帝国最強(最凶)の(ヤンデレ)魔導師は私の父さまです

波月玲音

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皇宮での邂逅

殿下に謝ってもらいました?

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つまり。
殿下は、どうやってかは分からないけど、ライムンドが仮の姿かも知れないと知って。
でも、それをそのまま追求するんじゃなくて、私がどうありたいかを尊重してくれると言うのね。

うーん。
あんまり待たせる訳には行かないけど、ちゃんと考えなきゃ。
今、ディアナとしてこの格好で殿下と挨拶するのは、、、イヤだな。
あの感じなら、罪に問われる事はないだろうけど、でも、何でそんなことをしたのか、誰が知ってたのか、て話にはなるよね。
説明も面倒だし、せっかく残ったあと少しの自由時間を、魔導師団で気ままに過ごせなくなっちゃう。
父さまが黙ってるってことは、私がどっちで答えても、味方してくれるってことよね?
それなら。

私は、さっきから隙なく見つめてくる殿下の眼差しを一度しっかり受け止めると、スッと頭を下げた。
「殿下。」
これが私の答えです。

「どなたから何を聞かれたのか分かりませんが、僕はライムンド。普段はバーベンベルク城で侍従見習いをしています。」
「辺境伯閣下が帝都に来られるまでの間、ご不便を強いられているアルフレートさまのお世話をする為に、今は魔導師団で侍従見習いをしています。」
「先日はきちんとしたご挨拶をしないまま、失礼を致しました。」

一気に言って、侍従として、目上の相手に対する最上級の礼を取る。
私はライムンドとして貴方に会ったんだもの。ライムンドに謝って欲しいわ。

さあ、この私に、殿下はどんな『謝罪』をしてくれるの?



頭を下げたままの私の頭上で、フッと溜め息が聞こえた。
「・・・それが、君の答えなんだね?」
問いかけの形を取って、でも答えを求めない呟きを洩らすと。
殿下は一転、ハッキリとした口調で、私に頭を上げるよう声を掛けた。

今度は、頭を上げても殿下と目は合わせない。
少し俯いた私に、殿下は皇太子然と告げた。
「先日は、俺の学友との語らいの途中に割り込んで失礼をした。個人的関係プライベートに身分を持ち込むのは、俺としても本意ではない。また、思い返せば、その際、誤解から行き過ぎた行為もあった。俺も以降は気を付ける、許せ。」
こちらも一気に言って、顔を上げるよう、再度促す。
思い切って顔を上げると、、、殿下は先ほどまでの真剣な表情とは一転し、とっても傲慢なドヤ顔をしていた。

殿下の通常仕様の謝罪はこんな感じなのね、、、。予想してたけど、とても謝ってるようには見えないわ。
私が沈黙したまま目を丸くしていると。
傲慢な素振りのまま、殿下の顔がだんだん青ざめてきた。
「し、仕方ないだろ。お前は今なんだろう?だったら。皇太子たる俺の謝罪なんてこんなもんだ。だから始めに何度も聞いただろう・・・」
殿下の言葉が知りすぼみになるのと、私の後ろからもの凄い勢いで火花が飛び散ってくるのが同時だった。
「!」
慌てて振り返ると、父さまが身体中から火花を撒き散らしながら、無言で腕組みをしている。
どうやら必死で魔力を押さえてるみたい。
「父さま、落ち着いて!」
私は慌てて父さまに抱き付くと叫んだ。
「大丈夫なの。こう言う謝罪になるだろうって思ってたから。でもそれでも、このままの方がもう少し父さまと二人で過ごせるからいいな、と思って選んだんだから!」
「ッ!ディー!!」

父さまにギューギュー抱きしめられながら、私は恐る恐る殿下の方を振り返る。

殿下は、ぽかん、と口を開けて固まっていた。

今の、聞いてたよね?
私、父さま、て言っちゃったし、父さまはディー、て叫んだよね、、、。

火花が落ち着いたところで、殿下もやっと戻ってきた。
物凄く気まずそうにして、目をうろうろさせている。

そりゃそうよね。
せっかく私の気持ちを尊重して、ライムンドとして扱ってくれたのに、私と父さまが台無しにしちゃった訳だし、、、今でも父さまは私を背中から抱きしめて離さないし。
気まずいのは私の方だよ、、、。
でも、取り敢えずこの状況を何とかしなくちゃ。

「「えっと」」
二人ともそっぽを向いていたのに、揚げた声もタイミングも一緒で、思わず目が合う。
「「あ、、、」」
また、被った。
「フフッ」
「ハハッ」
笑い声は違うけど、タイミングはやっぱり一緒で。
私たちは思わず笑い合ってしまった。

「さて」
さっぱりした表情の殿下が、話しかけてくる。
「取り敢えず、侍従見習いで良いのか?」
この状況を見逃してくれるのかな?良いところあるじゃない、殿下。
「はい。そうしてもらえると、助かります。」
私がにっこりしながら答えると、殿下はちょっと目を見開いてから、視線を下げて、うん、と考え込んだ。
「そうか・・・そうだな、その方が、俺も良いな。」
考えがまとまったのか、視線を上げて私を見て、、、ニヤッと悪戯っぽく笑う。
「分かった。だが、その代わり、一つ、頼みがある。」
えー?良いところあると思ったのに、条件付き?
「・・・何でしょう?」
警戒心も顕に聞き返すと、殿下は楽しそうに答えた。
「お前、まだ少し皇宮に居るだろう?その間だけで良いから、お前の剣を教えてくれ。」
まさか侍従見習いが、皇太子の願いを断らないだろう、と押し込んでくる。
私は口を尖らせた。
「先ほど、個人的な関係プライベートに身分を持ち込むのは本意ではない、て仰いましたよね。」
「う、そうだったな・・・」
ハッとして、気まず気に視線を外す殿下。
「だけど、俺は、お前の剣に興味があって・・・あ、でも無理強いになるのか・・・」
見ていると、だんだんしょんぼりしてくるのが分かる。
素直じゃないんだよね。でも、、、
「良いですよ。殿下。」
私は、仕方ないな、と笑って言った。
父さまが肩を抱く手に力を込めるから、その手をそっと握って見上げ、大丈夫、とささやいて。
「他ならぬ皇太子殿下のお頼みですからね。侍従見習いとしては、お仕事の合間になりますが、それで良ければ殿下のお相手を致します。」
殿下の方を向くと、殿下はサッと目を背けた。
なに、その態度。やっぱりやめよっかな~。
ちょっとムッとしてると。
「フェリクス」
「?」
「俺の名前はフェリクスだ。侍従見習いとは言え、一緒に剣を学ぶなら、それは友人だからな。特別に名前で呼ぶのを許してやる。」
早口で捲し立てると、ふん、と顎を上げた。
でも、少し頬が紅潮している。

素直じゃないんだよね、ほんとに。でも、、、。
「では、仰せのままに。フェリクス様。」
私がやれやれ、と呼びかけると。
彼は花が綻ぶように、笑った。




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