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雷槍を食らったレインは腕を抑えながら蹲っていた。
地面に手をつき、その手元にはドロドロに溶けた剣がある。
「うっぐ!いってぇ!」
「ほぅ、我の魔法を受け止めるか。実に面白い」
「なんなんやこいつ!おい、シリィ!」
レインの腕は鮮やかな雷の模様が浮き出ている。
落雷を受けたときにできる火傷だった。
「わからない。私の全知の片眼鏡でも解析できないの!」
「ほぅ、解析の神器か。しかし種のまま。でも懐かしいな。我もこの雷鳴の転輪が雷鳴の首巻から進化するまで時間がかかったな。してそこの少女。その神器の種が我に作用しないのは、我がマキアが貴様のデウスより上の存在だからだ」
「どういうこと?」
「一々説明してやるのも良いが、我にも時間がないのでな。冥土で知っている者にでも聞け!ケラウノス!」
「させないよ!」
アハトは自身に雷耐性の魔法を全力でかけて、ケラウノスをはじいた。
おかげでレインほどの火傷は負わなかった者の、やはり剣が溶けてしまった。
「くっ!耐性を付けたのに平気で貫通してくるのか。実に厄介だね」
「ほぅ、面白い。今回の降臨は実に骨のある相手と見た。それではケラウノスを二つ放つとしよう」
「へぇ、精霊神ってのは二つの魔法を同時に放てるんだ」
「何言ってるのよ、まずいわよアハト!」
「シリィを連れて離れろリィナ」
「駄目よアハト!あなたが死んだら帝国は誰が変えるの?」
「勘違いしないでよ。負けたわけじゃない。こっちには帝国最強の聖騎士と魔女がいるんだから」
アハト、そしてレインも痛みに我慢こそすれ諦める様子はない。
ゼウスからケラノウスが放たれると同時に、アハトの前にはルルシアが、レインの前にはカインが入ってくる。
「超級防御魔法:ライトニングアイテル!」
「聖なる力よ!我が同志を守護し、薙ぎ払え!」
ルルシアが魔法でケラウノスを霧散させ、カインが聖剣で薙ぎ払った。
そしてそのままディーラがレインをアハトの下まで抱え上げて、ロアーナが二人の治療に入る。
「ほぅ、まさか完全打ち消されたり、切り裂かれたりするとは思わなんだ。今回は本当に大当たりだ。今までこの槍を完璧に乗り切った者は人生でも見たことがない」
「とんでもないわよ。アハトとレインが倒れてたから全力で魔力を展開したけど、それでも衝撃は伝わったわ」
「へぇ、お前はへなちょこだもんな!俺はこの程度なんともねぇぜ!」
ルルシアは悪態を吐いてカインは強がりを見せるものの、現状はあまりよろしくなかった。
たかが一つの魔法で全力を出さなきゃいけず、ゼウスはまだピンピンしている。
このままいけばガス欠になるのは自分達だとわかっているためだった。
「遅いでロア。ひやひやしたわ」
「ほんとだよ。ディラもあの槍が撃つ前に防げたでしょ」
「レインもアハトも無駄口叩かないで。治療したらまた参戦だからね。リィナ、悪いんだけどレインに剣を貸してあげて」
「え、あ、うん。わかった」
「ほんまか。二人じゃ敗色は変わらへんしな。ありがとうな」
「アハトは私の剣を貸しますわね。ちゃんと返さないと許さないわ」
「あんな一撃放つ奴ともう一度戦わせようなんてディラ、君までカインの性格が移ったかい?」
「今はそんな場合じゃありませんわ。さっさと治療されたなら行く!」
二人ともすぐに治療を受けて立ち上がり戦いに参戦を決める。
アハトとレインはルルシアの横に立ち上がった。
「ほぅ、さっきの二人も立ち上がるか。我は嬉しいぞ!」
「みんな聞いて。あいつの身体のレーゼという冒険者の筋肉は悲鳴をあげてるわ!あいつの強さに身体が追い付いてないの!」
「へぇ、じゃあ耐久すればなんとかなるってことじゃんか」
「馬鹿言わないでよカイン。次も確実に受け止められるかわからない威力だったのよ」
「そんなん気合だ!どのみち俺達しか受け止められねぇんだから覚悟決めろルル」
反論をするも顔は無理とは言っておらず、二人とも口角を挙げて何度でも受け止めてやるという姿勢だった。
二人のその態度に、レインは呆れながらアハトは頼もしいなと思いながら笑みを零す。
「二人ともドアホやな。せやけど限界があるってゆーんは朗報や」
「そうだね。防御はルルとカインに任せて、俺達はアイツを倒す。これでいいかい?」
「自分、あの攻撃受けといてよくそんなこと言えるなぁ。あいつ自身が雷を纏うような防御魔法を使ったらどうするんや」
「そんときはあいつの身体と、俺かレインのどっちかが黒焦げになるだけさ」
「はっ、自爆を勘定に入れんなや!」
「最低限雷耐性の付与は全力でかけた。俺達は突っ込むから援護よろしくね二人とも!」
「えぇ」
「おう!」
本来であれば第二皇子であり皇族のアハトを矢面に立たせるのは臣下としては正しくはない。
しかしこの場にいる全員はそうは思わなかった。
アハトは実力者で自分達の横に並ぶ立派な皇帝であると。
「ほぅ、確かに我の肉体の依り代には限界がある。そしてこいつらのこの自信。我をして後ずさりするほどの気合の入り方だな!」
「俺がお前を討伐するよ。刺し違えてでもね」
「悪いなアハト。それをするんわワイや」
「我は闘いを好む。そしてこの身体は限界まで使う。貴様達全員を消すことで、我を呼んだ者の願いを叶えるとしよう」
過去、精霊神を呼んだ者が倒せたケースはなく、依り代の身体の限界まで暴れた記録しかなかった。
そのため、精霊神というものを見た人間が生き残ったことはなかった。
故に生き残るだけで歴史的快挙の闘いだ。
精霊神とルルシア達の最終ラウンドが開始された。
地面に手をつき、その手元にはドロドロに溶けた剣がある。
「うっぐ!いってぇ!」
「ほぅ、我の魔法を受け止めるか。実に面白い」
「なんなんやこいつ!おい、シリィ!」
レインの腕は鮮やかな雷の模様が浮き出ている。
落雷を受けたときにできる火傷だった。
「わからない。私の全知の片眼鏡でも解析できないの!」
「ほぅ、解析の神器か。しかし種のまま。でも懐かしいな。我もこの雷鳴の転輪が雷鳴の首巻から進化するまで時間がかかったな。してそこの少女。その神器の種が我に作用しないのは、我がマキアが貴様のデウスより上の存在だからだ」
「どういうこと?」
「一々説明してやるのも良いが、我にも時間がないのでな。冥土で知っている者にでも聞け!ケラウノス!」
「させないよ!」
アハトは自身に雷耐性の魔法を全力でかけて、ケラウノスをはじいた。
おかげでレインほどの火傷は負わなかった者の、やはり剣が溶けてしまった。
「くっ!耐性を付けたのに平気で貫通してくるのか。実に厄介だね」
「ほぅ、面白い。今回の降臨は実に骨のある相手と見た。それではケラウノスを二つ放つとしよう」
「へぇ、精霊神ってのは二つの魔法を同時に放てるんだ」
「何言ってるのよ、まずいわよアハト!」
「シリィを連れて離れろリィナ」
「駄目よアハト!あなたが死んだら帝国は誰が変えるの?」
「勘違いしないでよ。負けたわけじゃない。こっちには帝国最強の聖騎士と魔女がいるんだから」
アハト、そしてレインも痛みに我慢こそすれ諦める様子はない。
ゼウスからケラノウスが放たれると同時に、アハトの前にはルルシアが、レインの前にはカインが入ってくる。
「超級防御魔法:ライトニングアイテル!」
「聖なる力よ!我が同志を守護し、薙ぎ払え!」
ルルシアが魔法でケラウノスを霧散させ、カインが聖剣で薙ぎ払った。
そしてそのままディーラがレインをアハトの下まで抱え上げて、ロアーナが二人の治療に入る。
「ほぅ、まさか完全打ち消されたり、切り裂かれたりするとは思わなんだ。今回は本当に大当たりだ。今までこの槍を完璧に乗り切った者は人生でも見たことがない」
「とんでもないわよ。アハトとレインが倒れてたから全力で魔力を展開したけど、それでも衝撃は伝わったわ」
「へぇ、お前はへなちょこだもんな!俺はこの程度なんともねぇぜ!」
ルルシアは悪態を吐いてカインは強がりを見せるものの、現状はあまりよろしくなかった。
たかが一つの魔法で全力を出さなきゃいけず、ゼウスはまだピンピンしている。
このままいけばガス欠になるのは自分達だとわかっているためだった。
「遅いでロア。ひやひやしたわ」
「ほんとだよ。ディラもあの槍が撃つ前に防げたでしょ」
「レインもアハトも無駄口叩かないで。治療したらまた参戦だからね。リィナ、悪いんだけどレインに剣を貸してあげて」
「え、あ、うん。わかった」
「ほんまか。二人じゃ敗色は変わらへんしな。ありがとうな」
「アハトは私の剣を貸しますわね。ちゃんと返さないと許さないわ」
「あんな一撃放つ奴ともう一度戦わせようなんてディラ、君までカインの性格が移ったかい?」
「今はそんな場合じゃありませんわ。さっさと治療されたなら行く!」
二人ともすぐに治療を受けて立ち上がり戦いに参戦を決める。
アハトとレインはルルシアの横に立ち上がった。
「ほぅ、さっきの二人も立ち上がるか。我は嬉しいぞ!」
「みんな聞いて。あいつの身体のレーゼという冒険者の筋肉は悲鳴をあげてるわ!あいつの強さに身体が追い付いてないの!」
「へぇ、じゃあ耐久すればなんとかなるってことじゃんか」
「馬鹿言わないでよカイン。次も確実に受け止められるかわからない威力だったのよ」
「そんなん気合だ!どのみち俺達しか受け止められねぇんだから覚悟決めろルル」
反論をするも顔は無理とは言っておらず、二人とも口角を挙げて何度でも受け止めてやるという姿勢だった。
二人のその態度に、レインは呆れながらアハトは頼もしいなと思いながら笑みを零す。
「二人ともドアホやな。せやけど限界があるってゆーんは朗報や」
「そうだね。防御はルルとカインに任せて、俺達はアイツを倒す。これでいいかい?」
「自分、あの攻撃受けといてよくそんなこと言えるなぁ。あいつ自身が雷を纏うような防御魔法を使ったらどうするんや」
「そんときはあいつの身体と、俺かレインのどっちかが黒焦げになるだけさ」
「はっ、自爆を勘定に入れんなや!」
「最低限雷耐性の付与は全力でかけた。俺達は突っ込むから援護よろしくね二人とも!」
「えぇ」
「おう!」
本来であれば第二皇子であり皇族のアハトを矢面に立たせるのは臣下としては正しくはない。
しかしこの場にいる全員はそうは思わなかった。
アハトは実力者で自分達の横に並ぶ立派な皇帝であると。
「ほぅ、確かに我の肉体の依り代には限界がある。そしてこいつらのこの自信。我をして後ずさりするほどの気合の入り方だな!」
「俺がお前を討伐するよ。刺し違えてでもね」
「悪いなアハト。それをするんわワイや」
「我は闘いを好む。そしてこの身体は限界まで使う。貴様達全員を消すことで、我を呼んだ者の願いを叶えるとしよう」
過去、精霊神を呼んだ者が倒せたケースはなく、依り代の身体の限界まで暴れた記録しかなかった。
そのため、精霊神というものを見た人間が生き残ったことはなかった。
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精霊神とルルシア達の最終ラウンドが開始された。
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