魔眼のことをすっかり忘れてた。もう大丈夫だ。さぁゴングは鳴ってないぞ。第二ラウンドと続きといこうか」


「本当にわかってるんだか」


 ルナトは俺の返答に苦笑いし、次には顔を引き締める。ブレードを外したら終わりじゃない。そこからエネルギー供給が停止するまでの時間稼ぎもしなければならないんだ。俺とルナトはブレードを外すため再び祐樹と対峙する。
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