帝国最強(最凶)の(ヤンデレ)魔導師は私の父さまです

波月玲音

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帝都のひと夏

コンラート公爵邸にてⅧ(終・マクシミリアン視点・後)

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帝都の中とは思えないほど静かで薄暗い木立の中をひっそりと進んでいくと、フッと目の前の視界が明るくなった。
その先は・・・畑?
俺は木立の切れる処ぎりぎりまで近づくと、木の幹に隠れ、そっと辺りを見回した。



そこは大して広くはないがよく手入れされた畑だった。
少し先の木立に半ば隠れる様にしてこじんまりとした建物と、その隣には小さいが珍しい硝子張りの温室がある。
日当たりのいい場所に白く細い布が沢山干してあり、風に乗って、ここまで薬草や消毒液のにおいがしている。
「診療所か・・・」
少なくない騎士達を抱えるこの屋敷なら、確かに医者や医療技術にたけた魔導師の一人や二人常駐させていてもおかしくない。
「疲れを理由に匿って貰おうかな・・・」
そう思って木立沿いに診療所に向かおうとすると。
不意に、診療所から小さい影が現れた。

「!」
驚いて足元が疎かになったため、地面に露出した木の根っこに躓いてしまう。
「っつ!」
派手にすっころんでうめきつつ顔を上げると。

「魔力からそうとは思いましたが・・・こんなところで何をしていらっしゃるの?マックス殿下?」
肩に小鳥を止まらせたディアナ嬢が、黄金の瞳を呆れたように見開いて、俺を見つめていた。



「お怪我は・・・ございませんね。」
俺の足で五歩先にとどまったまま、立ち上がった俺をざっと上から下まで観察すると、ディアナ嬢はほっとしたように息を吐いた。
「怪我はないが」「待って!」
一休みさせてくれと言いかける間もなく、鋭い制止が入る。
「そのまま動かないで。ルー兄さまから腕輪のこと、聞いてます。うわあ・・・確かにとってもまずそう。」
おっと、忘れてた。了解の意味を込めて両手を軽く上げると、彼女は困ったように笑った。
「父と兄たちがすみません。その腕輪、私に関わることなんですよね?理由は全く教えてもらえませんでしたが、殿下のためにも絶対近づくなって言われてるので・・・」
そりゃ、理由は言わないだろう。俺は秘かに納得しながら何食わぬ顔で彼女を見つめた。
「大したことでは無いんですが、ルーファス君が怒ってしまって。それにしても。」
今の言葉、流石に引っかかる。
「ディアナ嬢が見ても、そんなにまずい腕輪ですか?」
心配そうに尋ねてみると、彼女は困ったように眉を下げた。
「ええ、そうですね。少なくとも、フィン兄さまが掛けた方は分かるので。術式とか、細かいことは説明出来ませんけれど、何をさせようとしているかは伝わってくるので・・・」

「すごいですね。」
素直に感心した。
俺は、それに昨日今日相手をしている騎士達も、この腕輪に関して、何かを感じることは無い。実はあいつ等に少しかまをかけてみたが、女みたいだな、とか、そんなのしてると剣の邪魔にならないか?と言われただけだった。
「いえ、そんなことありません。それに、父の掛けた方は上から隠蔽やら防御やら沢山重ね掛けしてあって、とってもまずそうってこと以外、全く分かりませんし。」
とにかく、そんなの付けてるとご不便でしょう?私から父と兄たちに外すようお願いしますから、もう少しお待ちくださいね?
言葉の端々から彼女の優秀さ、善良さが伝わってくるし、小首をかしげる仕草は可愛いの一言に尽きるが、、、。
「・・・とってもまずいの?」
俺は聞き捨てならないことを聞いたと、彼女の言葉を繰り返した。
「ええ、、まあ・・・」
口籠るディアナ嬢の表情が曇っていて、何とも不安感をあおる。
ルーファスが言っていたのは何だった?あれがもし本当だとしたら?
心臓が嫌な音を立て始める。血の気が引いていくのが自分でも分かった。
でも、腕輪を見つめるディアナ嬢は、そんな俺に気づかない。
「うーん。申し訳ありません。やっぱり内容は分かりませんね。でも、完璧な魔術を展開する父が、ここまで隠すってことに不安を感じます。人には知られたくないような内容で、万が一にも解呪されないようにという強い意志を感じるので。」
「そうなんだ・・・」
「殿下?大丈夫ですか?」
ディアナ嬢が呼びかけてくるが、表情を取り繕えない。
完璧な術、万が一にも解呪されない、、、それじゃあ俺は、、、もしかしなくても本当に女化しているのか?
足に力が入らない。
ふらふらとしゃがみ込んだところで、木立の向こうから俺を探す声が聞こえてきた。
「ライムンド!おーい・・・あ、居たぞ!こいつ今度は診療所にふけようとしていたな!こっちには絶対に行かせるなって、隊長に厳命されてるのに・・・」

「うるさい!今大事な話をしてるんだ!」
「話?誰と?」
騎士達に怒鳴ってから振り返ると、いつの間にかディアナ嬢は消えていて。
俺は引きずられるようにして、訓練場に連れて行かれたのだった。
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