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思惑
金村の思惑Ⅳ
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「そう、ヲホドは齢五十八、すでに成人した孫がいるとか。そのような年であれば、残された時間は幾らも無いでしょう。大王になりたいヲホドは認めないでしょうが、子も成せない、そもそも子を成す行為が出来ない可能性もあります。それが何を意味するか分かりますか?」
「それは……」
「未通女の手白香様には流石にお考えの及ばない事でしょうか。つまり、上手く立ち回れば、手白香様は清らかな御身のまま大后の位を手に入れて、幾らも待たず、自由の身となれるのです。」
もちろんこの金村に全てお任せ下さればよいのです。
訴える様に説明する金村の様子が今までと違いすぎて、不安を掻き立てる。
「そのようなこと……」
五十八ともなれば、確かにいつ儚くなってもおかしくはない。豊かに暮らし、下人より若々しい豪族たちも、五十を過ぎれば引退するのが大和の常識であった。
しかし、命の長さはそれぞれである。ヲホドは長生きの質かも知れないのに。
真意を掴み切れない手白香の戸惑う顔を見て、金村は熱心に言い募った。
「この金村の申すことは信をおけませぬか?……それでは、今こそ包み隠さず、全て申し上げます……私の真の目的は、手白香様、貴女様です。」
「私?」
ヲホドの年の話をしていたのに、、、。首を傾げる手白香に、金村は言葉を続ける。
「そう、貴女様です。手白香様こそ、この国で最も大王に相応しい御方。しかし、独り身の皇女様の即位は難しい。ならば、一旦大后となって、大王と並び立つ御位を得て頂く。でも、夫たる大王が健在では、貴女様は大王になれない。そこで、ヲホドです。薄い血ながら大王家と繋がりがあり、とは言え政の中心たる大和の豪族とは血縁が無く、しかも老人……この者の話を聞いた時、私は歓喜に震えました。この者こそ、私の希望を叶える駒だと。手白香様が大后の御位を得たならばすぐに私がヲホドを排除致します。そうなれば、貴女様を大王とすることにとやかく言う者はおりますまい。」
「……何という大それた計画を。そもそも私は政の経験は有りません。大王など成れるはずも無い。」
話が漸く飲み込めた手白香が呆れて言い捨てると……金村はふと言葉を止めた。そのままじっと手白香を見つめる。
その視線の熱っぽさに、違和感が募った。この男は、本当に手白香の知る、あの冷静な金村なのか?
「大連、少し落ち着い……」
「ああ、手白香様は何もご心配なさらずとも良いのです。全ての事はこの金村が行います。そして、大王になった暁には、その補佐も、全て私が行いましょう。貴女様はただ、若雀命様のお側にいらしたように、私のそばにいて下さればよいのです。」
「何を言ってるのです。そのような事、受け入れられません。」
少し落ち着かせるために、一旦話を止めよう。そう思った手白香は、敢えて冷たく突き放した。
「大体、私は大后にも大王も興味は有りません。叶うならば大和の片隅で、夫を持ち子を得てひっそりと暮らしていきたいのです。ですから、この話は聞かなかったことに……」
言いながら立ち上がろうとすると。
いきなり向かいに座った金村が手を取った。
「何をするのです?」
振り払おうにも、非力な皇女が武人の力に敵う訳も無い。せめて、と咎める目を向けると、手を握ったまま金村が笑んだ。
「そちらもご心配なく。私が妻問いましょう。」
「今、何と?」
「ですから、大王となられた暁には、勿論すぐにとは参りませんが、私が貴女様に妻問います。皇子も授けましょう。」
手白香は絶句した。
「それは……」
「未通女の手白香様には流石にお考えの及ばない事でしょうか。つまり、上手く立ち回れば、手白香様は清らかな御身のまま大后の位を手に入れて、幾らも待たず、自由の身となれるのです。」
もちろんこの金村に全てお任せ下さればよいのです。
訴える様に説明する金村の様子が今までと違いすぎて、不安を掻き立てる。
「そのようなこと……」
五十八ともなれば、確かにいつ儚くなってもおかしくはない。豊かに暮らし、下人より若々しい豪族たちも、五十を過ぎれば引退するのが大和の常識であった。
しかし、命の長さはそれぞれである。ヲホドは長生きの質かも知れないのに。
真意を掴み切れない手白香の戸惑う顔を見て、金村は熱心に言い募った。
「この金村の申すことは信をおけませぬか?……それでは、今こそ包み隠さず、全て申し上げます……私の真の目的は、手白香様、貴女様です。」
「私?」
ヲホドの年の話をしていたのに、、、。首を傾げる手白香に、金村は言葉を続ける。
「そう、貴女様です。手白香様こそ、この国で最も大王に相応しい御方。しかし、独り身の皇女様の即位は難しい。ならば、一旦大后となって、大王と並び立つ御位を得て頂く。でも、夫たる大王が健在では、貴女様は大王になれない。そこで、ヲホドです。薄い血ながら大王家と繋がりがあり、とは言え政の中心たる大和の豪族とは血縁が無く、しかも老人……この者の話を聞いた時、私は歓喜に震えました。この者こそ、私の希望を叶える駒だと。手白香様が大后の御位を得たならばすぐに私がヲホドを排除致します。そうなれば、貴女様を大王とすることにとやかく言う者はおりますまい。」
「……何という大それた計画を。そもそも私は政の経験は有りません。大王など成れるはずも無い。」
話が漸く飲み込めた手白香が呆れて言い捨てると……金村はふと言葉を止めた。そのままじっと手白香を見つめる。
その視線の熱っぽさに、違和感が募った。この男は、本当に手白香の知る、あの冷静な金村なのか?
「大連、少し落ち着い……」
「ああ、手白香様は何もご心配なさらずとも良いのです。全ての事はこの金村が行います。そして、大王になった暁には、その補佐も、全て私が行いましょう。貴女様はただ、若雀命様のお側にいらしたように、私のそばにいて下さればよいのです。」
「何を言ってるのです。そのような事、受け入れられません。」
少し落ち着かせるために、一旦話を止めよう。そう思った手白香は、敢えて冷たく突き放した。
「大体、私は大后にも大王も興味は有りません。叶うならば大和の片隅で、夫を持ち子を得てひっそりと暮らしていきたいのです。ですから、この話は聞かなかったことに……」
言いながら立ち上がろうとすると。
いきなり向かいに座った金村が手を取った。
「何をするのです?」
振り払おうにも、非力な皇女が武人の力に敵う訳も無い。せめて、と咎める目を向けると、手を握ったまま金村が笑んだ。
「そちらもご心配なく。私が妻問いましょう。」
「今、何と?」
「ですから、大王となられた暁には、勿論すぐにとは参りませんが、私が貴女様に妻問います。皇子も授けましょう。」
手白香は絶句した。
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