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バーベンベルク城にて
父さま最大のやんちゃは国家の一大事でした
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「うち、騎士団詰所、皇城、、、場所は全く問わないのね。とにかくキーワードは母さまか・・・。あれ?」
クッションをギューギューしながら、私は今まで何となく引っかかっていたモヤモヤが、ようやくはっきりした。
「転移の魔法ってそんなにあちこちに気軽に飛べるものだったっけ?たしか結構魔力も使うし技術的にも大変だった気が・・・」
そうよ。転移の魔法って、飛距離によっては、帝国魔術師団所属の魔導師も、一往復すると一日休まないと魔力が回復しない場合もあるってくらい魔力を使うのよ。しかも、飛ぶ位置を正確に把握しないと、知らない土地や、どうかすると地中や水中に飛んでしまうこともあるから結構危険な魔法で。まして人混みの近距離を飛ぶなんて至難の業じゃない?
ライは私の疑問に、さらにニヤニヤしている。やっと気づいたかと言わんばかりだ。ちょっと腹立つわ。
「これは、ばあ様から聞いた話なんだけど。一般的には上級魔導師にならないと使えない、魔力だけでなく土地勘や魔力行使センスなどが必要な大魔法である転移魔法がさ、旦那様にとっては水溜まりを飛び越えるくらいの感覚と魔力使用量で出来るらしいよ。意識せずにいくらでも使えるから、皇城内でも、定刻ぎりぎりに執務室から会議室へ移動したり、会議途中で急にいなくなったり、何食わぬ顔で戻ってきたり。果ては皇帝陛下の目の前から突然逃亡したり・・・やりたい放題だとか。」
逃亡、やりたい放題、、、。どこの問題児の話かと思ったら、父さまだったなんて。
「昔からよく帰宅したり、閣下の視察先に現れたりしていた旦那様だけど、当時は皇城でもここでも、ずいぶん批判があったようだよ。旦那様も、いろんな方から言われたみたいだけど、主に閣下に諭されたのが効いて、年々我慢されるようになっていったってさ。」
母さまも言っていたな。日に何度もが、月に一度になってうれしいって。ご苦労に泣けてくるわ、、、。
「まあ、でも、突然暴風が吹き荒れるってのは無いのね。」父さま、毎回振り切ってるわけでは無いのね、良かった。
私がちょっとホッとして言うと、ライはムムっとうなって考え込んだ。
「昔はたまにあったって聞いたことがある。一回すごいのがあって、それ以来無くなったって、ばあ様に聞いた気がするな。」
「すごいのって、なんか怖いね。いつの事なんだろう。あ、私はそもそも知らないのか。」何の気なしに言うと。
「・・・思い出した。俺が5歳だからお嬢が3歳の時だ。旦那様が、ってのは知らなくても、出来事としては覚えてない?」
「どんなの?」
「初めは何だったっけ・・・ああそうだ。」
ライが話すのを、ついふむふむと聞いてしまう。
「閣下が旦那様と皇城の式典に参加されたあと、しばらくいなかったことがあったんだよね。その間中、暴風が吹き荒れて、けっこう被害があって。城の中もバタバタしてて。」
、、、そう言えばずいぶん小さい頃、父さまも母さまも何日もいなかったことがあったな。
毎日窓の外は風が吹き荒れて怖いし、オスカー兄上は母さまの補佐官たちと執務室に籠もりきりだし、フィン兄さまも父さまの執務室に籠もって出てこなかったし。誰も構ってくれなくて、最後のほうはルー兄さまとライと三人、震えていた気がする。でも、あれ、それだけじゃなかったような、、、。
何か引っかかって考え込む私に気づかず、ライは続ける。
「あれ、隣国の王太子殿下の表敬訪問を受けた帝室主催の舞踏会で、閣下も旦那様と参加されたんだけど・・・王太子殿下が酔っ払って閣下をダンスにしつこく誘ったんだって。女辺境伯としての夜会の正装は、肩を出したドレスだからね、それはそれは美しくて凛々しくて、人目を引いたらしいよ。」
「若い頃の母さまでしょ。当然だわ。」
「嫌がる旦那様をいなし、閣下は問題ないと応じた。なにせ国賓でしょ。機嫌を損ねる訳にはいかない・・・旦那様は拗ねてしまい、一言も口を利かなくなったので、会場の雰囲気を壊してはと、閣下は早々に会場を辞した。ところが、旦那様は反省の欠片もなく、帰城後もずーっと拗ねていたようで。さすがの閣下も国家の重要人物に対する心構えだとか、ついでに普段の行いの事だとか、ちょっとキツめに説教して、反省しないならここに帰ってこなくてよろしい、と言ったらしいよ。」
どうでも良いけど、やけに詳しいね、ライ。これ、みんな知ってるの?貴族界の常識?
「一部の方々には、そうみたい。それで、どこまで話したっけ。あ、閣下に叱られたところか。それで、旦那様、閣下に捨てられたと思って切れてしまって。今まで自分が構築した帝国のあらゆる結界を全て消して、出奔してしまった。」
そんな大事を!父さま!あなたという人は!
「まさに国家の一大事。もはや隣国の王太子殿下どころじゃない。早々にお帰り頂いて、結界張り直しに駆り出された魔導師・・・魔導師団副団長以下、中級以上の魔導師は全て駆り出されたとか・・・以外、上は皇帝陛下から下は洗濯女まで、皇城中の人々が、いや帝国中が旦那様を探し回った。ただ探すだけじゃない、結界を消していったんだから、反逆の意思あり、と言う貴族連中もいて、捕縛の意味もあったみたい。もちろん我がバーベンベルクも疑いをかけられた。ひそかに魔導師団副団長から帝都の状況を聞きつつ、われわれも三日三晩、必死に捜索を続け、もう万策尽きたと思ったその時・・・」
えー!そこで溜めるの?え、喉乾いたって?この冷めた紅茶上げるから早く話しなさいよ!
「四日目の朝に閣下が旦那様を連れて、皇帝陛下の前に転移してきたんだって。何があったのかは分からないんだけど。でも、旦那様は陛下の前に跪き、あっという間に帝国中の結界は張り直された。反逆も疑ったんだから、皇帝陛下も貴族連中も思うところはあったんだろうけど。結局不問に付されたんだよね。」
確かに、、、一人で帝国の結界全てを思うままに出来る人に、反逆だ何だ言って本当に謀反を起こされるより、機嫌を損ねない方が楽だもんね。
「以降、旦那様の行状に苦言を呈する人は、少なくとも皇城内ではいなくなったらしい。閣下じゃないけど、国政を担うものならば、国家の最重要人物に対する心構えは出来てるからね。」
てことは、、、。
「やりたい放題、、、?」
「そう、やりたい放題。」
クッションをギューギューしながら、私は今まで何となく引っかかっていたモヤモヤが、ようやくはっきりした。
「転移の魔法ってそんなにあちこちに気軽に飛べるものだったっけ?たしか結構魔力も使うし技術的にも大変だった気が・・・」
そうよ。転移の魔法って、飛距離によっては、帝国魔術師団所属の魔導師も、一往復すると一日休まないと魔力が回復しない場合もあるってくらい魔力を使うのよ。しかも、飛ぶ位置を正確に把握しないと、知らない土地や、どうかすると地中や水中に飛んでしまうこともあるから結構危険な魔法で。まして人混みの近距離を飛ぶなんて至難の業じゃない?
ライは私の疑問に、さらにニヤニヤしている。やっと気づいたかと言わんばかりだ。ちょっと腹立つわ。
「これは、ばあ様から聞いた話なんだけど。一般的には上級魔導師にならないと使えない、魔力だけでなく土地勘や魔力行使センスなどが必要な大魔法である転移魔法がさ、旦那様にとっては水溜まりを飛び越えるくらいの感覚と魔力使用量で出来るらしいよ。意識せずにいくらでも使えるから、皇城内でも、定刻ぎりぎりに執務室から会議室へ移動したり、会議途中で急にいなくなったり、何食わぬ顔で戻ってきたり。果ては皇帝陛下の目の前から突然逃亡したり・・・やりたい放題だとか。」
逃亡、やりたい放題、、、。どこの問題児の話かと思ったら、父さまだったなんて。
「昔からよく帰宅したり、閣下の視察先に現れたりしていた旦那様だけど、当時は皇城でもここでも、ずいぶん批判があったようだよ。旦那様も、いろんな方から言われたみたいだけど、主に閣下に諭されたのが効いて、年々我慢されるようになっていったってさ。」
母さまも言っていたな。日に何度もが、月に一度になってうれしいって。ご苦労に泣けてくるわ、、、。
「まあ、でも、突然暴風が吹き荒れるってのは無いのね。」父さま、毎回振り切ってるわけでは無いのね、良かった。
私がちょっとホッとして言うと、ライはムムっとうなって考え込んだ。
「昔はたまにあったって聞いたことがある。一回すごいのがあって、それ以来無くなったって、ばあ様に聞いた気がするな。」
「すごいのって、なんか怖いね。いつの事なんだろう。あ、私はそもそも知らないのか。」何の気なしに言うと。
「・・・思い出した。俺が5歳だからお嬢が3歳の時だ。旦那様が、ってのは知らなくても、出来事としては覚えてない?」
「どんなの?」
「初めは何だったっけ・・・ああそうだ。」
ライが話すのを、ついふむふむと聞いてしまう。
「閣下が旦那様と皇城の式典に参加されたあと、しばらくいなかったことがあったんだよね。その間中、暴風が吹き荒れて、けっこう被害があって。城の中もバタバタしてて。」
、、、そう言えばずいぶん小さい頃、父さまも母さまも何日もいなかったことがあったな。
毎日窓の外は風が吹き荒れて怖いし、オスカー兄上は母さまの補佐官たちと執務室に籠もりきりだし、フィン兄さまも父さまの執務室に籠もって出てこなかったし。誰も構ってくれなくて、最後のほうはルー兄さまとライと三人、震えていた気がする。でも、あれ、それだけじゃなかったような、、、。
何か引っかかって考え込む私に気づかず、ライは続ける。
「あれ、隣国の王太子殿下の表敬訪問を受けた帝室主催の舞踏会で、閣下も旦那様と参加されたんだけど・・・王太子殿下が酔っ払って閣下をダンスにしつこく誘ったんだって。女辺境伯としての夜会の正装は、肩を出したドレスだからね、それはそれは美しくて凛々しくて、人目を引いたらしいよ。」
「若い頃の母さまでしょ。当然だわ。」
「嫌がる旦那様をいなし、閣下は問題ないと応じた。なにせ国賓でしょ。機嫌を損ねる訳にはいかない・・・旦那様は拗ねてしまい、一言も口を利かなくなったので、会場の雰囲気を壊してはと、閣下は早々に会場を辞した。ところが、旦那様は反省の欠片もなく、帰城後もずーっと拗ねていたようで。さすがの閣下も国家の重要人物に対する心構えだとか、ついでに普段の行いの事だとか、ちょっとキツめに説教して、反省しないならここに帰ってこなくてよろしい、と言ったらしいよ。」
どうでも良いけど、やけに詳しいね、ライ。これ、みんな知ってるの?貴族界の常識?
「一部の方々には、そうみたい。それで、どこまで話したっけ。あ、閣下に叱られたところか。それで、旦那様、閣下に捨てられたと思って切れてしまって。今まで自分が構築した帝国のあらゆる結界を全て消して、出奔してしまった。」
そんな大事を!父さま!あなたという人は!
「まさに国家の一大事。もはや隣国の王太子殿下どころじゃない。早々にお帰り頂いて、結界張り直しに駆り出された魔導師・・・魔導師団副団長以下、中級以上の魔導師は全て駆り出されたとか・・・以外、上は皇帝陛下から下は洗濯女まで、皇城中の人々が、いや帝国中が旦那様を探し回った。ただ探すだけじゃない、結界を消していったんだから、反逆の意思あり、と言う貴族連中もいて、捕縛の意味もあったみたい。もちろん我がバーベンベルクも疑いをかけられた。ひそかに魔導師団副団長から帝都の状況を聞きつつ、われわれも三日三晩、必死に捜索を続け、もう万策尽きたと思ったその時・・・」
えー!そこで溜めるの?え、喉乾いたって?この冷めた紅茶上げるから早く話しなさいよ!
「四日目の朝に閣下が旦那様を連れて、皇帝陛下の前に転移してきたんだって。何があったのかは分からないんだけど。でも、旦那様は陛下の前に跪き、あっという間に帝国中の結界は張り直された。反逆も疑ったんだから、皇帝陛下も貴族連中も思うところはあったんだろうけど。結局不問に付されたんだよね。」
確かに、、、一人で帝国の結界全てを思うままに出来る人に、反逆だ何だ言って本当に謀反を起こされるより、機嫌を損ねない方が楽だもんね。
「以降、旦那様の行状に苦言を呈する人は、少なくとも皇城内ではいなくなったらしい。閣下じゃないけど、国政を担うものならば、国家の最重要人物に対する心構えは出来てるからね。」
てことは、、、。
「やりたい放題、、、?」
「そう、やりたい放題。」
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