220 / 241
帝都のひと夏
茶会の翌朝(フェリクス殿下はしてやられる)
しおりを挟む
「なんだって?」
「ですから、陛下ご夫妻は明日から一泊で避暑に出られるそうです。」
朝食の席で聞いたマルティンの言葉に、俺は思わず問い返してしまった。
ディアナ嬢と挨拶を交わした昨日の茶会の後、俺は早速ジキスムントが(そしてもちろん俺も)参加出来そうな茶会を片っ端から調べさせた。
社交シーズンも昨日の帝室主催の茶会でほぼ終わり。あと十日もしないで帝都の貴族は領地に帰るか避暑に出てほぼいなくなる。もう残り少ない茶会の中で、俺は得難いものを見つけた。
明日のカレンブルク邸の茶会だ。
カレンブルク侯爵夫妻は元々帝都にあまりいないので、あの屋敷で会が開かれることは滅多にない。
その稀少性に加え、カレンブルク侯夫妻の生粋の帝国上流貴族としての趣味の良さ、そこに色を添える異国情緒、、、非常に人気のある、招待状が手に入りにくい茶会なのだ。
きっとディアナ嬢も喜ぶだろう。
しかも、ここであれば、俺もジキスムントも、双子の友人枠で招待状なしで出入り可能だから、訓練の後、公務の前に顔を出すことが出来る。
こうしてみると、皇太子の立場って言うのも便利だな。
俺は昨日のうちにカレンブルク邸に渡りをつけると共に、今日の朝一番で届くよう、ジキスムントとディアナ嬢に手紙を出した。
これで明日はまたディアナ嬢に会えるし、ジキスムントと会わせると言う約束も果たせる。
俺は朝から上機嫌だったのに、、、。
「聞いてないぞ、マルティン!」
「私もお伝えしておりませんので。と言うより、昨日の茶会の後お話が出て、急に決まったようでございます。」
「昨日の今日で皇帝の予定が決められてたまるか!」
俺の叫びにも、マルティンは動じない。
「仕方ありません。皇帝陛下と言えど、ままならぬものがあるのです。」
「・・・母上の焼きもちか。」
俺は何となく察した。
うちの両親は典型的な政略結婚のはずなのだが、、、何故か仲がいいのだ。そして、時々なにかのきっかけで、母上が父上に焼きもちを焼いて大騒ぎをする。
解消法は大体二人きりの小旅行だった。
しかし、皇帝夫妻不在の間、皇太子の俺は皇宮から出られなくなる。
明日は大事なカレンブルク邸の茶会があると言うのに!
手配も全て済ませたと言うのに!
がっくりと項垂れた俺に、慈愛の滲む眼差しでマルティンがとどめを刺した。
「ご理解頂けましたところで、陛下がお呼びで御座います。今日は朝から引継ぎがあるとのこと。ああ、午前中の訓練を欠席する旨、騎士団には連絡済みですので・・・」
そうかよ、手回しいいな。てことは、ジキスムントに会って、手紙には書けない昨日の誤解を解くのも、双子に色々頼みごとをするのも無理ってことか。
こうしてみると皇太子の立場って言うのは不便だな、、、。
「ですから、陛下ご夫妻は明日から一泊で避暑に出られるそうです。」
朝食の席で聞いたマルティンの言葉に、俺は思わず問い返してしまった。
ディアナ嬢と挨拶を交わした昨日の茶会の後、俺は早速ジキスムントが(そしてもちろん俺も)参加出来そうな茶会を片っ端から調べさせた。
社交シーズンも昨日の帝室主催の茶会でほぼ終わり。あと十日もしないで帝都の貴族は領地に帰るか避暑に出てほぼいなくなる。もう残り少ない茶会の中で、俺は得難いものを見つけた。
明日のカレンブルク邸の茶会だ。
カレンブルク侯爵夫妻は元々帝都にあまりいないので、あの屋敷で会が開かれることは滅多にない。
その稀少性に加え、カレンブルク侯夫妻の生粋の帝国上流貴族としての趣味の良さ、そこに色を添える異国情緒、、、非常に人気のある、招待状が手に入りにくい茶会なのだ。
きっとディアナ嬢も喜ぶだろう。
しかも、ここであれば、俺もジキスムントも、双子の友人枠で招待状なしで出入り可能だから、訓練の後、公務の前に顔を出すことが出来る。
こうしてみると、皇太子の立場って言うのも便利だな。
俺は昨日のうちにカレンブルク邸に渡りをつけると共に、今日の朝一番で届くよう、ジキスムントとディアナ嬢に手紙を出した。
これで明日はまたディアナ嬢に会えるし、ジキスムントと会わせると言う約束も果たせる。
俺は朝から上機嫌だったのに、、、。
「聞いてないぞ、マルティン!」
「私もお伝えしておりませんので。と言うより、昨日の茶会の後お話が出て、急に決まったようでございます。」
「昨日の今日で皇帝の予定が決められてたまるか!」
俺の叫びにも、マルティンは動じない。
「仕方ありません。皇帝陛下と言えど、ままならぬものがあるのです。」
「・・・母上の焼きもちか。」
俺は何となく察した。
うちの両親は典型的な政略結婚のはずなのだが、、、何故か仲がいいのだ。そして、時々なにかのきっかけで、母上が父上に焼きもちを焼いて大騒ぎをする。
解消法は大体二人きりの小旅行だった。
しかし、皇帝夫妻不在の間、皇太子の俺は皇宮から出られなくなる。
明日は大事なカレンブルク邸の茶会があると言うのに!
手配も全て済ませたと言うのに!
がっくりと項垂れた俺に、慈愛の滲む眼差しでマルティンがとどめを刺した。
「ご理解頂けましたところで、陛下がお呼びで御座います。今日は朝から引継ぎがあるとのこと。ああ、午前中の訓練を欠席する旨、騎士団には連絡済みですので・・・」
そうかよ、手回しいいな。てことは、ジキスムントに会って、手紙には書けない昨日の誤解を解くのも、双子に色々頼みごとをするのも無理ってことか。
こうしてみると皇太子の立場って言うのは不便だな、、、。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2,168
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる