帝国最強(最凶)の(ヤンデレ)魔導師は私の父さまです

波月玲音

文字の大きさ
217 / 241
帝都のひと夏

山に埋れました

しおりを挟む
寝坊しました。
いつもなら、朝日の差し込む前に起きるのに、慇懃な邸の侍女に天蓋越しに声をかけられるまでぐっすりで。
慌てて支度をして下に降りると、家族は食後のお茶を楽しんでいるところだった。
「おはようございます。父さま、母さま。兄上、フィン兄さま、ルー兄さま。」
順々に挨拶して急いで席に着くと、母さまが穏やかな笑顔で話しかけてきた。
「珍しいね、ディーがこんな時間まで寝てるなんて。」
昨日は流石に疲れたかな?
顔を覗き込まれるように言われると、ドキドキしちゃう。
これ、夜のお出掛けは黙っていたほうがいいのかな?バレちゃってるのかな?
チラ、とフィン兄さまの方を見ると、にっこりされてしまった。
え、それはバレてないよ、の笑顔?それともバレてるけど大丈夫、の笑顔?
「ええっと、そうね・・・」
後ろめたさに目を逸らして答えると、クッと笑い声がした。え?母さま?
「ディーは隠すの下手くそだな。それじゃあ、騙されてあげようとしても、怪しすぎて騙されようがない。」
母さまの可笑しそうな笑顔を驚いて見ていると、お前は相変わらず抜けてるな、とルー兄さまに脇を小突かれた。
「馬鹿ディー。大鴉がいたんだ。母上が知らない訳ないだろう?」
そうだ、大鴉。あの子がいたってことは父さまが、つまりは母さまも知ってるってだよね。
でも、呆れたようにルー兄さまに言われると、素直になれない。
「だって・・・」
「今日はそこまで。」
言い返そうとすると、母さまに窘められてしまった。
「オスカー達もいたんだ。一々細かく問い質したりはしないよ。色々あって、大人になるんだからね。」
笑顔を収めた母さまは、穏やかだけど真面目な口調で諭してくる。
「でも、忘れないで欲しい。ディーは女の子だから、野郎の三人より、もっと危険には気を付けて欲しいんだ。ああ、君がその年にしては良い剣の腕を持ってることも、アル譲りのすごい魔力を使えることも分かってるよ。でも、だ。母さまの言うこと、分かるね?」
分かります。いざ、という時、私はまだ一人ではどうして良いか分からないもの。それに、夜の街に、確かにお仕事以外の女の人はいなかったし。
「はい。気を付けます。」
私が頭を下げると、母さまはにっこりした。
「うん、じゃあこの話はここまで。冷めないうちに早く食べてしまいなさい。今日も結構忙しいからね。まずは家族全員でやることがある。」
「母上、ほんとに僕らもやるの?」
「当たり前だ。逃すものか。小さい子を夜の下町に連れ出した罰だよ。」
「諦めろ、フィン。中を見るなら、お前や私の方が透視出来る分早いだろう?」
「なら父上一人で十分では?」
「私も出るまでは手伝うから、フィン。」
「オスカーは今日から出仕なんだ。お前は来なさい。」
何だか大変なことがあるみたい。
ついつい気になって聞いていると、母さまがコホンと咳払いした。
「嫌がらずに業務を遂行しよう。子供たちが心配するじゃないか。」
先に行ってるから、食べ終わったらサロンにおいで。
そう言うと、ルー兄さまを残してみんなは席を立ってしまった。
え、ちょっと待って!
慌ててパンをちぎり、口に放り込む。むせて冷めたお茶で流し込もうとすると、隣で盛大な溜め息が聞こえた。
「お前な、もう少し行儀良く食べろよ。」
一人だけ残ったルー兄さまがしかめ面でこっちを見ている。
「何よ、ちょっと急いでるだけじゃない。兄さまこそ、文句言うために残ってるの?」
言いながらスープを飲み、ちょっと悩んでサラダを無視して立ち上がろうとしたら、腕を押さえられた。
「お前な。一人で食べたら味気ないと思って残ってやったんだろう。それより、多少遅れても大丈夫だから、サラダは残さず食べろ。」
「え~。良いの、早く行かないと。」
「ダメだ・・・母上に言うぞ。」
「う~・・・分かりました。」
ちょっと抵抗して見たけど、母上に言うと言われては、食べない訳には行かない。騎士団長の母さまは、騎士は身体が基本、身体は睡眠と食事が基本、が口癖で、栄養バランスとお残しに厳しいのだ。
結局出されたものは全て食べ終え、温かいお茶も頂いて、やっと席を立つことを許された。
「さ、行くぞ。もたもたするな。」
「してませーん。」
何だかんだ言いながら食事に付き合ってくれたルー兄さまとサロンに急ぐ。ちなみにこの邸内も、父さまが結界を張っていて、なぜか転移出来ないようになっているの。
玄関の近くを通ると、朝にしては出入りが多く、いつも静かな使用人たちがバタバタしているのが見えた。玄関はほぼ開きっぱなしで、荷運びをしているみたい。
「あれ、兄さま、私たち、まだ暫くここにいるわよね?」
何でこんなに荷物が動いてるのかな?
ホールを突っ切りながらルー兄さまに話しかけると、今度は残念そうな顔をされた。
「ほんと、お前は・・・」
わざとらしく頭を振ったりするからムッとする。
「兄さまこそ、何でそんな嫌味なの!」
言い合いながらやっと部屋にたどり着くと、丁度執事が出てくるところだった。その後ろから使用人が、籠を乗せたカートを押して出てくる。
「?」
何かな~とは思ったけど、とりあえず中に入るのが先だ。
ルー兄さまが扉を開けたまま一歩下がった執事に頷くと、ノックした。
「母上父上、入ります。」
「ああ、来たか。おいで。」
ルー兄さまに続いて私も部屋に入る。
後ろでパタン、と扉が閉まった。
「え?」
その場で固まる。
「どうだ?凄い事になってるだろう?」
母上の声にいつもの力が無い。でも納得してしまう。だって、これ、、、。
「何なの?」
思わず漏れた言葉に、母上がハハっと乾いた笑い声を上げた。
「君たちを含め、我が家に届いた招待状と・・・君たちを婿や嫁にと考える家からの贈り物、てとこかな?」
そこには、、、広いサロンに積み上げられた箱や花束の山と、テーブルに溢れんばかりに積まれた手紙の山があった。

これ、全部開けて、確認するの、、、?
しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

処理中です...