帝国最強(最凶)の(ヤンデレ)魔導師は私の父さまです

波月玲音

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バーベンベルク城にて

兄上がピンチです!

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オスカー兄上が縛られてる!その事実に頭が真っ白になり、思わず手近なものにしがみつく。爪を立てたみたい。
「ってぇ。」
おじさんは小声を出したけど、私を抱えなおしてくれた。そして、目立たないように部屋の端へ行こうとする。
それを止めたのはさっきの失礼なお兄さんだった。
「待て。」

一旦兄上の方に行っていたはずなのに、こちらに近づいてくる。おじさんが私を抱える腕が、緊張して強張ったのが分かった。見つかったのかな?不安が膨らむ。
「お前は魔導師団長あいつの副官だと言っていたな。魔導師見習いのガキにはもう会ってるんだろう?どこにいるか、知ってるんじゃないのか?」
フィン兄さまはまだ捕まってないんだ!良かった。
少しだけホッとすると。
「団長の次男殿には少し眠っていただいてるんですよ。」
あっさりとおじさんが答えた。
バーベンベルクここの結界は団長が居なくてもしっかり機能してましてね。魔力の質から考えるに次男殿が維持しているらしい。そのままではあなた方を帝都からお連れすることは出来そうになかったので、先ほどお休みいただきました。いま、団長の使い魔に任せてます。恐らく目くらましが掛けられてるでしょうから、騎士の皆さまでは探せないでしょう。」
フッと笑ったみたい。頭の上で息が漏れる音がしたもの。
「お疲れも溜まっていたようなので、このまま明け方くらいまでお休みいただけれはよろしいかと。宰相閣下のご指示は、ご長男殿に皇城に来ていただく、でした。このままで問題ないはずです。」

え、兄上は皇城に行っちゃうの?不安でまた心臓がイヤな音を立てる。そこへ、追い打ちをかけるように怒りの声がした。
「何を言うか、この役立たず!陛下はバーベンベルクの反逆をお疑いなのだ。このまま一族を連行するに決まっているだろう!」

っ、、、。言葉も出ない。私たちどうなってしまうの、、、。不安が沸き上がるとともに、手首の腕輪をしている辺りが熱くなってきた。何だろう、溜まってる魔力が身体を巡りたくてうずうずしている感じ。でも、前の時みたいにふわふわ気持ちいいわけじゃないの。フィン兄さま、私どうしたらいいの?

「・・・」
しかも、黒いマントの魔導師さんたちがみんなちらちらこっちを見ている気がする。見つかったの?もうダメなの?手首が熱いよ、フィン兄さま、、、。

どうしていいか分からず、泣き叫びたくなった、その時。今まで一言も口をきかなかったオスカー兄上の声が聞こえた。
「ライオネル殿、と言ったか?少し、いいだろうか?」

兄上は、いくつもの白刃を突き付けられ、魔力封印の術式が組み込まれた縄で自由を奪われているのに、落ち着いていた。
その声に、姿に少しホッとする。
「私が夕刻、そちらの魔導師、エルンスト殿から耳打ちされたのは、私だけに話があるので会いたいという申し出だった。」
「ゆえに、真夜中を過ぎたこの時刻の執務室を指定した。また、弟にも家臣にもこの事は伝えなかった。私の信頼を、エルンスト殿、あなたは裏切るのだろうか?」
ゆっくりと私を抱くおじさんの方を向く兄上。
おじさんも落ち着いた声で答えた。
「いえ、滅相もございません。私が宰相閣下より受けた命は、ご不安な陛下に魔導師団長捜索の状況を説明するため、辺境伯代行殿を皇城にお連れすること。こういう状況なので、団長の副官としてバーベンベルクとの間に個人的に面識があり、かつ転移のできる私が、ひそかに代行殿を転移でお連れするように、とのことでした。」
「近衛騎士団の転移については、こちらに着いてから、使い魔の知らせで知りました。使い魔の見た書類には陛下のサインがあったため、指示には従いましたが、、、。書類上は代行をお連れするにあたり、バーベンベルクの家臣の抵抗があった時のためと書かれているのみで。」
「それ故、代行殿の弟君につきましても、お休みいただいてはおりますが、一切の危害は加えておりません。」

兄上はうなずいた。
「確かに、わが父の行いにより、帝国の魔術結界が消えてしまっては、皇城の皆さまのご不安もご不満も募ろう。とは言え、わが城は皇城から遠く、すぐ駆け付けることも出来ない。また、わが家臣は若年の私を心配して皇城に伺候することを渋るであろう。ゆえに、皆の寝静まった今、単身皇城に伺い、ご説明申し上げてすぐに戻ろうと思ったのだが・・・?」
今度は失礼なお兄さん、、、ライオネル殿?の方を向く。
「あなたのお話では、陛下は既にバーベンベルク我々を反逆の徒とお考えと言うことか?一族全てを反逆罪で裁かれるおつもりか?」
声は穏やかなのに、ものすごい威圧感。ブルってしてしまう。

「確かにバーベンベルク伯直系を連行することは、現状容易かろう。だが、我々一族だけがバーベンベルクではない。この厳しい北の国境を長年守ってきた辺境伯領民、辺境伯軍、すべてがバーベンベルクだ。我等の領民・我等の軍がそのような暴挙を許すと思うか?」
揺るぎない言葉。
「また、お忘れのようだが、父が戻ってきたら・・・すでに嵐は止んでいるので、一両日の事だと思うが・・・どうなるだろうか?」
うっすらと笑みさえ浮かべて。流石兄上なんです!

でも。それだからこそ。
「陛下を脅すか!!バーベンベルクの小僧!たかが辺境伯代行の分際で!!」
ライオネル殿は激昂して叫んだ。スラっと腰の剣を抜く。
「我々名誉ある近衛騎士団は、直接陛下より口頭でご下命を受けたのだ。魔導師どもをいくら使っても構わないから、バーベンベルクから、今すぐ魔導師団長あいつの身内を連れて来れるだけ連れて来いと!」

そして、全く抵抗の意思を見せない兄上に向かって、白刃を向けたのだ。
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