帝国最強(最凶)の(ヤンデレ)魔導師は私の父さまです

波月玲音

文字の大きさ
108 / 241
皇宮での邂逅

起死回生の策はそんな事か、と思う俺はやっぱり傲慢なのか

しおりを挟む
そっぽをむいた俺に老執事は穏やかな声で続けた。
「確かに。魔導師団長殿は一旦お怒りになれば、なんの躊躇いもなく帝都を崩壊させる方です。実際、お若い頃には帝都を一部壊したことが有るんですよ。」
まあ、それを機に、建国以来無計画に広がっていた市街地を区画整理したので、今日の綺麗な帝都が有るわけですが。
マルティンから衝撃的な話が出て、俺は驚いた。
「もしかして、二十年前にあった地震か!?」
突如帝都のみを揺らした地震は、皇宮の建つ丘の地下が震源地とされ、丘の麓を取り囲んでいた、建国時から建つ古い建物を軒並みなぎ倒したそうだ。
その辺りに依拠し、権威と権力をかさにきた古い神官勢力を一掃出来た、帝権に取っては恩寵のような地震。
災害対策や特別予算の立て方、都市計画の講義で聞いた地震が、魔導師団長の仕業だったとは!
「とんでもないな、、、。よく、無事だったな、俺。」
溜め息と共に呟いた声を拾ったマルティンが続けた。
「帝都と殿下をお救いしたのが、恐らくディアナ嬢でしょう。」
「なぜ?彼女が父親に言いつけたんじゃないのか?」
だから、魔導師団長に分かって、あの地震となったのでは?
そう言うと、老執事はやんわりと首を振った。
「魔導師団長殿は帝国全土を視界に収めてると聞いたことがあります。あの方はそう簡単に誤魔化せない。殿下とのやり取りの後、地震までは間があったのでしょう?恐らくディアナ嬢は父上に知られないで事を治めようとし、だがそれが叶わず知られてしまったとみるべきです。」
「そして怒りで地が揺れた・・・俺か?俺を標的にした地震だったのか?」
思わずブルっと身体が震えた。
だが、マルティンは首を振った。
「単なる怒りの波動でしょう。それも、惨事になる前に止まったのですから、ディアナ嬢は止めようとなさったはずです。」
そうでなければ今頃私たちは皆がれきの下ですよ。どうです?好ましい・常識的なご令嬢だと思いませんか?

時間差で起こった地震。あんなに大きな揺れだったのに、皇宮に傷一つ残さなかった。それはあの侍従見習い、、、もとい、ディアナ嬢が魔導師団長の暴走を止めたから、、、。
こいつの言い分は分かったし納得もした。つまり。
俺は今日何度目か分からない溜め息を付いた。
「すでに一度命を救われてるってことか。」
いじめた相手に庇われてる、、、俺、ほんとに情け無いな。もう、どんな顔して会えばいいか分からない、というか、正直あらゆる義務を投げ捨てて逃げたい。
でも、それでも。
皇太子として皇帝に誓ったのだから。
俺は頭を振って気持ちを切り替えた。
「分かった。お前に話した前提条件を訂正する。俺はディアナ嬢を傷つけ、嫌な思いをさせた上に、命を救われた借りがある状態で彼女の前に現れることになる。」
そして、求婚する。
「さあ、俺に起死回生の策はあるのか?」

半ばやけくそで尋ねた俺に、マルティンは穏やかに笑んだ。
「策はあります。殿下にやる気がありさえすればですが。」



策が、有る、だと?
俺は思わずマルティンに詰め寄った。
「ほんとか?後からやっぱり無理でしたでは済まないんだぞ!?」
だが、老執事の笑みは揺るがなかった。
「策はあるのです。但し、成功するかどうかは殿下次第です。」
「・・・俺?」
思わず首を傾げた。なんであれ、成功すべくやるに決まってる。
そう言うと、マルティンはわずかに困ったように笑んだ。
「ただ、成功するためにすれば良いと言うものでは無いのです。殿下のお気持ちが問われると言いますか、・・・」
「言ってみろ。やり遂げて見せるから。」
さあ言え。
詰め寄った俺に、マルティンは一言、答えた。
「殿下の誠心誠意でもって、お二人に謝罪するのです。」


しゃざい、、、謝罪?謝れって言ってるのか?
そん、な、ことが、起死回生策?
「お前、ふざけてるのか?」
俺はイラっとして、つい声を荒げてしまった。謝れば済むって、そんな話してないだろ?
だが、マルティンは俺のイラつきを受けて、スッと表情を改めた。
今までの温和な態度が一転、冷たいとも評せる冷静さで言葉を紡ぐ。
「そのようなお気持ちでは、この策は失敗します。私もお役には立てないでしょう。」
「な、なんだって。お前、この期に及んで見捨てるのか?」

相手の態度が一変したことに驚くと同時に腹立たしさが募り、言い募る。
すると、なんとマルティンは頷いた。見捨てるって言うんだな!
怒りに二の句が継げない俺に、マルティンは冷たく続けた。

「大体、さっきからなんですか?殿下はいけないことをなさった、相手を傷つけたとは仰りながら、謝ろうという発言が全くございません。傷つけた、でも求婚はする。なんとかしろ。これでは相手の方のお気持ちへのご配慮が全くない。傲慢の一言に尽きます。
こちらに非があるのです。受け入れて貰えなくとも、まずは誠意を込めた謝罪をする。可能なら、受け入れて貰えるまで、何度も気持ちを伝える。傷つけてしまった関係は、そうして初めて修復されるのです。」
「もしいい加減な謝罪をして、過ぎたことにしようとするなら、殿下の評価は地に落ち、求婚どころか相まみえる機会も二度と得られないでしょう。」

単なる言葉では無い、だから殿下次第と申し上げたのです。

皇太子宮付きの執事。控えめだが、いつも温かく穏やかな人物の冷たい声音。
出来なければ見捨てるとまで言う、その態度に、俺はスッと憤りが消えるのを感じた。

ああ、ここは肝心な場所だ。
間違えていはいけない場面なんだ。
怒りは判断力を狂わせる。
些末な感情に捕らわれるな、静まれ、俺。
しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

処理中です...