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皇宮での邂逅
起死回生の策はそんな事か、と思う俺はやっぱり傲慢なのか
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そっぽをむいた俺に老執事は穏やかな声で続けた。
「確かに。魔導師団長殿は一旦お怒りになれば、なんの躊躇いもなく帝都を崩壊させる方です。実際、お若い頃には帝都を一部壊したことが有るんですよ。」
まあ、それを機に、建国以来無計画に広がっていた市街地を区画整理したので、今日の綺麗な帝都が有るわけですが。
マルティンから衝撃的な話が出て、俺は驚いた。
「もしかして、二十年前にあった地震か!?」
突如帝都のみを揺らした地震は、皇宮の建つ丘の地下が震源地とされ、丘の麓を取り囲んでいた、建国時から建つ古い建物を軒並みなぎ倒したそうだ。
その辺りに依拠し、権威と権力をかさにきた古い神官勢力を一掃出来た、帝権に取っては恩寵のような地震。
災害対策や特別予算の立て方、都市計画の講義で聞いた地震が、魔導師団長の仕業だったとは!
「とんでもないな、、、。よく、無事だったな、俺。」
溜め息と共に呟いた声を拾ったマルティンが続けた。
「帝都と殿下をお救いしたのが、恐らくディアナ嬢でしょう。」
「なぜ?彼女が父親に言いつけたんじゃないのか?」
だから、魔導師団長に分かって、あの地震となったのでは?
そう言うと、老執事はやんわりと首を振った。
「魔導師団長殿は帝国全土を視界に収めてると聞いたことがあります。あの方はそう簡単に誤魔化せない。殿下とのやり取りの後、地震までは間があったのでしょう?恐らくディアナ嬢は父上に知られないで事を治めようとし、だがそれが叶わず知られてしまったとみるべきです。」
「そして怒りで地が揺れた・・・俺か?俺を標的にした地震だったのか?」
思わずブルっと身体が震えた。
だが、マルティンは首を振った。
「単なる怒りの波動でしょう。それも、惨事になる前に止まったのですから、ディアナ嬢は止めようとなさったはずです。」
そうでなければ今頃私たちは皆がれきの下ですよ。どうです?好ましい・常識的なご令嬢だと思いませんか?
時間差で起こった地震。あんなに大きな揺れだったのに、皇宮に傷一つ残さなかった。それはあの侍従見習い、、、もとい、ディアナ嬢が魔導師団長の暴走を止めたから、、、。
こいつの言い分は分かったし納得もした。つまり。
俺は今日何度目か分からない溜め息を付いた。
「すでに一度命を救われてるってことか。」
いじめた相手に庇われてる、、、俺、ほんとに情け無いな。もう、どんな顔して会えばいいか分からない、というか、正直あらゆる義務を投げ捨てて逃げたい。
でも、それでも。
皇太子として皇帝に誓ったのだから。
俺は頭を振って気持ちを切り替えた。
「分かった。お前に話した前提条件を訂正する。俺はディアナ嬢を傷つけ、嫌な思いをさせた上に、命を救われた借りがある状態で彼女の前に現れることになる。」
そして、求婚する。
「さあ、俺に起死回生の策はあるのか?」
半ばやけくそで尋ねた俺に、マルティンは穏やかに笑んだ。
「策はあります。殿下にやる気がありさえすればですが。」
策が、有る、だと?
俺は思わずマルティンに詰め寄った。
「ほんとか?後からやっぱり無理でしたでは済まないんだぞ!?」
だが、老執事の笑みは揺るがなかった。
「策はあるのです。但し、成功するかどうかは殿下次第です。」
「・・・俺?」
思わず首を傾げた。なんであれ、成功すべくやるに決まってる。
そう言うと、マルティンはわずかに困ったように笑んだ。
「ただ、成功するためにすれば良いと言うものでは無いのです。殿下のお気持ちが問われると言いますか、・・・」
「言ってみろ。やり遂げて見せるから。」
さあ言え。
詰め寄った俺に、マルティンは一言、答えた。
「殿下の誠心誠意でもって、お二人に謝罪するのです。」
しゃざい、、、謝罪?謝れって言ってるのか?
そん、な、ことが、起死回生策?
「お前、ふざけてるのか?」
俺はイラっとして、つい声を荒げてしまった。謝れば済むって、そんな話してないだろ?
だが、マルティンは俺のイラつきを受けて、スッと表情を改めた。
今までの温和な態度が一転、冷たいとも評せる冷静さで言葉を紡ぐ。
「そのようなお気持ちでは、この策は失敗します。私もお役には立てないでしょう。」
「な、なんだって。お前、この期に及んで見捨てるのか?」
相手の態度が一変したことに驚くと同時に腹立たしさが募り、言い募る。
すると、なんとマルティンは頷いた。見捨てるって言うんだな!
怒りに二の句が継げない俺に、マルティンは冷たく続けた。
「大体、さっきからなんですか?殿下はいけないことをなさった、相手を傷つけたとは仰りながら、謝ろうという発言が全くございません。傷つけた、でも求婚はする。なんとかしろ。これでは相手の方のお気持ちへのご配慮が全くない。傲慢の一言に尽きます。
こちらに非があるのです。受け入れて貰えなくとも、まずは誠意を込めた謝罪をする。可能なら、受け入れて貰えるまで、何度も気持ちを伝える。傷つけてしまった関係は、そうして初めて修復されるのです。」
「もしいい加減な謝罪をして、過ぎたことにしようとするなら、殿下の評価は地に落ち、求婚どころか相まみえる機会も二度と得られないでしょう。」
単なる言葉では無い、だから殿下次第と申し上げたのです。
皇太子宮付きの執事。控えめだが、いつも温かく穏やかな人物の冷たい声音。
出来なければ見捨てるとまで言う、その態度に、俺はスッと憤りが消えるのを感じた。
ああ、ここは肝心な場所だ。
間違えていはいけない場面なんだ。
怒りは判断力を狂わせる。
些末な感情に捕らわれるな、静まれ、俺。
「確かに。魔導師団長殿は一旦お怒りになれば、なんの躊躇いもなく帝都を崩壊させる方です。実際、お若い頃には帝都を一部壊したことが有るんですよ。」
まあ、それを機に、建国以来無計画に広がっていた市街地を区画整理したので、今日の綺麗な帝都が有るわけですが。
マルティンから衝撃的な話が出て、俺は驚いた。
「もしかして、二十年前にあった地震か!?」
突如帝都のみを揺らした地震は、皇宮の建つ丘の地下が震源地とされ、丘の麓を取り囲んでいた、建国時から建つ古い建物を軒並みなぎ倒したそうだ。
その辺りに依拠し、権威と権力をかさにきた古い神官勢力を一掃出来た、帝権に取っては恩寵のような地震。
災害対策や特別予算の立て方、都市計画の講義で聞いた地震が、魔導師団長の仕業だったとは!
「とんでもないな、、、。よく、無事だったな、俺。」
溜め息と共に呟いた声を拾ったマルティンが続けた。
「帝都と殿下をお救いしたのが、恐らくディアナ嬢でしょう。」
「なぜ?彼女が父親に言いつけたんじゃないのか?」
だから、魔導師団長に分かって、あの地震となったのでは?
そう言うと、老執事はやんわりと首を振った。
「魔導師団長殿は帝国全土を視界に収めてると聞いたことがあります。あの方はそう簡単に誤魔化せない。殿下とのやり取りの後、地震までは間があったのでしょう?恐らくディアナ嬢は父上に知られないで事を治めようとし、だがそれが叶わず知られてしまったとみるべきです。」
「そして怒りで地が揺れた・・・俺か?俺を標的にした地震だったのか?」
思わずブルっと身体が震えた。
だが、マルティンは首を振った。
「単なる怒りの波動でしょう。それも、惨事になる前に止まったのですから、ディアナ嬢は止めようとなさったはずです。」
そうでなければ今頃私たちは皆がれきの下ですよ。どうです?好ましい・常識的なご令嬢だと思いませんか?
時間差で起こった地震。あんなに大きな揺れだったのに、皇宮に傷一つ残さなかった。それはあの侍従見習い、、、もとい、ディアナ嬢が魔導師団長の暴走を止めたから、、、。
こいつの言い分は分かったし納得もした。つまり。
俺は今日何度目か分からない溜め息を付いた。
「すでに一度命を救われてるってことか。」
いじめた相手に庇われてる、、、俺、ほんとに情け無いな。もう、どんな顔して会えばいいか分からない、というか、正直あらゆる義務を投げ捨てて逃げたい。
でも、それでも。
皇太子として皇帝に誓ったのだから。
俺は頭を振って気持ちを切り替えた。
「分かった。お前に話した前提条件を訂正する。俺はディアナ嬢を傷つけ、嫌な思いをさせた上に、命を救われた借りがある状態で彼女の前に現れることになる。」
そして、求婚する。
「さあ、俺に起死回生の策はあるのか?」
半ばやけくそで尋ねた俺に、マルティンは穏やかに笑んだ。
「策はあります。殿下にやる気がありさえすればですが。」
策が、有る、だと?
俺は思わずマルティンに詰め寄った。
「ほんとか?後からやっぱり無理でしたでは済まないんだぞ!?」
だが、老執事の笑みは揺るがなかった。
「策はあるのです。但し、成功するかどうかは殿下次第です。」
「・・・俺?」
思わず首を傾げた。なんであれ、成功すべくやるに決まってる。
そう言うと、マルティンはわずかに困ったように笑んだ。
「ただ、成功するためにすれば良いと言うものでは無いのです。殿下のお気持ちが問われると言いますか、・・・」
「言ってみろ。やり遂げて見せるから。」
さあ言え。
詰め寄った俺に、マルティンは一言、答えた。
「殿下の誠心誠意でもって、お二人に謝罪するのです。」
しゃざい、、、謝罪?謝れって言ってるのか?
そん、な、ことが、起死回生策?
「お前、ふざけてるのか?」
俺はイラっとして、つい声を荒げてしまった。謝れば済むって、そんな話してないだろ?
だが、マルティンは俺のイラつきを受けて、スッと表情を改めた。
今までの温和な態度が一転、冷たいとも評せる冷静さで言葉を紡ぐ。
「そのようなお気持ちでは、この策は失敗します。私もお役には立てないでしょう。」
「な、なんだって。お前、この期に及んで見捨てるのか?」
相手の態度が一変したことに驚くと同時に腹立たしさが募り、言い募る。
すると、なんとマルティンは頷いた。見捨てるって言うんだな!
怒りに二の句が継げない俺に、マルティンは冷たく続けた。
「大体、さっきからなんですか?殿下はいけないことをなさった、相手を傷つけたとは仰りながら、謝ろうという発言が全くございません。傷つけた、でも求婚はする。なんとかしろ。これでは相手の方のお気持ちへのご配慮が全くない。傲慢の一言に尽きます。
こちらに非があるのです。受け入れて貰えなくとも、まずは誠意を込めた謝罪をする。可能なら、受け入れて貰えるまで、何度も気持ちを伝える。傷つけてしまった関係は、そうして初めて修復されるのです。」
「もしいい加減な謝罪をして、過ぎたことにしようとするなら、殿下の評価は地に落ち、求婚どころか相まみえる機会も二度と得られないでしょう。」
単なる言葉では無い、だから殿下次第と申し上げたのです。
皇太子宮付きの執事。控えめだが、いつも温かく穏やかな人物の冷たい声音。
出来なければ見捨てるとまで言う、その態度に、俺はスッと憤りが消えるのを感じた。
ああ、ここは肝心な場所だ。
間違えていはいけない場面なんだ。
怒りは判断力を狂わせる。
些末な感情に捕らわれるな、静まれ、俺。
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