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皇宮での邂逅

強制転移させられました

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名前を呼んだだけでこの笑顔。
素直じゃないんだけど、ほんとに、でも、、、。

私はキラキラ輝く殿下の髪に付いていた葉っぱを摘むと、くすっと笑った。

「付いてましたよ、フェリクス様。」
まだお茶会が続くのに、こんなもの付けてちゃ、せっかくのキラキラ殿下が台無しですよ?
少し小首を傾げてからかうと、、、あれ?殿下ったら、笑顔のまま固まってしまった。

「?殿下・・・」
じわじわと赤くなっていくその顔に、何事かと心配になって覗き込もうとした時。

「そこまでだ。」
突然、聞いたことがないくらい低い父さまの声がして、、、。
私は次の瞬間魔導師団長執務室のソファの上にポンッと座っていた。



「おっ!?」
「びっくりさせるなよ、嬢ちゃん!」
周りで声がするのに驚いて見回すと、エルンストさんとオリヴィエ兄さまが、執務机の前に立っていた。
午前中にきれいにした机には、見事に書類の山が出来ていた。オリヴィエ兄さまも片手に書類の束を持っているから、多分仕事の話途中だったのかな?

「お仕事中すみません・・・」
取り敢えず謝ると、二人は近寄ってきた。
「なになに?転移してきたってことは、叔父さんと一緒だったの?」
「て事は、団長と仲直りしたんですね?団長は回復したって事ですか!?何処にいるんです!!?」
オリヴィエ兄さまとエルンストさんに問い詰められ、答えながら、状況を整理する。
初めは楽しそうに、鬱陶しそうに話を聞いていた二人は、謝罪をする云々くらいから、徐々に顔色が悪くなってきた。殿下の名前を呼んだ話までくると、くず折れるようにソファに座り込む。

「・・・それじゃあ、今、殿下は叔父さんと二人っきりなの?」
オリヴィエ兄さまが恐る恐る聞いてくる。
「あ、はい、多分そうだと思います。」
二人で話したいって、殿下も言っていたしね。
「聞くまでもないけど、団長の機嫌は・・・」
エルンストさんの声が震えてる。
あ、仕事に直結しますよね。
「う、ごめんなさい。今まで聞いたことないくらい低い声がしたと思ったらここに居たから、あんまり良くないと・・・」

お仕事また沢山来たのにすみません、と言いながら二人を見上げると。
二人は真っ青になって顔を見合わせていた。
「大変だ・・・」
いつものんびりしているオリヴィエ兄さまが呟くなり、
「ディーちゃん、とにかく庭に戻って!」と叫んで私の腕を掴もうとした。
でも。
「チッ、ダメか!」
父さまはやっぱり私に若い異性が触れられない魔術を掛けてるみたい。
「これじゃあ俺は転移出来ない!あ、エル、お前は?」
「お、おう、」
ちょっと微妙な顔をしたエルンストさんが私の腕を掴んで、、、
「ダメだ。団長の結界のせいで座標が読めない。」
力なく手を離した。
「???」
何だか、まずい状況なの?
私が戸惑っていると。
「殿下が危ない!こんなところで帝国の危機とは・・・!取り敢えず僕は宰相閣下を呼んでくる!ディーちゃんはエルと走って噴水の庭に向かって!」
言うなりオリヴィエ兄さまはサッと消えてしまった。


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