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皇宮での邂逅
エピソードⅣ オリヴィエ兄さまは葛藤中Ⅲ
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まあ、結局のところ、何が言いたいのかと言うと。
悔しいけれど、、、叔父は本物の天才だったってことだ。
何とか鼻を明かしたくて、財政・軍事・治安・法律・行政と言った帝王学から、歴史、文学、音楽、礼儀作法などの教養、果ては帝都で流行っている恋愛小説から最近人気のカフェ、花街の人気妓女まで、質問しまくったけれど、、、叔父は面倒くさそうに、だけど誰よりも斬新で的確な答えをくれた。
まあ、妓女については、「子ども相手に何言ってんですか!」と途中で副官に遮られてしまったけれども。
どうしても消せない反発心と、澱のように溜まる劣等感を心の奥底に抱えながらも、僕はいつの間にか叔父の下に入り浸るようになっていった。
気付かないうちに、魅入られてしまったんだ。
だから、ある日。
「うん、いい感じになったね。もう大丈夫だ。ありがとう、恩に着るよ、アルフ。オリヴィエも、今までのお礼を言いなさい。」
「・・・いえ。兄上のお役に立てたなら。」
魔導師団長執務室にひょっこり現れた父上の一言と、あっさり受け入れた叔父の答えを聞いて、、、僕は、ひどくショックを受けた。
待って、なんでそんなにあっさり受け入れるんだ、、、。
慌てて叔父の視線を捕らえようとするけど、フッと目を逸らされる。
「ち、父上?どうして、急に・・・」
動揺で声が震えているのが分かったけど、制御出来ない。
そんな僕をジッと見て、笑わない瞳で父は言った。
「絶対的なものに魅入られてはダメだよ、オリヴィエ。今ならまだ、思春期前の少年の憧れと、ちょっとした依存で済む。これから学園に入学して自立した思考を持つ大人となるべく学ぶのだから、潮時なんだ。」
さあ、挨拶を。
促す父上の言葉に立ち上がったけれど。
「・・・これからは叔父と呼べ。」
向き合った叔父から、師匠と呼ぶことを暗に禁じられたことに気づいた僕は。
初めて父の言う事を聞かず、部屋を飛び出してしまった。
十三の夏、帝国学園に入学する直前のことだった。
それから程なく学園に入学した僕は、意外にも充実した学園生活を送ることになる。
思わぬ学問に精進した二年は僕の学力を飛躍的に高めたから、初めは学ぶことのない授業にうんざりしていたんだけど。
全寮制の学園には、親元には無い自由と、、、なにより、可愛い女の子が沢山いたんだ。
叔父を身近に見すぎてすっかり自意識が薄れてしまったけれど。
屋敷の外に出ても、やっぱり僕はキラキラの人気者だった。
むしろ、容姿端麗な名門公爵家の跡取りで卓越した学力と魔力。かと言ってそれらを鼻にかけるでもない僕は、言わば完全無欠の貴公子で。
叔父を僕の身近に置いたのはこういう効果も狙っていたのかと、その深謀遠慮と言うか腹黒さに父を見る目が変わったのも、この頃だった。
思春期の男女を敢えて同じ空間に置くのは、それなりに理由があることだ。
身分差を緩く設定した中で作る同性との人間関係は、大人になってからの人脈作りとは違う重さがあるし、まだ婚約をしていない者にとって、様々な機会に知り合う異性は、婚約者選びの対象となる。
と、言うわけで。
超優良物件の僕は、ここでも男女問わず本当にモテた。
思春期だったし、元々屋敷でも、メイドや母の元に集う熟年マダムに囲まれて、やや早熟な子供時代を過ごした僕だ。
親の監視もきつい課題もない学園で、僕は一線を超えない範囲で結構楽しい経験を積んでいった。
だから、三年が過ぎ、大学部に進むと同時に社交界にデビューした僕は、待ち構えてくれていたらしいマダム達に囲まれて、宮中三大イケメンとか、若手のホープとか言われてちやほやされて、すっかり大人の男として自信をつけた気に、なっていたんだ。
悔しいけれど、、、叔父は本物の天才だったってことだ。
何とか鼻を明かしたくて、財政・軍事・治安・法律・行政と言った帝王学から、歴史、文学、音楽、礼儀作法などの教養、果ては帝都で流行っている恋愛小説から最近人気のカフェ、花街の人気妓女まで、質問しまくったけれど、、、叔父は面倒くさそうに、だけど誰よりも斬新で的確な答えをくれた。
まあ、妓女については、「子ども相手に何言ってんですか!」と途中で副官に遮られてしまったけれども。
どうしても消せない反発心と、澱のように溜まる劣等感を心の奥底に抱えながらも、僕はいつの間にか叔父の下に入り浸るようになっていった。
気付かないうちに、魅入られてしまったんだ。
だから、ある日。
「うん、いい感じになったね。もう大丈夫だ。ありがとう、恩に着るよ、アルフ。オリヴィエも、今までのお礼を言いなさい。」
「・・・いえ。兄上のお役に立てたなら。」
魔導師団長執務室にひょっこり現れた父上の一言と、あっさり受け入れた叔父の答えを聞いて、、、僕は、ひどくショックを受けた。
待って、なんでそんなにあっさり受け入れるんだ、、、。
慌てて叔父の視線を捕らえようとするけど、フッと目を逸らされる。
「ち、父上?どうして、急に・・・」
動揺で声が震えているのが分かったけど、制御出来ない。
そんな僕をジッと見て、笑わない瞳で父は言った。
「絶対的なものに魅入られてはダメだよ、オリヴィエ。今ならまだ、思春期前の少年の憧れと、ちょっとした依存で済む。これから学園に入学して自立した思考を持つ大人となるべく学ぶのだから、潮時なんだ。」
さあ、挨拶を。
促す父上の言葉に立ち上がったけれど。
「・・・これからは叔父と呼べ。」
向き合った叔父から、師匠と呼ぶことを暗に禁じられたことに気づいた僕は。
初めて父の言う事を聞かず、部屋を飛び出してしまった。
十三の夏、帝国学園に入学する直前のことだった。
それから程なく学園に入学した僕は、意外にも充実した学園生活を送ることになる。
思わぬ学問に精進した二年は僕の学力を飛躍的に高めたから、初めは学ぶことのない授業にうんざりしていたんだけど。
全寮制の学園には、親元には無い自由と、、、なにより、可愛い女の子が沢山いたんだ。
叔父を身近に見すぎてすっかり自意識が薄れてしまったけれど。
屋敷の外に出ても、やっぱり僕はキラキラの人気者だった。
むしろ、容姿端麗な名門公爵家の跡取りで卓越した学力と魔力。かと言ってそれらを鼻にかけるでもない僕は、言わば完全無欠の貴公子で。
叔父を僕の身近に置いたのはこういう効果も狙っていたのかと、その深謀遠慮と言うか腹黒さに父を見る目が変わったのも、この頃だった。
思春期の男女を敢えて同じ空間に置くのは、それなりに理由があることだ。
身分差を緩く設定した中で作る同性との人間関係は、大人になってからの人脈作りとは違う重さがあるし、まだ婚約をしていない者にとって、様々な機会に知り合う異性は、婚約者選びの対象となる。
と、言うわけで。
超優良物件の僕は、ここでも男女問わず本当にモテた。
思春期だったし、元々屋敷でも、メイドや母の元に集う熟年マダムに囲まれて、やや早熟な子供時代を過ごした僕だ。
親の監視もきつい課題もない学園で、僕は一線を超えない範囲で結構楽しい経験を積んでいった。
だから、三年が過ぎ、大学部に進むと同時に社交界にデビューした僕は、待ち構えてくれていたらしいマダム達に囲まれて、宮中三大イケメンとか、若手のホープとか言われてちやほやされて、すっかり大人の男として自信をつけた気に、なっていたんだ。
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