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バーベンベルク城にて
ルー兄さまが話してくれました
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うじうじ一人で暗くなっていると。
いくらもしないで隣の部屋の扉が開いて、こっちへ速足で近づく足音がした。
隣はルー兄さまの部屋なんだけど、どうしたのかな?最近は、秋から始まる帝国学園への入学準備で忙しくて、午前中の家庭教師の後も、晩餐までは部屋に籠もって勉強してるから、ほとんど口もきかないのに。
そう言えば、小さい頃はいっつも一緒に遊んでたな、、、。
ぼんやりとそんなことを思っていると。足音は私の部屋の扉の前で止まった。
え?私に用なの?不審に思う間もなく。
「ディー、居るんだろ。開けろよ。」
ノックの音がして、最近少し低くなってきたルー兄さまの声がした。
「・・・やだ。」
とりあえず断ってみる。だって、こんなに気分が滅入ってるところを兄さまに見られたら、何を言われるか。
そう、我が家で唯一私に辛口なのが、ルー兄さまなのだ。
さぼって見つかる時など、アンナと一緒になって叱ってくる。文句を言い返そうにもいつも正論だし、実際兄さまが努力しているのは知っているから、私はむくれながらも言い返すことが出来ない。
それはともかく。
「今はお小言を聞きたい気分じゃないの。もう少し気分が回復するまで待って。」
シーツにもぐりこんでくぐもった声で言うと。
「・・・知りたいんじゃないかと思って。」
少し、迷っているような声が聞こえた。
知りたいって、何を?
ベッドの上で丸まって耳だけ澄ませていると、兄さまは、再び話し出した。声から迷いが消えている。
「イヤなら扉、開けなくていいぞ。お前、ライから7年前の事、聞いたんだってな。さっき、ライが俺の部屋に来て泣きついて行ったよ。調子に乗って余計なことまで話して、自分の目の前で気を失ってしまったって。気が付いたけど、思い出したことでひどく悩んでいて、自分だけじゃなく、アンナまで中に入れてもらえなかったって。」
ライ、心配してくれたんだ。でも、そんなことで泣きつかれても、兄さまも困るよね。
「兄さま。ちょっとショックなことを思い出したけど、兄さまには関係ないから大丈夫。心配してくれてありがとう。」
だから、部屋に戻って。勉強頑張って。そう言おうとすると。
「関係ないのは分かってる。・・・本当の役には立たないことも。」
?悔しそうな声?
「・・・でも、話してやることは出来ると思う。七年前魔力に飲み込まれかけた状態から、どうやってお前が戻ってきたかを。」
兄さまは静かな、だけど断固とした声で言ったのだ。
声も出ない私の沈黙を了承と取ったのか、兄さまは淡々と話し始めた。
「あの時、地震があって、びっくりして目が覚めたら、お前が居なかったんだ。元々、アンナが寝たら、オスカー兄上のところに行こうって話してたのに、俺とライは寝てしまったんだよな。お前はきっと一人で兄上のところに行ったに違いないと思ったんだ。」
うん、そうだったね。私はベッドの上で兄さまの声を聴いている。
「ライは泣いてアンナにしがみついてるし、アンナも動揺していた。だから、お前もきっと泣いてるだろうと思って・・・。俺はお前を探しに行ったんだ。」
兄さま、あの頃は意地悪ばっかりだったけど、そんな風に考えてくれたんだ。
「あの時、兄上の寝室では無くて、母上の執務室に行ったのはなぜか、自分でも分からない。なぜか、兄上とお前が居るのは母上の執務室だと、疑いもしなかった。不規則な揺れの続く中、薄暗い灯りを頼りに走っていくと、角を曲がったところで父上の執務室から飛び出して来たフィン兄さまを見つけた。思わず呼びかけようとしたよ。でも、フィン兄さまはそのまますごい勢いで母上の執務室の扉を開けて、飛び込んでいったんだ。」
あの場に、フィン兄さまもいたの?、、、全く記憶にない。
「俺も慌てて走ったよ。ただ事じゃない、と思ったからね。扉は開けっぱなしだったから、廊下は明るくなって・・・はっきり室内の声も聞こえた。」
兄さまの声が暗くなる。
「ディー、お前のとても楽しそうな笑い声が響いていたよ。」
そうだ、あの時私は笑ってた。第三者の眼で見るとその異常さがはっきり分かる。
「兄上とフィン兄さまが何かを声高に、早口で話していた。ごめん、内容は分からない。ただ、俺が開けっぱなしの扉にたどり着いた時、目の前で見たのは・・・。」
ここで初めて言いよどむ兄さま。何があったのか、怖いけど、知りたい。
「ルー兄さまは何を見たの・・・?」
思い切って扉の外に声を掛ける。兄さまは答えてくれた。
「信じられないかもしれないけれど。フィン兄さまの手が、お前の身体をすり抜けていたよ。」
え、、、?
うん、信じられない。だって、そんなこと、あるの?
「後からフィン兄さまに聞いた。お前は身体に入れた魔力が多すぎて、馴染みすぎて、魔力と混じり合って、身体が解けかけてたそうだよ。兄上もフィン兄さまも呆然としていた。そのうち、お前の身体がキラキラ輝きだして、とうとうフィン兄さまが泣き出した。俺も、廊下で立ちすくんで動けなかったよ。目の前で小さな妹が大変なことになってるのに、何もできなくて。情けなくて涙が出てきた。」
兄さま、、、兄さまも充分小さかったでしょう。そんな状況で何か出来る訳、無いよ。
「その時、フィン兄さまの肩に止まった大鴉が何か言って。急に父上と母上が現れたんだ。そこからはあっという間だった。」
兄さまの語る父さまはすごかった。魔術空間を作り、魔力を私の身体に押し戻し、許容量を超えた魔力に苦しむ私を抱きしめて一気に体内に渦巻く魔力を抜く。すべてが揺るぎなく行われて、ただ見惚れるだけだったそうだ。
「その後、泣いてる俺は母上に見つかってさ。」
一転照れくさそうな声がした。
「何も出来なかったと泣きじゃくったら、父上に、お前が寝ている間、お前の手を握ってて、と言われた。魔力の封印はしたけれど、身体と魂をきちんと結び直すためには安心出来る人のぬくもりが大事だって。」
そうだ。思い出したじゃない。あの時起きたら、ルー兄さまが私の手をしっかり握ってくれていて。
温かくて、とても気持ちよかったって。
「あの時、俺は何の役にも立たなかった。でも、兄上もフィン兄さまも、必死でお前を助けようとしていたし、父上は本当に頼もしかったよ。お前はさ、あんなこと思い出して、不安にならない訳ないと思うけど。」
そんなことない、兄さまのぬくもり、うれしかったよ。
「うちの家族は、お前がまた魔力に捕らわれることがあっても、絶対守るよ。俺だって、次は何かの役に立って見せる。」
だから。兄さまははっきりと大きな声で私に言った。
「ディアナ・アウローラ・グンダハール。泣きべそかいて部屋に閉じこもるなんて無様な真似、するんじゃない。」
いくらもしないで隣の部屋の扉が開いて、こっちへ速足で近づく足音がした。
隣はルー兄さまの部屋なんだけど、どうしたのかな?最近は、秋から始まる帝国学園への入学準備で忙しくて、午前中の家庭教師の後も、晩餐までは部屋に籠もって勉強してるから、ほとんど口もきかないのに。
そう言えば、小さい頃はいっつも一緒に遊んでたな、、、。
ぼんやりとそんなことを思っていると。足音は私の部屋の扉の前で止まった。
え?私に用なの?不審に思う間もなく。
「ディー、居るんだろ。開けろよ。」
ノックの音がして、最近少し低くなってきたルー兄さまの声がした。
「・・・やだ。」
とりあえず断ってみる。だって、こんなに気分が滅入ってるところを兄さまに見られたら、何を言われるか。
そう、我が家で唯一私に辛口なのが、ルー兄さまなのだ。
さぼって見つかる時など、アンナと一緒になって叱ってくる。文句を言い返そうにもいつも正論だし、実際兄さまが努力しているのは知っているから、私はむくれながらも言い返すことが出来ない。
それはともかく。
「今はお小言を聞きたい気分じゃないの。もう少し気分が回復するまで待って。」
シーツにもぐりこんでくぐもった声で言うと。
「・・・知りたいんじゃないかと思って。」
少し、迷っているような声が聞こえた。
知りたいって、何を?
ベッドの上で丸まって耳だけ澄ませていると、兄さまは、再び話し出した。声から迷いが消えている。
「イヤなら扉、開けなくていいぞ。お前、ライから7年前の事、聞いたんだってな。さっき、ライが俺の部屋に来て泣きついて行ったよ。調子に乗って余計なことまで話して、自分の目の前で気を失ってしまったって。気が付いたけど、思い出したことでひどく悩んでいて、自分だけじゃなく、アンナまで中に入れてもらえなかったって。」
ライ、心配してくれたんだ。でも、そんなことで泣きつかれても、兄さまも困るよね。
「兄さま。ちょっとショックなことを思い出したけど、兄さまには関係ないから大丈夫。心配してくれてありがとう。」
だから、部屋に戻って。勉強頑張って。そう言おうとすると。
「関係ないのは分かってる。・・・本当の役には立たないことも。」
?悔しそうな声?
「・・・でも、話してやることは出来ると思う。七年前魔力に飲み込まれかけた状態から、どうやってお前が戻ってきたかを。」
兄さまは静かな、だけど断固とした声で言ったのだ。
声も出ない私の沈黙を了承と取ったのか、兄さまは淡々と話し始めた。
「あの時、地震があって、びっくりして目が覚めたら、お前が居なかったんだ。元々、アンナが寝たら、オスカー兄上のところに行こうって話してたのに、俺とライは寝てしまったんだよな。お前はきっと一人で兄上のところに行ったに違いないと思ったんだ。」
うん、そうだったね。私はベッドの上で兄さまの声を聴いている。
「ライは泣いてアンナにしがみついてるし、アンナも動揺していた。だから、お前もきっと泣いてるだろうと思って・・・。俺はお前を探しに行ったんだ。」
兄さま、あの頃は意地悪ばっかりだったけど、そんな風に考えてくれたんだ。
「あの時、兄上の寝室では無くて、母上の執務室に行ったのはなぜか、自分でも分からない。なぜか、兄上とお前が居るのは母上の執務室だと、疑いもしなかった。不規則な揺れの続く中、薄暗い灯りを頼りに走っていくと、角を曲がったところで父上の執務室から飛び出して来たフィン兄さまを見つけた。思わず呼びかけようとしたよ。でも、フィン兄さまはそのまますごい勢いで母上の執務室の扉を開けて、飛び込んでいったんだ。」
あの場に、フィン兄さまもいたの?、、、全く記憶にない。
「俺も慌てて走ったよ。ただ事じゃない、と思ったからね。扉は開けっぱなしだったから、廊下は明るくなって・・・はっきり室内の声も聞こえた。」
兄さまの声が暗くなる。
「ディー、お前のとても楽しそうな笑い声が響いていたよ。」
そうだ、あの時私は笑ってた。第三者の眼で見るとその異常さがはっきり分かる。
「兄上とフィン兄さまが何かを声高に、早口で話していた。ごめん、内容は分からない。ただ、俺が開けっぱなしの扉にたどり着いた時、目の前で見たのは・・・。」
ここで初めて言いよどむ兄さま。何があったのか、怖いけど、知りたい。
「ルー兄さまは何を見たの・・・?」
思い切って扉の外に声を掛ける。兄さまは答えてくれた。
「信じられないかもしれないけれど。フィン兄さまの手が、お前の身体をすり抜けていたよ。」
え、、、?
うん、信じられない。だって、そんなこと、あるの?
「後からフィン兄さまに聞いた。お前は身体に入れた魔力が多すぎて、馴染みすぎて、魔力と混じり合って、身体が解けかけてたそうだよ。兄上もフィン兄さまも呆然としていた。そのうち、お前の身体がキラキラ輝きだして、とうとうフィン兄さまが泣き出した。俺も、廊下で立ちすくんで動けなかったよ。目の前で小さな妹が大変なことになってるのに、何もできなくて。情けなくて涙が出てきた。」
兄さま、、、兄さまも充分小さかったでしょう。そんな状況で何か出来る訳、無いよ。
「その時、フィン兄さまの肩に止まった大鴉が何か言って。急に父上と母上が現れたんだ。そこからはあっという間だった。」
兄さまの語る父さまはすごかった。魔術空間を作り、魔力を私の身体に押し戻し、許容量を超えた魔力に苦しむ私を抱きしめて一気に体内に渦巻く魔力を抜く。すべてが揺るぎなく行われて、ただ見惚れるだけだったそうだ。
「その後、泣いてる俺は母上に見つかってさ。」
一転照れくさそうな声がした。
「何も出来なかったと泣きじゃくったら、父上に、お前が寝ている間、お前の手を握ってて、と言われた。魔力の封印はしたけれど、身体と魂をきちんと結び直すためには安心出来る人のぬくもりが大事だって。」
そうだ。思い出したじゃない。あの時起きたら、ルー兄さまが私の手をしっかり握ってくれていて。
温かくて、とても気持ちよかったって。
「あの時、俺は何の役にも立たなかった。でも、兄上もフィン兄さまも、必死でお前を助けようとしていたし、父上は本当に頼もしかったよ。お前はさ、あんなこと思い出して、不安にならない訳ないと思うけど。」
そんなことない、兄さまのぬくもり、うれしかったよ。
「うちの家族は、お前がまた魔力に捕らわれることがあっても、絶対守るよ。俺だって、次は何かの役に立って見せる。」
だから。兄さまははっきりと大きな声で私に言った。
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