帝国最強(最凶)の(ヤンデレ)魔導師は私の父さまです

波月玲音

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帝都のひと夏

だっていたたまれなくて

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「アル、今日は新任騎士この子たちのハレの日だから。多少羽目を外しても目をつぶるのがマナーなんだよ!」
冷気は出しちゃだめだ。おかしいだろう?夏にグラスが凍るなんて!
良く聞こえないけど、母さまがまた父さまに注意している。父さまってほんと、母さまの子供みたい。
なんだか無性におかしくてへらへら笑っていると、父さまが溜め息を吐いた。
「兄上からディーが泣いてると聞いて急いで来てみれば・・・オスカー。」
「は、父上」
「これはどういうことだ?」
「申し訳ありません。私の責任です。」
あれ~?オスカー兄上が父さまの前で頭を下げてる。
「父上、これは・・・」
「フィン、お前はさっきディーを困らせたばかりだ、黙って反省しろ。」
「くっ」
あれれ?フィン兄さまが口答えせず俯いた。
なんだか考えが纏まらなくて、ぼーっとその様子を眺めていると。
父さまがこっちを見た。
一歩踏み出そうとして、そのまま固まっている。
「?」
私が首を傾げると、父さまは後ろにいた母さまに何か囁いた。
留める様に父さまの腕を押さえていた母さまは、一転呆れた顔をすると、すぐに私に近寄り、かがんで顔を寄せてきた。
「うーん、お酒臭い。ディー、なにを飲んだ?」
「これ~。おいひいからくーってのんりゃった。」
隣にいた騎士さまが持ってるグラスを指さすと、母さまはさっと手に取って匂いをかぐ。
「あー、これ。甘いけどきついやつ。女の子引っ掛ける様に準備してたんだな。ほんと、新任騎士君達は昔も今も変わらないな。」
溜め息を吐いた母さまは、私の頬をするん、となでると、困ったように聞いてきた。
「ディー、父さまが、君に近付いても良いか聞いてくれと言っている。」
「?」
「さっき控室で、お茶会の間は近付くな、と言っただろう。もし嫌なら、魔力が触れるのだけ許して欲しいそうだ。」
あれ~?そんなこと言ったっけ?頭がふわふわしてよく分からない。
「らいじょーぶれす。」
こくこく頷くと同時に、私の中にすーっと異質な魔力が入り込んできた。体の中を巡っていくにつれ、熱っぽさやふわふわした気分が落ち着いていく。
そして。
「あれ?私・・・」
魔力が抜けたと思ったら、頭も体もすっきりしていた。ふと周りを見ると、目の前の母さまを始め、騎士さまも家族もみんな、私をじーっと見つめている。
「酒精は抜けたね・・・脈も安定した。どう?気分は?」
母さまが首に指先を当てながら聞いてくる。え?酒精?お酒飲んじゃったの、私?
「大丈夫、です・・・やだ、私・・・」
何しちゃったの私。可愛いって言われて嬉しくて、調子に乗ってるから!変なことしてないと思うけど、、、してないよね?
なんだかいたたまれなくて、私は勢いよく立ち上がってしまった。
「?ディー?」
母さまが驚いたように見上げてきたけれど。
「ちょっと、ええと・・・失礼します!」
みんなの目から逃げたい!
そう思ったら、自然に結界を張っていたみたい。
「あれ?どこ行ったの、ディー!?」
「消えた?」
「父上?ディーをどこへ?」
騒ぐ人たちの声から、私は見えないんだ、と分かって。
取り敢えずほっとしたけど、落ち着くために一人になりたくて。
私は人や物を避けながら、その場から一目散に逃げだしたの。
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