皇統を繋ぐ者 ~ 手白香皇女伝~

波月玲音

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ヲホド王来襲

回顧Ⅵ主との約束前(杖刀人磐井)

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「無念だが、もう無理だ。余はもうすぐ黄泉の国に行く。」
大王となったかつての主、若雀命に呼ばれたのは、三月ほど前の事だ。
若雀命が大王となった直後に磐井は手白香皇女の杖刀人となったため、目通りする機会は月に一度程度。しかし先月は政の行われる宮で御簾越しに話したが、変わった様子は見受けられなかった。
「先日目通りした時は健やかで在らせられたのに、如何されました?」
驚いて問う磐井に、青白い顔をした大王は床から起き上がると自嘲の笑みを向けた。
「あの時も既に不調であった。と言うより、不調でなかったことなど無い。」

子供のころから弱かった若雀命。若干十歳で父大王の後を継いだ時には行く末を大層危ぶまれた彼は、驚くほどの賢明さで豪族たちを手懐けていった。
杖刀人首の大伴金村を大連として取り立て、自分の意のままに動く兵を手にすると共に、物部氏の若い長で氏内での勢力が不安定であった物部麁鹿火を外征の大連として取り立てることで恩を売り。
そうして得た武力を、時には使い、時には隠し、、、。
まるで誰に何を行えば意のままに動くのか、初めから分かっているかのような采配を、彼は幼い容貌と病弱な外見に上手く隠し、一見大人たちに良いように扱われているように見せかけて行っていった。
気付けば大和はあっという間に若雀命に掌握されていた。
成人してからも、正否をはっきりとさせる果断な性質を、機微を見定める聡い目と穏やかな語り口で上手く隠し、危なげなく政を行っていたのに、、、。
「出来る限り生き延びようとしたが、生来の虚弱の質は治らなかったようだ。余はこの冬を越すことは出来まい。」
今年一八になったばかり青年から発せられるとは思えない、諦念の籠もる口調で、かつての主は淡々と磐井に告げた。
「そのような事は・・・」
「意味の無い慰めは良い。大事な話をする。人払いはしてある故、お前も嘘は申すな。」
磐井の気遣いの言葉をはねのけ、若雀命は簡潔に言葉を継いだ。
「姉上をお前に頼みたい。」
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