帝国最強(最凶)の(ヤンデレ)魔導師は私の父さまです

波月玲音

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皇宮での邂逅

この人には敵わない(アルフレート視点)

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ディーを魔導師団長執務室付属の寝室に送り、使い魔を復活させて見守らせる。
部屋にも厳重に結界を張ってから、私は兄上に向き直った。

「さて、」
先ほどまでの激しさは綺麗に消し、一転、厳しい宰相の表情で、問われる。

「被害の状況と対策は?」
「動かしたのは皇宮の載っている台地だけですから、ノイエ河より向こう帝都に被害は無い筈です。」
「良く抑えたな。」
流石にホッとした表情だ。
一旦崩れて人の目に触れた物を不自然に直すわけにはいかない。ムダな復興予算をつける苦労が減ってホッとしたと言ったところか。

宰相執務室ここを見る限り、実質的な被害は無さそうだが、他の建物もそうなのか?」
「思ったより脆い建物ばかりで面倒でしたが、最後の揺り戻しを使って元に戻しました。」
「お前なぁ。」
呆れた顔をされる。
「最後にお前が皇宮を揺らしたのは、もう二十年以上前だ。劣化するのは仕方ないだろう?」
「分かってます。騒動のお詫びに、多少は直してもおきましたので。」
そう。怒りの波動で揺らした皇宮の建物群は思っていたよりも脆く、危うく全壊してしまいそうだったのだ。
仕方がないので揺り戻しを装い、いくつかの建物は物質の素材の部分まで遡って組成し直した。これで今後数十年の補修費用が減るから、宰相閣下も万々歳だろう。

「予算が楽になるな。気遣い助かるよ、魔導師団長殿。」
宰相の顔を綻ばせる。私の意図は正確に受け取られたようだ。
やはり兄上だ。私は軽く一礼した。
「ささやかな感謝を。」
「何を言うか。血を分けた兄弟ではないか。もちろん、有難く受け取るが。」
取り敢えずの懸案が無くなったからか、宰相から兄上の顔になって屈託無く笑う。

「久しぶりに男に触れられました。」
殴られた頰、、、もうすっかり元通りになってしまった、、、に手を当てながら言うと、兄上は苦笑いした。
「男とは・・・相変わらずの人嫌いだな。」
それに、と続ける。
「渾身の一撃だったのに。とは。」
殴った利き手を開いたり閉じたりしている。普段羽ペンより重いものは持たない兄上だ。
怪我させてしまったのだろうか?

「・・・昔から、兄上の拳は一切防御をしないで受ける、と決めてますから。」
久しぶりに痛みを感じました、と言うと、心配そうな眼差しになった。
「大丈夫なのか?」
「残念なことに、もうすっかり。」
言いながら、兄上の利き手をそっと取る。
「兄上のお手こそ、暴力には慣れないでしょうに。」
念のため治癒魔法を掛けると、少し目を見開いてから、ゆっくり目元を緩めた。
「何だかんだ言って、アルフは優しいな。」


「あーーーっ!!!」
突然無粋な声がしたと思うと、オリヴィエが割り込んで来た。
「父上も叔父さんも、美中年とは言え、オッさんが手を取り合って・・・気持ち悪いから止めてください!」

オリヴィエに触られそうになり、パッと手を離す。
「何だ。居たのか?」
冷たく言い放つと、オリヴィエはキーキー叫んだ。お前こそ、どこが宮中三大イケメンだ。品のない声を出して。
「叔父さん。忘れてませんか。困ったディーちゃんが始めに頼ったのは、なんですよ!」
「つまり、消して欲しいと言うことか?」
声を低めると、一瞬ギョッとし、それからまた騒ぎ出した。
「違います!感謝の気持ちは無いんですか!済まなかったな、オリヴィエ、お礼に何でも言うことを聞いてやるぞってね!ねえ、ラーナ、そう思わない?」
一人では分が悪いと思ったのか、ラーナを味方に付けようとする。

ああ、懐かしいと思った魔力は、彼女だったか。
「ラーナ、随分と久しぶりだ。今回は世話になったな。」
部屋の隅に静かに佇んでいた老女に声を掛けると、昔と変わらず穏やかな笑みを浮かべて一礼された。

「なんの。私は何もしておりませぬ。始める前に貴方様がいらしたのでな。」
でも、お陰様で、お元気なお姿を拝見出来て嬉しく存じます。

言いながら、今にも立ち去りそうな雰囲気に、慌てて近づく。
「・・・息災にしているのか?」
と言っても、話すこともない。
言葉の代わりに、彼女にも治癒魔法を掛けた。老いた身体は直せないが、関節や臓器など、弱ったところを丁寧に癒す。
ラーナは少し驚いた顔をしたあと、柔らかく笑んだ。
「このように優しい魔力を使われるとは。アルフ様は今、お幸せなのですな。」
お育てしたラーナは嬉しく思います。
そう言うと、彼女はさっさと公爵邸持ち場へ帰ってしまった。


「さて、オリヴィエ君。君の味方は居なくなったね。」
兄上が面白そうに言う。
たった一人の愛息子が私にいびられていると言うのに、兄上この人何ともないんだろうか?
内心首を傾げていると、オリヴィエはザッと後ずさって叫んだ。
「父上、酷いな!そもそも僕は父上の思惑に沿って頑張って動いていると言うのに!」
「私よりディーちゃんに頼られるお前が悪い。」
兄上、、、。
呆れて怒りが消えた私は、オリヴィエの方を向いて言った。
「私も兄上と同じ気持ちだ。だが、ディーはそうは思わないだろう。だから、感謝する。」
驚いた顔をするオリヴィエ。まさか私が本当に感謝するとは思わなかったらしい。

「何でも言う事を聞いてやるとは言わないが、困った時には言え。話くらい聞いてやる。」
「聞くだけかよ!」
相変わらず甥には冷たいな!と吐き捨てるが、あいつは分かっている。
私が話を聞くという事は、魔力で可能な事なら全ての解決を約束したと言うことを。
兄上も分かっているのだろう。ならば、と話を続けた。

「乗りかかった船だ。頼られたオリヴィエもこのままでは終われないだろう?当然、大事な娘を痛めつけられたアルフも。」
私は頷いた。元々、ディーやエレオノーレには内緒で、何かしらの報復はしようと思っていたのだ。
兄上は頷く私と、呆気にとられているオリヴィエを見て続ける。
「彼奴らも、もう小さい子供じゃない。あと少しで帝国学園にも入る身だ。ディーちゃんに痛い思いをさせた奴らに、自由な行動には責任が伴うということを分からせてやらないと。」
「彼奴らって・・・実行犯は皇太子殿下と近衛騎士団長の嫡男なんだろう?いいのか、父上?」
オリヴィエが真面目な顔をしたが。

「なあに、実害が無ければ良いんだ。まあ、宰相の案を聞いてくれ。」
兄上は真っ黒な笑みいい笑顔でウインクした。



ああ、この人には敵わない。あの顔を見る度に、私はそう思うのだ。
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