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皇宮での邂逅
老執事マルティンの質問(終)
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好ましい、常識的な人物?
なんで、そんな風に考えるのか?
本人と会って話して、意地悪をした俺ですら、よくよく思い返してみないと印象も掴めないのに。
「会っても無い、この状況説明だけで、なぜそう思うのか、聞いてもいいか?」
「よろしゅうございますが・・・出来ればまず殿下の印象を伺いたく存じます。」
そう言われてしまうと、答えない訳に行かない。
あいつ、いや、彼女はどんな感じだっただろうか?
俺は記憶を手繰り寄せ、考えつつ答える。
「初めて見かけたのは、近衛の訓練場だな。」
そう、二、三日様子のおかしいジキスムントが気になって、訓練場に残ったあいつを見に行ったら、知らない奴と試合をしていたんだ。
「あいつ、いや彼女は、小柄で華奢なくせにとにかく動きが速くて・・・あの身のこなしの素早さ、打ち込みの絶妙さ、一気に懐に入る度胸、負けた後の相手を引き込む笑顔・・・見惚れた、そして嫉妬したんだ。」
そう、俺は嫉妬した、、、正統な剣技には程遠いのに、あんなに楽しそうに、自在に剣を操る剣筋と、ジキスムントの懐に易々と入るその屈託のない明るさに。
「好きだった剣もいつの間にかつまらない義務になってる・・・友人一人自分で選ぶことも許されない・・・俺が出来なくて鬱々といていることを易々としている彼女に負けた気がして悔しくて、友人を取られそうで腹が立って。次に会う時は絶対にのしてやると思ったんだ。」
苦い思いを噛みしめながら言うと、マルティンは頷いた。
「失礼ながら申し上げれば、殿下の劣等感を刺激したと。」
「う・・・まあ、一言で言えば、そうだな。」
こいつ。身もふたもないな。
「剣もお強かった?」
「ああ。敵わなかった。あれが令嬢だとすると、俺は恥ずかしいな。」
そこは勝負がついてることなので潔く認める。
マルティンは微笑した。
「そう思われたのなら、これから努力なされば良いではありませんか。それより・・・ご性格は合いませんでしたか?」
性格、そうだな、、、。
考え考え、言葉を紡ぐ。
「合わないと言うより、全く違うと思う。俺はつい色々考えてしまうし、感情は隠してしまう方だが、あいつ、いや、彼女は、感じたままに素直に動くタイプだな。それと、これは、令嬢に使う言葉では無いが・・・勝ち気で頭の回転が早い。」
今でも、あの態度が女の、しかも貴族の令嬢のものとは思えない。
最後に、静かな声で聞かれた。
「違う・・・違う方に求婚者として向き合う事は、ご不快ですか?」
不快、だろうか?
あの時、彼女が、もしジキスムントではなく俺に、あの真っすぐな眼差しを向けていたら?
彼女が、あの屈託のない明るさで、俺のものを奪うのではなく、俺の懐に入ってくるのだとしたら?
「不快、では、無い。むしろ・・・」
好ましい。
俺は考え込んで自然に口を吐きそうだったこの言葉にぎょっとし、慌てて呑み込んだ。
ついさっきまで散々罵っていた相手だ。いくら何でも調子よすぎるだろ、俺。
、、、大体、今更好ましく思ったとして。
彼女があの真っ直ぐな眼差しを俺に向ける事は、無いだろう。俺は彼女に負けたうえ、無抵抗な状態で模擬剣で突いたんだ。
ああ、あの時はスカッとしたなんて思ったけど、俺はなんて下種なことをしてしまったんだ、、、あの時の俺をぶん殴りたい。
この状態で彼女に絶対断られてはいけない求婚をするのか、俺、、、。
「ふうっ」
言葉は何とか留められたけど、ため息は零れてしまった。
執事歴の長いマルティンには、それで十分だったようだ。
「宜しゅうございました。」
穏やかに微笑まれた。
「いくら皇太子の義務とは言え、好ましくない方に求婚なさるのはお辛いでしょうから。」
「分かったような顔しやがって。さっきの話だと、俺は彼女だけじゃない、魔導師団長の逆鱗にも触れたわけだろ?求婚以前に、殺られるかもしれない。変装を解いた彼女に会わせてもらえるかも分からないんだぞ。」
「魔導師団長殿はともかく、ディアナ嬢は好ましい、常識的な方だと申し上げましたでしょう。そのようなことにはならないかと。」
「だから、会ってもいないのに、なんでそんな風に思えるんだ?」
俺はフイッと目を逸らしながら、お前の返事を聞いてないぞ、とぶっきらぼうにつぶやいた。
なんで、そんな風に考えるのか?
本人と会って話して、意地悪をした俺ですら、よくよく思い返してみないと印象も掴めないのに。
「会っても無い、この状況説明だけで、なぜそう思うのか、聞いてもいいか?」
「よろしゅうございますが・・・出来ればまず殿下の印象を伺いたく存じます。」
そう言われてしまうと、答えない訳に行かない。
あいつ、いや、彼女はどんな感じだっただろうか?
俺は記憶を手繰り寄せ、考えつつ答える。
「初めて見かけたのは、近衛の訓練場だな。」
そう、二、三日様子のおかしいジキスムントが気になって、訓練場に残ったあいつを見に行ったら、知らない奴と試合をしていたんだ。
「あいつ、いや彼女は、小柄で華奢なくせにとにかく動きが速くて・・・あの身のこなしの素早さ、打ち込みの絶妙さ、一気に懐に入る度胸、負けた後の相手を引き込む笑顔・・・見惚れた、そして嫉妬したんだ。」
そう、俺は嫉妬した、、、正統な剣技には程遠いのに、あんなに楽しそうに、自在に剣を操る剣筋と、ジキスムントの懐に易々と入るその屈託のない明るさに。
「好きだった剣もいつの間にかつまらない義務になってる・・・友人一人自分で選ぶことも許されない・・・俺が出来なくて鬱々といていることを易々としている彼女に負けた気がして悔しくて、友人を取られそうで腹が立って。次に会う時は絶対にのしてやると思ったんだ。」
苦い思いを噛みしめながら言うと、マルティンは頷いた。
「失礼ながら申し上げれば、殿下の劣等感を刺激したと。」
「う・・・まあ、一言で言えば、そうだな。」
こいつ。身もふたもないな。
「剣もお強かった?」
「ああ。敵わなかった。あれが令嬢だとすると、俺は恥ずかしいな。」
そこは勝負がついてることなので潔く認める。
マルティンは微笑した。
「そう思われたのなら、これから努力なされば良いではありませんか。それより・・・ご性格は合いませんでしたか?」
性格、そうだな、、、。
考え考え、言葉を紡ぐ。
「合わないと言うより、全く違うと思う。俺はつい色々考えてしまうし、感情は隠してしまう方だが、あいつ、いや、彼女は、感じたままに素直に動くタイプだな。それと、これは、令嬢に使う言葉では無いが・・・勝ち気で頭の回転が早い。」
今でも、あの態度が女の、しかも貴族の令嬢のものとは思えない。
最後に、静かな声で聞かれた。
「違う・・・違う方に求婚者として向き合う事は、ご不快ですか?」
不快、だろうか?
あの時、彼女が、もしジキスムントではなく俺に、あの真っすぐな眼差しを向けていたら?
彼女が、あの屈託のない明るさで、俺のものを奪うのではなく、俺の懐に入ってくるのだとしたら?
「不快、では、無い。むしろ・・・」
好ましい。
俺は考え込んで自然に口を吐きそうだったこの言葉にぎょっとし、慌てて呑み込んだ。
ついさっきまで散々罵っていた相手だ。いくら何でも調子よすぎるだろ、俺。
、、、大体、今更好ましく思ったとして。
彼女があの真っ直ぐな眼差しを俺に向ける事は、無いだろう。俺は彼女に負けたうえ、無抵抗な状態で模擬剣で突いたんだ。
ああ、あの時はスカッとしたなんて思ったけど、俺はなんて下種なことをしてしまったんだ、、、あの時の俺をぶん殴りたい。
この状態で彼女に絶対断られてはいけない求婚をするのか、俺、、、。
「ふうっ」
言葉は何とか留められたけど、ため息は零れてしまった。
執事歴の長いマルティンには、それで十分だったようだ。
「宜しゅうございました。」
穏やかに微笑まれた。
「いくら皇太子の義務とは言え、好ましくない方に求婚なさるのはお辛いでしょうから。」
「分かったような顔しやがって。さっきの話だと、俺は彼女だけじゃない、魔導師団長の逆鱗にも触れたわけだろ?求婚以前に、殺られるかもしれない。変装を解いた彼女に会わせてもらえるかも分からないんだぞ。」
「魔導師団長殿はともかく、ディアナ嬢は好ましい、常識的な方だと申し上げましたでしょう。そのようなことにはならないかと。」
「だから、会ってもいないのに、なんでそんな風に思えるんだ?」
俺はフイッと目を逸らしながら、お前の返事を聞いてないぞ、とぶっきらぼうにつぶやいた。
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