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バーベンベルク城にて
気づいたらベッドの上でした
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「・・・?」
ぱちり、と音がするように突然目が覚めた。
と言うか、私、なんで寝ているんだろう。さっきまで、母さまの執務室で悪者をやっつけていて、、、いやいや。それは、なぜか忘れていた過去の自分で。
「私は、ディアナ・アウローラ・グンダハール。今年10歳の女の子。」
うん、大丈夫。母さまの執務室で父さまの思い込み修羅場をみて、見られた父さまが驚いて逃げちゃって、母さまが父さまを探しに行く間に、ライに父さまのあれこれを聞いてて、、、。
「・・・思い出したんだ。あの時の事。」
3歳だった。魔力に飲み込まれそうになった。記憶は、兄上を認識できなくなったところで途切れている。
次に記憶があるのは子供部屋で、起きたらもうお日さまは中天に近くて。隣には、ルー兄さまが私の手を握りながら眠っていた。
起きてアンナに支度を整えてもらい、お昼を食べに食堂に行くと、父さまも母さまもいて、びっくりしたんだっけ。
びっくりして、安心して、甘えて。それで疑問にも思わず忘れてしまったみたい。
城も、地震があったなんて気づかないくらい修復されてたし。
「・・・多分、父さまが直したんだろうな。」
直して、痕跡を消して。私の記憶を封印したんだ。3歳にはあの記憶は、危険だから。
危険だ、、、当時の私は、自我が飲み込まれてもなんとも思わなかったのだから。
記憶が残っていたら、きっと魔力の征服感・多幸感を忘れられず、自我を犠牲にしてでも、何とか魔力を持とうと思ったに違いない。その結果は、、、身の破滅しか思い浮かばない。
「父さまには感謝ね。でも・・・」
だから、分かったんだ、と、腑に落ちた。さっき父さまが切れて魔力を解放した時、なんで切れるのか、その時の気分はどうなのか、私は実感として分かった。あの時は不思議だったけど、こういう事だったんだ。
つまり。
「私も、あんな風に大人になっても切れる可能性があるんだ・・・」
正直、怖い。切れた父さまも怖かったけど、切れる自分がもっと怖い。あの時の私は、人を傷つけることに、なんのためらいも持たなかった。
あのおじさんが、必死で仲間の魔導師を救ってくれなければ、私は3歳にして、人殺しになったかも知れないのだ。
自分が怖くて、ぞっとする。
それに。
私は自分がどうやって戻ってきたのか全く思い出せない。きっと、父さまが戻してくれたんだとは思うんだけど。
でも、これからもずっと、大きくなっても父さまは私を守ってくれるのかな。
だって、父さまには母さまがいる。父さまは私の事を大事にしてくれるけれど、でもきっと、最後は母さまがいればいいんだと思うの。
そして、その母さまは。父さまにとって世界のすべての母さまは、父さまがどんなことになっても、きっと怖がったりしないで助けるんだろう。
いいな。
私にもそんな人が、見つかるのかな。父さまにとっての母さまのように、必ず正気に戻してくれる人が。
ううん、難しそう。あんな風になる女の子を好きになってくれる男の子がいるなんて、思えないもん、、、。
私が思わずベッドの上にうずくまった時。
「お嬢様。そろそろ起きませんか。閣下がまもなくいらっしゃいます。」
ライがノックの音とともに声を掛けてきた。よそ行きの声。案の定、
「お嬢様、一旦起きて、御髪を整えましょう。晩餐前なので、ついでにお着替えも。」
アンナの声がした。とりあえず怒ってないようでホッとする。
「ライから、お嬢様に何をお話ししたか内容を聞きました。余分なことまであれこれと、申し訳ありません。続きは私から・・・お嬢様?起きていらっしゃいませんか?」
確認のためか、ドアを開けようとするアンナ。いや、もうこれ以上何も聞きたくないよ。
「開けないで!」
私の声は思いのほか鋭く響いた。言った自分が驚いたくらい。一瞬の沈黙の後、私は思い切って声を掛けた。
「色々思い出してしまって・・・。落ち着いて頭を整理したいの。しばらく一人にして頂戴。」
「お嬢様っ!思い出したって・・・!」
アンナが慌てたように叫んだけど、今は誰にも会いたくないし、話したくないの。
「一人にして。」
再度願いを口にすると、しばらく廊下でぼそぼそ声が聞こえて。
「エレオノーレお嬢様にお伝えしますね。」
とだけ言ってアンナとライは戻ってくれた。
良かった。これで少しだけ一人になれる。
私は今度こそ、ベッドの上で深くうずくまった。
ぱちり、と音がするように突然目が覚めた。
と言うか、私、なんで寝ているんだろう。さっきまで、母さまの執務室で悪者をやっつけていて、、、いやいや。それは、なぜか忘れていた過去の自分で。
「私は、ディアナ・アウローラ・グンダハール。今年10歳の女の子。」
うん、大丈夫。母さまの執務室で父さまの思い込み修羅場をみて、見られた父さまが驚いて逃げちゃって、母さまが父さまを探しに行く間に、ライに父さまのあれこれを聞いてて、、、。
「・・・思い出したんだ。あの時の事。」
3歳だった。魔力に飲み込まれそうになった。記憶は、兄上を認識できなくなったところで途切れている。
次に記憶があるのは子供部屋で、起きたらもうお日さまは中天に近くて。隣には、ルー兄さまが私の手を握りながら眠っていた。
起きてアンナに支度を整えてもらい、お昼を食べに食堂に行くと、父さまも母さまもいて、びっくりしたんだっけ。
びっくりして、安心して、甘えて。それで疑問にも思わず忘れてしまったみたい。
城も、地震があったなんて気づかないくらい修復されてたし。
「・・・多分、父さまが直したんだろうな。」
直して、痕跡を消して。私の記憶を封印したんだ。3歳にはあの記憶は、危険だから。
危険だ、、、当時の私は、自我が飲み込まれてもなんとも思わなかったのだから。
記憶が残っていたら、きっと魔力の征服感・多幸感を忘れられず、自我を犠牲にしてでも、何とか魔力を持とうと思ったに違いない。その結果は、、、身の破滅しか思い浮かばない。
「父さまには感謝ね。でも・・・」
だから、分かったんだ、と、腑に落ちた。さっき父さまが切れて魔力を解放した時、なんで切れるのか、その時の気分はどうなのか、私は実感として分かった。あの時は不思議だったけど、こういう事だったんだ。
つまり。
「私も、あんな風に大人になっても切れる可能性があるんだ・・・」
正直、怖い。切れた父さまも怖かったけど、切れる自分がもっと怖い。あの時の私は、人を傷つけることに、なんのためらいも持たなかった。
あのおじさんが、必死で仲間の魔導師を救ってくれなければ、私は3歳にして、人殺しになったかも知れないのだ。
自分が怖くて、ぞっとする。
それに。
私は自分がどうやって戻ってきたのか全く思い出せない。きっと、父さまが戻してくれたんだとは思うんだけど。
でも、これからもずっと、大きくなっても父さまは私を守ってくれるのかな。
だって、父さまには母さまがいる。父さまは私の事を大事にしてくれるけれど、でもきっと、最後は母さまがいればいいんだと思うの。
そして、その母さまは。父さまにとって世界のすべての母さまは、父さまがどんなことになっても、きっと怖がったりしないで助けるんだろう。
いいな。
私にもそんな人が、見つかるのかな。父さまにとっての母さまのように、必ず正気に戻してくれる人が。
ううん、難しそう。あんな風になる女の子を好きになってくれる男の子がいるなんて、思えないもん、、、。
私が思わずベッドの上にうずくまった時。
「お嬢様。そろそろ起きませんか。閣下がまもなくいらっしゃいます。」
ライがノックの音とともに声を掛けてきた。よそ行きの声。案の定、
「お嬢様、一旦起きて、御髪を整えましょう。晩餐前なので、ついでにお着替えも。」
アンナの声がした。とりあえず怒ってないようでホッとする。
「ライから、お嬢様に何をお話ししたか内容を聞きました。余分なことまであれこれと、申し訳ありません。続きは私から・・・お嬢様?起きていらっしゃいませんか?」
確認のためか、ドアを開けようとするアンナ。いや、もうこれ以上何も聞きたくないよ。
「開けないで!」
私の声は思いのほか鋭く響いた。言った自分が驚いたくらい。一瞬の沈黙の後、私は思い切って声を掛けた。
「色々思い出してしまって・・・。落ち着いて頭を整理したいの。しばらく一人にして頂戴。」
「お嬢様っ!思い出したって・・・!」
アンナが慌てたように叫んだけど、今は誰にも会いたくないし、話したくないの。
「一人にして。」
再度願いを口にすると、しばらく廊下でぼそぼそ声が聞こえて。
「エレオノーレお嬢様にお伝えしますね。」
とだけ言ってアンナとライは戻ってくれた。
良かった。これで少しだけ一人になれる。
私は今度こそ、ベッドの上で深くうずくまった。
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