帝国最強(最凶)の(ヤンデレ)魔導師は私の父さまです

波月玲音

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皇宮での邂逅

時に、些細な選択で未来は変わる

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金髪君が先頭に立って、ずんずん歩いてくる。
白金の二人は、訳が分からない様子で、でも取り敢えずついて来てる感じ。

「どうなさったのです!」
そして。
ジキスムント君が慌てて走って来て、私のそばに来た。
「今日は帰れ!」
小声で耳打ちされたから、頷く。
踵を返そうとすると。

「逃げるな、そこのお前。ジキスムント、捕らえろ。」

偉そうな、金髪君の声がした。
「「!」」
ジキスムント君と、お互いに顔を見合わせる。
「どうした、俺の言うことが聞けないのか?」
すぐそこまで近づきながら、皮肉に口元を歪める金髪君。
こんな奴の言うこと聞かないよね!
そう思ったのに。
「すまない、ライムンド。」
「え?」
油断した私の腕を、ジキスムント君が掴もうとした。

その手を、ローちゃんが、チッと鳴いて攻撃するけど。
同じ攻撃を二度受けるジキスムント君じゃ無い。避けながらバッと払いのけた。
ローちゃんが地面に叩きつけられる。

「ローちゃん!」
辛うじて彼らの間合いから逃げていた私は、悲鳴をあげる。
そのまま走り寄って、そっと手のひらに乗せた。
『大丈夫?!ローちゃん。』
『・・・主。油断した。済まない。』
幸い、ローちゃんはすぐに目を開けてくれたけど。
私は立ち上がると佇む四人をキッと睨みつけた。
「小鳥に暴力を振るうなんて!」
「済まない、ライ・・・」
「謝るな!ジキスムント!」
金髪君が被せるように言うと、一歩前に出た。
「お前、ここに勝手に入って良いと思ってるのか?見ればたかが魔導師団の侍従見習いじゃないか。」

ほんとは。
どこに行っても構わない。そう初日に伯父さまに言われてる。
でも、侍従見習いの分際で、相手の身分も分からないのに、宰相閣下の名前は出したくない。
私は押し黙った。

「私が呼んだのです。申し訳ありません。」
ジキスムント君が謝ると、金髪君は却って激昂した。
「大体、なんでお前はこいつの肩を持つんだ!」
そして、いきなり持っていた模擬剣を投げつけて来た。

やった!
ローちゃんを持ってない方の手で掴む。
敵意を持つ相手が武器をくれたのだ。貰わない手はない。

『主。もう大丈夫だから。』
ローちゃんも肩に戻ってくれたから。
私はサッと下がり、模擬剣を構えた。

「やめろ、ライムンド!誰に剣を向けていると・・・」
「いや、良いんだ、ジキスムント。カーティスにヘイリーも、下がってろ。」
やっぱり被せた金髪君が、こちらに向かって模擬剣を構える。
「掛かって来いよ。誰に刃向かったのか、俺が分からせてやる。」

この子、何様?人の話を全然聞かない。
まあ、良いけど。
私も黙って間合いを図ると、構えを定めた。

ちょっと真面目に練習したからって、まだ私の方が上のはず。もちろん絶対油断はしないけど。
一撃したら、逃げよう。壁を登れば、こっちの勝ち、てことで。
算段を付けると、相手の目を静かに見つめた。

「どうぞ。」
穏やかに言うと。

「生意気な奴め!」
金髪君は激昂したまま、突っ込んできた。

粗い。
私は突っ込んで来た彼を僅かに交わすと、サッと足を出した。避けようと身体ごと後ろへ引いた彼の胸を、模擬剣の柄でトンッと押し、倒れた彼の手の模擬剣を蹴飛ばした。
剣先を喉元へ突き付ける。

一丁上がり。
「打ち合うまでも無かったな。」
怒っていたので、せせら笑ってしまう。
そのまま帰ろうとした瞬間。

「ジキスムント、捕まえろ!」
金髪君の声と共に、いつの間に近づいていたのか、、、ジキスムント君が私の喉に剣先を向けていた。

え?

試合でしょ?なんで?戸惑う私に、ジキスムント君が厳しい顔で言う。

「ライムンド、剣を離して跪け。」
「どうして・・・」

「この方はフェリクス皇太子殿下だ。そして俺は皇家の盾、ロイス侯爵家のジキスムント・ベルンハルト。いくら知らなかったとは言え、お前の行為は、俺には見過ごせない。跪いて許しを請うんだ。」


ジキスムント君、君は、今まで黙っていたのに、ここで名乗るんだ、、、。
こんな、一番身分差を出されると何も言えないところで。

私の心が、スーッと醒めていく。

沈黙をどう取ったのか。
口調を和らげてジキスムント君は言った。
「止められなかった俺も一緒に謝ろう。だから、」


「・・・もういい。分かった。」

私は模擬剣を置くと、そのままスッと跪いた。
「恐れ多くも皇太子殿下とは露知らず、大変なご無礼を致しました。」
「物知らずな侍従見習いとのひと時の戯れと思い、どうぞ寛大な御処置を賜りますよう。」
一層深く身を屈める。

「ふん!この、身の程知らずが。」
立ち上がっていたらしい金髪君、、、フェリクス皇太子殿下が憎々しげに言った。
と、同時にガッと衝撃が来て、私は肩を押さえて尻餅をつく。
「っ痛!」

立ち上がる時、私の置いた模擬剣を拾っていたらしい殿下が、肩を突いてきたのだ。

蹲る私。
ジキスムント君が殿下に駆け寄る足音がした。
「いけません!殿下」
「やめろ、止めるな!」
「ライムンド、早く行け!」

痛みを堪えて顔を上げると。
暴れる殿下を後ろから羽交い締めにしているジキスムント君がいた。

今のうちに逃げよう。

私は立ち上がると、後も見ずに走った。途中、白金髪の二人が、呆気にとられて突っ立ってるところを通ったけど。
睨みつけたら、ビクッとしたのでそのまま走る。

片手で壁をよじ登るのは辛かったけど、バーベンベルクで城の屋根を越えるのに比べればなんてことない。

登って振り返ると。
四人がこっちを見ていた。
一人は憎々しげに。
一人は困惑して。
二人は呆然と。

友だちになれたら良いなと思っていたのに。

少なくとも一人は友だちだと思ってたのに。

私は大きな声で叫んだ。
「殿下、皆さま。もう、二度と此処には来ませんから、どうぞご安心を。」
そして、ジキスムント君に視線を当てる。
「赤毛の君!」
ハッと目を見開いた、そう君だよ。
「君の手を取らなくて良かった。さようなら!」

「あ、待て、おい、ライムンド!」
ジキスムント君が叫んでる。
そう言えば、ジキスムント君は私の名を呼んだけど、私は彼の名を呼んだこと無かったな。まあ、良かったんだ、これで。

私は振り返らずに、サッと茂みに入って、彼らの前から永遠に消えた。
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