51 / 241
皇宮での邂逅
彼の名前は
しおりを挟む
「ごめんなさい。驚かせた?」
小首を傾げて、少し見上げるように見つめると。
彼は決まり悪そうな顔をして、慌てて腕を下ろした。
「べ、別に驚いてはいない。ちょっと予想してなかっただけだ。」
近くで見ると、彼の瞳は綺麗な蒼だった。細めで切れ長だからパッと見ると少し怖いけど、さっき表情を緩めた時は、柔らかな感じだったよね。
しっかりした鼻筋や頬骨は高くて、やや薄い口元がキュッと結ばれてる。
うん、オスカー兄上タイプだ。さっき精悍な、と思ったのはこの子だわ!
思わずニッコリすると。
「そんなにジロジロ見るな。それに男がヘラヘラ笑うな。」
顔を背けられてしまった。そっか。私は今男の子なんだから、男の子っぽくしなきゃね。
「すみません。」
とりあえずペコリと頭を下げておいた。
頭を上げてもまだそっぽを向いたままだ。怒らせちゃったかな。やっぱり壁登って裏道行こうかな?
そう思っていると。
「いや、いい。ちょっと待ってろ。今片付ける。」
彼が動き出した。模擬刀をしまい、水筒に口をつけながら、上着や汗拭きの布をポイポイかばんに放り込む。あっという間に片付け終わると無造作に肩に担いでこっちを一瞥した。
「行くぞ。」
一声かけると、さっさと歩き出すので、慌てて後を追った。
せっかくだから、剣の話がしたい!
「さっきの試合、凄かったです。わた、僕、感動しました!」
でも、話しかけると胡散臭げに見られてしまった。
「君、侍従見習いだろ。魔導師団の。魔術使いが剣の腕なんて分かるのか?」
あ、この子、結構潔癖かも。
お世辞を言われ慣れてて、しかも流せないタイプなんだ。ふふ、ルー兄さまみたい。
「分かりますよ、わ、僕も、これでも騎士の家系で剣を握りますからね!」
腕をブンブン振り回すと、クッと笑われてしまった。
「その細腕でか?どら、見せてみろ。」
掴まれそうになり、サッと避ける。身軽さとすばしこさは私の身上なんだから!
「おっ?」
空振りした彼は驚いたように自分の手を見つめ、それからニヤッと笑った。表情に親しみが籠もったのが分かる。
「すばしこいな。さっきの体重を感じさせない跳躍といい・・・君の剣は小うるさそうだ。」
「試してみます?正直、貴方に勝てるとは思ってません。でも、逃げに徹すれば、結構保つとは思いますよ?」
ふふっと笑うと、笑い返された。
「機会があったらな。」
断られなかった。今日はそれだけで充分ね。
壁沿いに進むと、段差が低くなったところに門があって、彼は私が出た後、中をチラッと確かめると、スラックスのポケットから鍵を出してきちんと閉めた。
門に見張りもいないから、無人になる。
「訓練場っていつも開けてるんじゃ無いの?」
思わず尋ねてしまった。バーベンベルクでは、軍の訓練場は警備兵が常駐している代わりにいつも開けてあって、訓練時間外でも、空き時間に訓練する騎士や兵士は多かったから、変な感じがする。
「他のところは開けてるさ。ここは普段使われてないからな・・・て、なんで来たばかりの魔導師団の侍従見習いがそんな事知ってるんだ?」
不審な目を向けられて気がついた。侍従見習いはそんなこと知らないはずなのね。
えーっと、なんて言おうかな。まあ、真面目で潔癖な感じだから、此処はきちんと答えよう。
「騎士の家系って言ったでしょう?僕の訓練していたところでは、警備担当が常駐してる代わりにいつも開いていて、時間があれば訓練し放題でしたから。」
うん、嘘は付いてない。バーベンベルクは騎士の家系だし、訓練場は私の遊び場だったからよく知ってるもの。
男の子の目を見て答えると、彼は納得したようだった。
「そうか、良い養成所に通ってたんだな。」
、、、養成所って、何?
それとなく尋ねる。帝都には、騎士階級の子弟が通う騎士の養成所がいくつかあって、それぞれ剣の流派も違うのだそうだ。
貴族でも、家に剣術の師を呼べない者は、養成所に通うことも多く、貴族向け、騎士階級向け、庶民向けなど様々分かれているらしい。
「そうなんですか?!知らなかったです!」
素直に驚くと、かえって驚かれた。
「騎士階級の家なんだろ。君、どんな田舎から来たんだ?」
あは、困ったな、今度はなんて答えよう。
そう考えた時。
急に肩の小鳥がチッと鳴いて。
風が吹いたと思ったら、耳元で父さまの声がした。
「デイー!帰ってこないと思ったらこんな所で何してるんだ!」
え?!思わず振り返っても、誰も居ない。でも、すぐそこに気配を感じる。
父さまだ!
え、いつから居たの?何処から聞いてたの?どうしたらいいの?
頭が真っ白になってワタワタしてしまう。
「おい、どうした?君・・・。」
私の動きを不審に思ったらしい。
男の子が、ぐっと手を伸ばして腕をつかもうとした時。
「・・・い、まだ終わらないのか?」
「早くしないと午後の予定が押しますよ。」
「お昼先食べちゃうぞ!ジキスムント!」
すぐ先の建物から、さっきの三人の声がした。
まずい!あの子たちにまで会ったら余計ややこしくなりそう!
男の子、、、ジキスムント君て言うんだ、、、が彼らの方を振り向いた瞬間。
「父さま!」
私が小さく呼びかけると同時に、背中からフワッと抱かれて、風を顔に感じて。
「またね!」と言う声は彼に届いたのか、、、。
次の瞬間、私は朝方ぶりに父さまの執務室に戻っていた。
まだお昼も食べてないのに、色んなことがありすぎて、しかも背中の父さまは、どうやらお怒りのようで。
もうお腹一杯よ。誰か今の私の身代わりになって、、、。
小首を傾げて、少し見上げるように見つめると。
彼は決まり悪そうな顔をして、慌てて腕を下ろした。
「べ、別に驚いてはいない。ちょっと予想してなかっただけだ。」
近くで見ると、彼の瞳は綺麗な蒼だった。細めで切れ長だからパッと見ると少し怖いけど、さっき表情を緩めた時は、柔らかな感じだったよね。
しっかりした鼻筋や頬骨は高くて、やや薄い口元がキュッと結ばれてる。
うん、オスカー兄上タイプだ。さっき精悍な、と思ったのはこの子だわ!
思わずニッコリすると。
「そんなにジロジロ見るな。それに男がヘラヘラ笑うな。」
顔を背けられてしまった。そっか。私は今男の子なんだから、男の子っぽくしなきゃね。
「すみません。」
とりあえずペコリと頭を下げておいた。
頭を上げてもまだそっぽを向いたままだ。怒らせちゃったかな。やっぱり壁登って裏道行こうかな?
そう思っていると。
「いや、いい。ちょっと待ってろ。今片付ける。」
彼が動き出した。模擬刀をしまい、水筒に口をつけながら、上着や汗拭きの布をポイポイかばんに放り込む。あっという間に片付け終わると無造作に肩に担いでこっちを一瞥した。
「行くぞ。」
一声かけると、さっさと歩き出すので、慌てて後を追った。
せっかくだから、剣の話がしたい!
「さっきの試合、凄かったです。わた、僕、感動しました!」
でも、話しかけると胡散臭げに見られてしまった。
「君、侍従見習いだろ。魔導師団の。魔術使いが剣の腕なんて分かるのか?」
あ、この子、結構潔癖かも。
お世辞を言われ慣れてて、しかも流せないタイプなんだ。ふふ、ルー兄さまみたい。
「分かりますよ、わ、僕も、これでも騎士の家系で剣を握りますからね!」
腕をブンブン振り回すと、クッと笑われてしまった。
「その細腕でか?どら、見せてみろ。」
掴まれそうになり、サッと避ける。身軽さとすばしこさは私の身上なんだから!
「おっ?」
空振りした彼は驚いたように自分の手を見つめ、それからニヤッと笑った。表情に親しみが籠もったのが分かる。
「すばしこいな。さっきの体重を感じさせない跳躍といい・・・君の剣は小うるさそうだ。」
「試してみます?正直、貴方に勝てるとは思ってません。でも、逃げに徹すれば、結構保つとは思いますよ?」
ふふっと笑うと、笑い返された。
「機会があったらな。」
断られなかった。今日はそれだけで充分ね。
壁沿いに進むと、段差が低くなったところに門があって、彼は私が出た後、中をチラッと確かめると、スラックスのポケットから鍵を出してきちんと閉めた。
門に見張りもいないから、無人になる。
「訓練場っていつも開けてるんじゃ無いの?」
思わず尋ねてしまった。バーベンベルクでは、軍の訓練場は警備兵が常駐している代わりにいつも開けてあって、訓練時間外でも、空き時間に訓練する騎士や兵士は多かったから、変な感じがする。
「他のところは開けてるさ。ここは普段使われてないからな・・・て、なんで来たばかりの魔導師団の侍従見習いがそんな事知ってるんだ?」
不審な目を向けられて気がついた。侍従見習いはそんなこと知らないはずなのね。
えーっと、なんて言おうかな。まあ、真面目で潔癖な感じだから、此処はきちんと答えよう。
「騎士の家系って言ったでしょう?僕の訓練していたところでは、警備担当が常駐してる代わりにいつも開いていて、時間があれば訓練し放題でしたから。」
うん、嘘は付いてない。バーベンベルクは騎士の家系だし、訓練場は私の遊び場だったからよく知ってるもの。
男の子の目を見て答えると、彼は納得したようだった。
「そうか、良い養成所に通ってたんだな。」
、、、養成所って、何?
それとなく尋ねる。帝都には、騎士階級の子弟が通う騎士の養成所がいくつかあって、それぞれ剣の流派も違うのだそうだ。
貴族でも、家に剣術の師を呼べない者は、養成所に通うことも多く、貴族向け、騎士階級向け、庶民向けなど様々分かれているらしい。
「そうなんですか?!知らなかったです!」
素直に驚くと、かえって驚かれた。
「騎士階級の家なんだろ。君、どんな田舎から来たんだ?」
あは、困ったな、今度はなんて答えよう。
そう考えた時。
急に肩の小鳥がチッと鳴いて。
風が吹いたと思ったら、耳元で父さまの声がした。
「デイー!帰ってこないと思ったらこんな所で何してるんだ!」
え?!思わず振り返っても、誰も居ない。でも、すぐそこに気配を感じる。
父さまだ!
え、いつから居たの?何処から聞いてたの?どうしたらいいの?
頭が真っ白になってワタワタしてしまう。
「おい、どうした?君・・・。」
私の動きを不審に思ったらしい。
男の子が、ぐっと手を伸ばして腕をつかもうとした時。
「・・・い、まだ終わらないのか?」
「早くしないと午後の予定が押しますよ。」
「お昼先食べちゃうぞ!ジキスムント!」
すぐ先の建物から、さっきの三人の声がした。
まずい!あの子たちにまで会ったら余計ややこしくなりそう!
男の子、、、ジキスムント君て言うんだ、、、が彼らの方を振り向いた瞬間。
「父さま!」
私が小さく呼びかけると同時に、背中からフワッと抱かれて、風を顔に感じて。
「またね!」と言う声は彼に届いたのか、、、。
次の瞬間、私は朝方ぶりに父さまの執務室に戻っていた。
まだお昼も食べてないのに、色んなことがありすぎて、しかも背中の父さまは、どうやらお怒りのようで。
もうお腹一杯よ。誰か今の私の身代わりになって、、、。
12
あなたにおすすめの小説
隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり
鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。
でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
幼馴染の許嫁
山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。
彼は、私の許嫁だ。
___あの日までは
その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった
連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった
連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった
女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース
誰が見ても、愛らしいと思う子だった。
それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡
どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服
どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう
「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」
可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる
「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」
例のってことは、前から私のことを話していたのか。
それだけでも、ショックだった。
その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした
「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」
頭を殴られた感覚だった。
いや、それ以上だったかもしれない。
「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」
受け入れたくない。
けど、これが連の本心なんだ。
受け入れるしかない
一つだけ、わかったことがある
私は、連に
「許嫁、やめますっ」
選ばれなかったんだ…
八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!
竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」
俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。
彼女の名前は下野ルカ。
幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。
俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。
だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている!
堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる