帝国最強(最凶)の(ヤンデレ)魔導師は私の父さまです

波月玲音

文字の大きさ
150 / 241
帝都のひと夏

男子部屋にてⅡ(ルー視点)

しおりを挟む
事の発覚は一昨日の夜更けの事。

宿場町は幾らでもあるのに、付き合いのある領主館以外は頑なに野営をしたがる母上の方針で、みんな疲労が蓄積している。
過酷な一日を終え見張り以外が眠りについた深更、、、不意に隣の母上の天幕がざわついた。ハッと飛び起きるのと、見張りの兵士が呼びかけてくるのが同時だった。
「どうした?」帯剣しながら低く問いかけると、
「大きな鳥が閣下の天幕に入って・・・それはよくあることなのですが、今回はすぐに中がざわつきまして。ただ、今はこの通り静かに・・・あ、中で明かりがつきました。人が出て来ます。」
「分かった。すぐ行く。」
大きな鳥と聞いた時点で父上しかありえない。俺は溜め息を付いて天幕を出た、が、、、。
「兄様!?」
何と、俺の天幕に近付いてきたのは帝都の大学寮に居るはずのフィン兄様だった。
「シッ」
兄様は口元に指先を当てながら隣まで来ると、俺に耳打ちした。
「疲れてるところ悪いな。親父がブチ切れてしまったのでやむを得ず母上のところに連れてきた。」
「は?」
「は?だよな~。分かるよ、ルー君。あれだけ約束したのにやっぱり来たのか、とか、あと三日待てないのか、とか、保護者付きで来るか、とか思ってるだろ。僕も、自分は何でこの場に居るのかと思ってる。けど・・・まあ、あの親父としてはよく耐えたと思ってくれ。」
ポンポン。
父上に辛い兄様に肩を叩かれれば頷くしかない。
「分かりました。急な来客あり、異常なし、と主な天幕には伝達します。それでみんな察するでしょう。」
「悪いな、任せた。」
母上の天幕に戻る兄様を見送り、見張りの兵士を振り返る。
「と、言うわけだ。お前、伝令頼めるか?」
聞けば、委細承知、とばかりに頷く。 バーベンベルクうちの連中は父上の所業に慣れていて、こういうところは有難い。
「ディアナの天幕だけは俺が行くから、後は頼んだ。」
「承知しました。」
「俺もすぐ帰るが、居なくても予定通り交代して寝ろよ。明日もいつも通りきついからな。」
言い置いて歩き出す。ディアナ、に化けているのはマクシミリアン殿下だから、俺が行くしかないだろう。
一言伝えてさっさと寝よう。
そう思って天幕に近付いたのに、、、。


ディアナの天幕は母上のもう一つ奥にある。女の子の天幕だからと言う理由で幅をとって二重に幕を張り、明かりも物音も漏れないよう気を遣っている。
多分殿下も良くお休みだろう。見張りは気づいてるだろうが。
そう思って入り口に向かうと。
見張りはなぜか、外ではなく、中ばかり気にしていた。
「どうした?」
近づいてそっと声を掛けると、ビクッとする。
こいつ、外への警戒が全くなってないな!
警護対象がマクシミリアン殿下だから良いが、本物のディアナだったらこの時点で失格だぞ。
ムッとしながら小言を言おうとした時。
「・・・ッ」
微かな声が中から聞こえた気がして、思わず耳を澄ませた。
「?」
もう聞こえない。空耳か?
思わず見張りを見ると、こいつは、、、驚いてない?
「今、何か聞こえなかったか?」
尋ねると、ハッと姿勢を正してから、
「自分も先ほどから気にしていました!」
と、小声で答えてきた。その上で、
「実は、最近毎日お声が聞こえるような気がいたしまして・・・」と言う。
「??」
よくよく聞いてみると。
どうやら毎晩寝静まった頃に微かに声が漏れるのだと言う。
長い時間では無いし、小さい女の子だから、夜一人で寂しくて泣いてるのかと思って、初めて気づいた日の翌日、声をかけてみたのだそうだ。
すると、ディアナはちょっと慌ててから、泣いてるなんて恥ずかしいから、誰にも言わないでね、と頼み込んできたらしい。
「それで俺や閣下にも報告が無いのか。」
冷たく言うと、夜目にも顔を青ざめさせる。
今頃不味いと気付いたって遅いんだ。
あのマクシミリアン殿下が泣く玉か。もしかすると、俺たちに隠れて何処かと連絡を取ってるのかも知れない。
俺は一言「どけ」と言うと、そっと外側の天幕の入り口から忍び込んだ。
しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

処理中です...