神世界と素因封印

茶坊ピエロ

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42.死闘の末

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 祐樹は矛を大量に飛ばし爆弾の嵐で詰めれずにいた。空中から攻める手もあったが、<未来視フューチャーアイ>を使っても爆発に巻き込まれる未来しかなかった。爆風圏外の空中に留まって一度作戦を練り直す。


「さっきのはイージーモードか!あの時点で奪取できなかった私は自分を恥じたい」


「エネルギー切れも期待できない。正直な話ただ殺すだけでも難しい」


 爆発弾幕を掻い潜って接近するには無傷は無理だ。忌纏があるといってもあれ全弾を喰らえばただで済むかどうか。


「でも諦めないんだろう?顔が語ってるぞ」


 ルナトに言われて俺は顔をペタペタ触る。顔が語るってなんだ。


「まぁこの程度で諦めるなんてありえないだろ。ミナだって頼んできたんだ。それにそうじゃなくても意思のない祐樹くらい捕縛できなくて色んな脅威からミナを守るなんて到底言えないだろ?」


 そう言ったが手立てが思いつかない。空中に爆風が届かないと判断した祐樹は闇属性の渦を飛ばしてくる。あの情態でも多少の判断力はあるのか。ヘイトが先ほどの攻撃から俺たちにしか向いてないしあるか。俺はそれを横に移動して避ける。
 もう時間もない、選択肢はひとつしかないんだ。覚悟を決めるか。


「ルナト!距離を置いても闇属性の渦、近づいても爆発。ならば無理してでも爆発に突っ込むしかない。最悪忌纏が切れても氷を纏って突っ込めばぎりぎりなんとかなるんじゃないか?」


「正気か?絨毯爆撃に突っ込むような真似を」


「俺だって嫌だけど他に手はないだろ。なにか思いつくか?時間も限られてる。今他の手立てが思いつかないなら、ルナト覚悟決めてくれ」


「はぁ。わかった。せめて厚めに氷を作ってくれよ」


 一度地上に降りたって忌纏を解く。先ほど背中と肩に纏った砕け散った氷の上から、ルナトは自身と俺の身体を水で覆い俺がそれを凍らせた。さっきの倍の厚さだ。追加で顔面と関節以外ほぼ凍らせた、さながら氷の鎧ってところか。この重さじゃ電磁浮遊での移動速度はかなり落ちるだろうな。


「クソ冷たいし重いけど準備完了!」


「これは超速移動は難しいな。氷って結構重たいのだな」


「我慢だ我慢。時間稼ぎの時はさすがにこれは外してくれよ」


「わかっているさ。いくぞ和澄」


 俺たちは祐樹に接近する。祐樹は周りに10本の矛を展開、連続で投げてくる。
 矛自体に直撃したら終わりだ。模倣品でもブレードだ。氷くらい簡単に貫通する。
 貫通しても忌纏で身体に刺さることはないだろうが、内側からの爆発で氷の鎧は簡単に割れるだろう。
 まぁ<未来視>があるから早々直撃なんてしないけどね。気づけばルナトの姿が捉えきれなくなっていた。氷の鎧は結構重たいのにとんでもないな。


「爆風利用すれば、超速移動可能だ和澄」


「なるほど、そういうことか!」


 ルナトは爆風を推進力にしているのだろう。氷と忌纏で身体はコーティングされてるんだ。爆風を利用しないでどうする。まだまだ戦闘中の臨機応変が利かないな。
 俺もルナトに倣い、爆風を利用して祐樹に接近する。


「アァァアァァァ・・・・」


 俺は目の前まで接近して足を払う。そのまま倒れ込んだ祐樹に腕十字固めをする。


「暴れんじゃねぇ!」


 俺は自身に全力で電磁重力エレクトログラビティを使う。本来生物は電磁力で浮かせたりすることできない。けれど俺はブレード起動時体内に電力が内包してるらしく電磁力で吸い寄せることが可能だ。
 俺は今大型トラックなんかよりもずっと重たいだろう。氷はとっくに砕けて忌纏だけで耐えている情態だ。祐樹は暴れているが、固めている俺を吹き飛ばせずにいる。
 この隙を見逃すルナトじゃない。祐樹からブレスレットを奪い取って即座に離脱した。


「よくやった和澄。ヨシュアあとは頼む」


「わかりました殿下。いいぞ和澄」


 二人から称賛の声が聞こえる。祐樹は暴れるのをやめて矛を俺の上に展開。
 やっべぇ矛先が俺にしか向いてない。そして俺の不幸は続く。電磁重力を解いた瞬間に忌纏も解けてしまった。
 まずいまずいまずい。このタイミングで解けるとか運がない。忌纏が解けた倦怠感で上手く電磁浮遊もできない。<未来視>を使ってもこの距離じゃ10本の矛すべてを避けきり、尚且つ爆風に巻き込まれないなんて無理だ。ルナトも救出できる距離にいない。これは詰みか。
 すると俺の視界は高速移動する。脇腹に痛みが・・・吹き飛ばされた?一体誰に?
 その後に爆発が起きる。爆発が起きた方向を見る。爆風が晴れるガタイのいい男が血だらけで棒に支えられて立っていた。あいつはたしか最初に俺が吹き飛ばした、イヴァンという男だったか。


「この距離で爆撃を直撃はキツかった。済まないな和澄とやら、あの状況じゃ吹き飛ばすくらいしか思いつかなんだ」


「どうして俺を助けた?お前は気絶していて先ほどの話は聞いてなかったはずだ」


 まぁベロニカ達が攻めるはずの相手を守るようにしてるから状況で察することはできるだろうが。というかさすがに今の直撃で、身体がバラバラにならなかっただけでもすごいな。おそらく魔眼か。油断してる隙に無力化できてなかったら、俺たちはかなり苦戦していただろう。イヴァンが離脱して俺の所に来て手を差し出す。


「状況を見れば明白だ。祐樹はブレードの暴走でこんなことになってしまったのだろう?それがしは御身等に加勢したまでだ」


「俺はもうガス欠ぎりぎりだ。それは助かる」


 俺は差し出された手を掴んで立ち上がった。イヴァンは血だらけだが力強く引っ張った。そこまで重傷でもないのか。ルナトも合流する。


「和澄、先ほどはヒヤッとしたぞ。お前はイヴァンだったか?助力はありがたいが、祐樹を無力化したらお前達は捕縛することになってる。お前は構わないのか?」


「其は構わない。家族を守りたいだけだ。それに和澄という強さを知った。再度手合わせを願いたいが命がけは御免被る」


 なんか武将みたいな男だな。それとも戦闘狂バトルジャンキーか?ともあれイヴァンもベロニカと気持ちは同じって事か。どのみちここで敵対しても悪手だ。頼らせて貰おう。


「じゃあよろしくなイヴァン。もう時間稼ぎだけだが、何が起こるかわからない。俺は先ほどより動きが鈍い。ルナト、イヴァン、お前達が時間稼ぎの要だ。頼むぜ」


「是非もない」


「やっぱり忌纏が解けていたか。あとで説教だ」


 ルナトはまだ忌纏が解けていないから超速で動いて手刀で、斬撃を飛ばしている。イヴァンも動きは遅いが爆発を通り抜けて攻撃している。祐樹は気を向けねばならない。棒だと思ったがあれはブレードみたいだな。三矛と鍔競り合いできている。俺は遠距離で足下を氷漬けにするくらいしかできないがわりと効果的だ。近接戦のできるイヴァンが加わっているからできる戦法だけどな。


「アァァァァァ・・・・ガァァァァァァァ」


 祐樹は闇属性の渦を作り出していた球体を20個ほど作り出した。俺は<未来視>を使う。あれはブラックホールか!?吸われる未来が視えた。


「二人ともあれはブラックホールだ。離脱しろぉぉ!」


 その声を聞き二人は離脱する。イヴァンは足は遅かったがなんとかブラックホールの吸収圏外に来たようだ。近くにあった校舎の瓦礫はほとんど吸われた。そして祐樹は倒れ込んだ。最後の悪あがきだったのだろう。ルナトも膝をつく。忌纏も解けてどうやら限界のようだ。今ルナトに確認させるのは酷だろう。


「ミナ。<解析アナライズ>でアクセサリーからエネルギーが出ているかどうか確認してくれ」


「わかったカズくん」


 ミナは兄さんの元に走って行く。兄さんも限界なのか座り込んでアクセサリーをミナに見せていた。


「大丈夫。エネルギー供給止まってるよー」


 どうやら終わったようだ。俺たちは祐樹を止めることができた。


「はぁー、やった終わりか。疲れたな」


「全くだ。お前も死にかけるしほんと心臓に悪い一日だったな」


 俺とルナトは笑い合う。ベロニカに頼まれたことだが、俺のワガママでもあった祐樹の捕縛を了承してくれてありがたい。イヴァンも俺たちの横にきて座り込む。


「其の家族である祐樹を助けてくれて感謝する。さぁ手錠なりなんなりかけてくれ」


「生憎手錠は持ち合わせていないんだ。何せ私はこの国の皇太子でそいつは一般人だからな。和澄を助けてくれて感謝する」


 イヴァンは俺たちがまだ捕縛しないとわかり祐樹の方に歩いてく。ベロニカも祐樹に抱きついて泣いていた。ミナとソルティアが俺たちの元に歩いてくる。そしてミナにビンタされた。俺は驚いてミナの顔をみる。涙目だった。


「バカ!死にかけるなんて何考えてるの!祐樹くんが助けられてもカズくんが死んじゃ意味ないんだからぁぁ」


 俺に抱きついて泣き始めるミナ。昨日お義父さんの悲報を聞いたんだ。少し考えなしだったな。俺はミナの頭を撫でてなだめた。ルナトとソルティアがずっとこっちをニヤニヤ見ていたが気にしない。気にしないったら気にしないのだ。
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