帝国最強(最凶)の(ヤンデレ)魔導師は私の父さまです

波月玲音

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帝都のひと夏

スキルが一つ増えました

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サロンの床に積み上げられた箱や花束は昨日挨拶を交わした社交界の方々からだった。
まあ、お嫁さんお婿さんってのは言葉の綾で、皆さん、シーズンも終盤だから、次にいつ会えるか分からないので、顔つなぎを兼ねて送って来てるんだろうって。
お手紙の方は、おそらく残りのシーズンの晩餐やお茶会の招待状と、領地で過ごすお誘いと思われるとのこと。
話を聞いている間にも、扉がノックされては次々に荷物やら手紙やらが運ばれてくる。
そっか、さっきの玄関の騒ぎはこれだったのね。
納得しつつ、何かできないか、この場の指揮を取る母さまに確認する。
荷物の置き場所を指示しながら、母さまは首を傾げた。
「そうだな・・・ルーは私とオスカーと一緒に手紙の仕分けをしてもらいたいんだが・・・ディーはうちの魔導師組と一緒の方が良いのかな・・・どう思う、アル?」
母さまが声を掛けると、荷物の山を黙って見ていた父さまが振り向いた。
「荷の確認はいつものようにすればいいんですか?なら、私だけでも問題ないでしょう。まあ、フィンにはやり方を教えるためにやらせますが。」
「そうか・・・確かに、あれは魔術以外にも知識が無いと出来ないか。」
「ええ。ディーは貴女の方を手伝わせて下さい。」
そう言うと、父さまはさっさと荷物の山の方を向いてしまった。フィン兄さまを視線で呼ぶと、なにやら指示をしている。
残念。でも、母さまがにっこりして、ディー、よろしくね、と肩を抱いてくれたから、手紙の山に向かう。
「じゃあ、説明するよ。封を開けたら、ざっと中をみて、シーズン中のお誘いはこっち・・・」
オスカー兄上もルー兄さまも、すでに作業を始めている。
私もペーパーナイフを受け取ると、早速作業に入った。

「ふう、これで一通りの仕分けは出来たな。」
「はい。出来ましたが・・・かなり絞っても、帝都滞在中はほぼ毎日どこかに行くことになりそうです。」
「それも一日に何か所もな。ああ、今から憂鬱だ・・・」
「母上、手を止めずに、このまま返事を書いてしまいましょう。」
「もうすぐお昼なんだが・・・午後からでは駄目か?」
どれくらい経ったのか。オスカー兄上が仕事に行くのを手を止めずに見送り、作業を続けて、やっと手紙の山が消えた。
気が付くと母上とルー兄さまが予定表を作って話し合っている。
こっちは終わったみたい。
荷物はどうなったのかな?
気になって振り返ると。
「何これ・・・」
驚きの光景が広がっていた。
ごちゃごちゃと積み上げられていた箱の山、一か所に小山になっていた花束は、いつのまにか一つ一つ等間隔に並べられている。
近寄ってみると、何かメモのようなものが上に置かれていた。
「何だろう、これ・・・」
一枚手に取って見てみる、、、髪飾りの絵だった。金額が書いてある。隣はお酒の絵。種類と、、、やっぱり金額が書かれている。
これって、若しかして、、、
「欲しいものあるの?ディー。」
次々見ていると、父さまが来た。
「ううん。そうじゃなくて、、、これ、この紙。」
目の前の一枚を取り上げて示すと、父さまはああ、と、頷いた。
「ディーはまだやり方を知らないね。これは、念写してるんだ。箱の中身を透視して、見たままを紙に写し取っている。」
分かりやすいだろう?
言われて頷く。これならいちいち開ける必要も無いわね。
「送って来た相手や中身によっては貰いたくないものもあるからね。開けていなければ返しやすいし、中身を知るのも大事だから、、、」
金額やらなんやらは、あると便利だと母さまが喜ぶので書き足してるんだって。だから、魔術以外の知識がいるって言ってたんだ。でも、透視して写し取るだけなら、私も出来るかな?
期待して父さまを見上げると。
ディーもやりたいの?
目の前の箱を取り上げて父さまが聞いて来た。私はぶんぶん頷く。何だか面白そう。
コツを聞きながら目を凝らすと、箱の中身が透けて見えてきた。
「細かいところまでしっかり見て、記憶して。」
言われるまま、時に視野を切り替えて細かく見ていく。
「覚えたら、この紙の上に記憶を切り取って張り付けるようにしてご覧。」
何時の間にか父さまの手には真っ白な紙があった。
広げられたそれに、いま覚えたばかりで、頭の中に鮮明に残る物体の記憶を、そのまま再現していく。
「出来た、かな?」
しばらくすると、紙の上に、私の記憶が現れた。
「うん、初めてなのに綺麗に出来たね。」
父さまが箱と紙を交互に見ながら、頭を撫でてくれた。やった。コツを掴めば簡単だわ。きちんと見て、はっきり記憶していればいいんだよね。あ、それなら、、、。
「父さま。これって、はっきり思い出せれば、前の記憶でも写せるの?」
「紙の上に再現出来ればいいのだから、いつの記憶かは関係ない。ディーは何か写したいものがあるの?」
言われて考える。写してみたいもの、、、あ、あの時の記憶を、はっきりしているうちに残したいかも。私が頷くと、父さまはまた紙を広げてくれた。
「何枚でもあるからやってごらん?」
言われて、記憶を再現し、じっと紙を見つめる。
出来上がったのは。
「結構きちんと覚えているものね!」
昨日の夜、カレンブルク侯爵邸から出て行った数人の内、表の脇門から出た人の顔だった。闇の中だったから髪や瞳の色は分からないけれど、顔立ちははっきり写せたと思う。
これは、その場にいた人に見てもらいたい、、、フィン兄さまだ!
出来上がった紙を持って、きょろきょろすると、兄さまは、お茶の支度をして入って来た侍従と話していた。
「ねえ、フィン兄さま、これ、誰だか分かる?」
父さまにお礼を言って兄さまに近付き、目の前にパッと紙を出すと。
「!ディー、ちょっと待って、これ・・・」
「・・・なんでディアナ嬢が俺の乳兄弟の絵を持っているんです?」
ちょっと慌てたフィン兄さまの声と、硬いライの声がして。
「え?」
お茶の支度をしていたのは、、、ライの姿を借りて匿われている、ユラン王国のマックス殿下だった。
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