帝国最強(最凶)の(ヤンデレ)魔導師は私の父さまです

波月玲音

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帝都のひと夏

匿ってしまいました

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曰く。

ユラン王国内部では、正妃の出身地であるオストマルク帝国との関係強化を進める王と、帝国の南にあるロンヌ王国との関係強化を訴える王弟が、お互いの支持基盤の貴族を巻き込み争っているのだそうだ。
今回、相互不可侵条約更新と、互恵的通商条約交渉のため、全権としてマックス殿下を帝都に派遣しようとしたところ、反対派から邪魔が入ったらしい。

「邪魔とは、どの程度の?」
母さまの質問にマックス殿下は「まあ、嫌がらせですね。」と淡々と答えた。
「視察に向かう馬車を引く馬の飼葉に興奮剤が混ぜてあって暴走したり、茶器に弱い毒が塗ってあったり、狩りの時誤って射殺されそうになったり。小細工が主なので半分脅しだと思いますが。」
本気なら、もっと分からないよう工夫すると思います。まあ、少なくとも僕はそうするな。
小首をかしげて言うことかしら?

「でもまあ、それで母が騒ぎましてね。辺境伯殿が近々帝都に上られるはずだから、一緒に行ってらっしゃいと、部下と秘密裡に通商団に放り込まれたわけです。」
お陰で帝国領に入るまでは襲撃らしい襲撃も無く済みまして。
にっこり。ライの顔で笑ってるのに笑みが黒い。この人も相当な腹黒さんなのかも。

「犯人の目星は?」ルー兄さまが問うと、うーん、と言って少し沈黙した。
王弟殿下叔父上の派閥も中は色々ありそうで。僕の異母弟のところも入ってると言えば入ってるし・・・特定出来ないまま出てきてしまったんだよね。」
えへへと笑うマックス殿下を、ルー兄さまは睨みつける。

「笑ってる場合か。殿下のせいで、ライを預けた通商団が襲われたというのに!」
しかも複数回。どうしてくれる!

語気も荒いルー兄さまに比べ、マックス殿下は飄々としている。
「うん。それ聞いたとき、やっぱりこっちに匿って貰って良かったって本当に思ったよ。」
母上の慧眼に感謝だな、なんて言ってるけど。

ライが?
「襲われたって・・・」
思わず声に出してしまったみたい。
「ああ、心配ないよ。ライは無事だ。一回目に襲撃された後、こっちの方から何人か護衛に回したしね。」
ルー兄さまは安心させるように頷いて、頭を撫でてくれた。そっか。無事で良かった、、、。
「ただ・・・面が割れた可能性はあるんだ。」
「どういうこと?」

どうやら通商団に居たのはライで、殿下では無いってことに気づかれたらしい。その証拠に、行程の後半では監視だけで全く襲われなくなったんだって。
代わりに、母さま達の一行に尾行がつき始めたらしい。
「まあ、こっちにも見た限りでは居ない訳だから、襲撃はして来なかったけどな。」
ルー兄さまが、五月蠅かったぞ、と溜め息を付けば、
「来た方が文句なく捕まえて尋問できたから、早かったんだけどな。」
少し隙を作ればよかったな、と母さまが苦笑して、父さまに文句を言われてる。

「まあそんな訳で帝都には無事着いたんだが。」
ただでさえきつい旅程を、誰かのせいで最後無理やり詰めたから、ほんと辛かったですよ、父上。
ルー兄さまが珍しくぼやけば、「尾行もついて来れなくて、結局撒いてしまったしな、、、」実は武闘派の母さまも残念そうに言う。父さまはフンッとそっぽを向いてから、、、それで、とマックス殿下を促した。

「無事、帝都に着いたんだろう?なぜここにいる。送らせるからさっさと大使館でも皇宮でも行け。」
それで無かったことにしてやろう。父さまが言うと。
「でも、僕の腹心は皆通商団と一緒ですし、一人で大使館や皇宮に行っても、誰が敵か味方かも・・・どうやって来たと言われても答えられないですし・・・」
心細そうに口籠ると。
通商団が来るまで匿ってくださいませんか?マックス殿下はそう言って頭を下げた。

部屋に沈黙が広がる。
父さまは明らかに機嫌を悪くしていて、西日も厳しい夏の夕暮れなのにひんやりとした冷気が漂い始めてるし、母さまもルー兄さまも難しい顔をしている。

私は俯くマックス殿下をそっと見た。肩が少し揺れてる気がするけど、若しかして震えてるのかな。
ライと一緒に通商団が来るまでは一人なんだ。はっきり味方と分かる人がいない状況で一人は怖いよね。

「父さま、母さま、ライの代わりに此処で過ごして貰いましょうよ。」
思い切って私が言うと。
「こら、ディー!勝手なこと言うな。」
ルー兄さまの厳しい声がした。マックス殿下はビクッとしてなおの事肩を震わせて深く俯く。
「ルー兄さま、お声が厳しいわ。マックス殿下が震えてらっしゃるじゃない。」
私が言い返すと、なぜかルー兄さまは忌々し気に私を見た。
「お前、殿下がお前の姿で何をしたか知らないからそんなこと言ってられるんだ・・・!」
「・・・え?」
私の姿でいた時?お行儀悪かったのかしら?それは困るけど、でも私もライの格好で色々してたしな、、、。
「それはどんな・・・?」「よし、匿いましょう。」
私の問いに被せて、母さまがやや大きい声で言った。あ、ルー兄さまと目配せしている。
「エレオノーレ!私は反対だ。何なら通商団を今すぐユランの大使館前に転移させますが・・・」
父さまが訴えたけれど、母さまは、首を振った。

「殿下お一人の安全なら、それで構わないが・・・事は不可侵条約や通商条約にも関わるだろう。慎重に行った方が良い。私たちが帝都に着いた日に殿下が突然大使館や皇宮に現れたら、確かに変だしな。通商団を待って合流した方が怪しまれずに済む。」
「でも、母上・・・」
「その代わり、通商団に付けた部下に連絡して、旅程を早めさせよう。残り大体十日だろうから・・・三日くらいは短くできるだろう?」
母さまの言葉にルー兄さまは「母上・・・鬼だ」と呟いた。
「それと、殿下にも条件があります。」
母さまがマックス殿下の方を向くと、殿下は俯いたまま、両手で顔を覆っていた。
安心して泣いちゃったのかな?
心配していると母さまはそのまま淡々と続けた。
「いいですか?まずここではライムンドと言う侍従見習になってもらいます。待遇もそうなりますのでご承知おき下さい。」
「それと、勝手な行動は慎んでくださるように。使い魔に監視もさせますが・・・これは殿下の身を守るためでもあります。この屋敷は普段前辺境伯夫妻が使用しており、私たちはここの使用人を把握していない。様子が分かるまでは、ここにも敵がいるつもりで不用意な行動はお控え下さい。」
良いですね?ちゃんと聴かないと放り出しますよ。

母さまの、子供に対するような念押しに、深くうなずくと。
マックス殿下は勢い良く顔を上げた。満面の笑みだ。
、、、え?泣いてたんじゃなかったの?
あっけに取られた私が辺りを見回すと、父さまは、、、相変わらず冷気を出してるし、ルー兄さまはぶすっとした表情を隠しもしないし、母さままで、やれやれと言った表情だ。
みんな分かってた?私だけ勝手に騙されてたってこと?
茫然とした私の手を、またまた両手でしっかり握りしめて。
「やったぁ、有難う!君のおかげだよ!ディアナちゃん!」

これから七日間、よろしくね?
マックス殿下はにっこり宣ったけど、、、その笑みが真っ黒く見えたのは、気のせいではないみたい。
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