帝国最強(最凶)の(ヤンデレ)魔導師は私の父さまです

波月玲音

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帝都のひと夏

カレンブルク邸のお茶会へようこそ(ディーとルーは初手攻撃を躱す)

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「いやあ、よく来てくれたね。来て欲しい人だけがきちんと来てくれて、嬉しい限りだよ。」
にっこり。
目元の笑い皺も艶っぽく美中年の笑みを向けられても、正直怖いだけなんだけど、、、。
私が引きつった笑みで挨拶をしようとすると、ルー兄さまがスッと半歩前に出てくれた。
「お招き有難う御座います。エリオット伯父上。ええ、伯父上がお望みであれば、可能な限りその意に沿うのは一門として当然のこと。むしろ、水臭く感じましたよ?」
そう言って小首を傾げた兄さまは、伯父上に負けず劣らずにっこりと薄い水色の瞳を細めた。
「何もバーベンベルクの祖母から話しを回して頂かなくても、私やディアナへの招待状に一言添えて、なんなら父に一言仰って下されば、ライムンドは連れて来ましたのに?な、ライムンド。」
私のすぐ後ろに居たマックス殿下のライムンドが静かに一礼した。
そう、今日ここに来る直前になって、私たちのところに離れに居るはずのお祖母さまが盛装で突然現れたのよ。
父さま母さま、オスカー兄上にフィン兄さまは、それぞれ仕事や他のお茶会に出払って、一番近所のカレンブルク邸にそろそろ行こうと、私とルー兄さまが出かけようとしたところだったの。
「私もカレンブルク邸に今日招かれているのよ?今社交界で一番話題の孫たちが行くのなら、一緒に行かなくてはね?」
母さまが到着した日の事件のせいか、同じ敷地に居てもほとんど会わなかったのに、急にどうして?
驚く私を他所に、ルー兄さまが淡々とお断りをする。
「祖母上。ご無沙汰しております。折角のお申し出ですが、私たちは今日、自分たちに招待状を貰っているのです。大人と行く必要はありませんので。」
言葉は丁寧だけどにべもない断りに、お祖母さまはさっと表情を変えた。
「なんて生意気な子なの!田舎で育つと長幼の序も弁えないのね?」
「いえ、そんなことはありません。むしろ尊敬すべき相手は身分年齢を問わず礼を尽くせと教わりましたよ。」
「なんですって!!」
いつも冷静なルー兄さまが初手から攻撃的すぎる。
私が慌ててフォローに入ろうとすると、お祖母さまはフンとそっぽを向いて思いもよらないことを言いだした。
「貴方はもう知らない。今一番人気はディアナですからね。私はこの子さえ連れていければ良いのよ。それと、ライムンドはいる?」
私たちの後ろに控えていたマックス殿下が僅かに見じろいだ。
「私ですが。大奥様。」
控えめに答えたライムンド姿のマックス殿下をチラッと見て、お祖母さまは、とんでもないことを言い出した。
「エリオットに頼まれてるの。お前を連れて来て欲しいってね。なんでかは知らないけれど、仕方ないわ。今日は一日私の侍従として付いてなさい。」
あれを止めるのは大変だった、、、。
結局、お祖母さまと一緒には来たけれど、ライムンドはあくまでルー兄さまの従者と言う扱いは譲らず、不機嫌だったお祖母さまは私たちより先に伯父さまと挨拶するとさっさと行ってしまったの。
遠い目をする私を他所に、ルー兄さまと叔父さまの攻防は続いている。
「・・・バーベンベルクの祖母とは。まあ、伯父上のご交友範囲の広さに改めて感服致しましたが。」
言い添えてから、「なぁ、ディアナ?」と今度は私に無邪気な笑顔で話を向けてくる。私は内心あたふたしながら、取り敢えずカーテシーでごまかした。
これってつまり、兄さまは、伯父さまに、姑息な手段を使うと、エリオット伯父上あなたの手駒がばれますよ、って言ってるんだよね?
怖っわ。ルー兄さま、挨拶から飛ばしてどうするの~。で、しかも私?今私に投げてるの?
私は鍛えた腹筋を最大限生かしてゆっくり頭を上げながら必死に考え、、、取り敢えず逃げることにした。
「ええ、でも私は、私の好きな方が皆さん仲良しだと思うと嬉しいですわ?」
にっこり。
これで取り敢えず一息つかせて?オリヴィエ兄さまも最後は笑顔でごまかせって言ってたし。お願いします!
私の必死の願いが通じたのか、伯父上の隣に居た夫人のヘレナ様が穏やかにあとを引き取ってくれた。
「本当ね、ディアナ嬢。そうそう、貴女の従兄弟になるうちの双子とまだきちんと挨拶をして無かったわね?こっちが兄でカーティス、ちょっと内気だけどやさしい子よ。それから、この子がヘイリー、やんちゃで甘ったれの弟なの。二人ともとってもいい子だから仲良くしてね?」
なんて紹介なの?五つ六つの騎士の子の訓練場デビューじゃあるまいし。
伯母上は天然困らせキャラなの?それとも、そう見せかけて私を試してるの?
混乱しながら双子の方を向いたけど、、、彼らは別に普通だった。
あー、また言ってる。そんな感じで聞き流し、取り繕った笑顔で何の感情も見せず私に挨拶をしてくる。
それにホッとしかけて、、、私は違和感に気付いた。
だって、私よ?いや、自惚れてるように思われるけど、、、今朝バーベンベルクのお祖母さまにも言われたけど、今社交界で一番の話題は、私のことだっていうし。ほら、瞳の色とか、フェリクス殿下に初対面で気に入られたとか?
本来なら、初めて会う話題の従妹だとか、友達の殿下が興味を示した女の子ってことで、何らかの興味を、、、好意であれ、反感であれ、抱かれても当然なのに。
彼らは、親に挨拶しろと言われたから貴族の義務としてしてますけど、貴女に興味はありません、て態度なんだもの。
『これ、逆にものすごーく意識されてるってことだよね・・・むしろ反感買いまくってる??』
仕方ない。また笑ってごまかそう。
私が引きつった笑みで挨拶を終えたと思ったら、、、ルー兄さまがまたにっこり微笑んだ。
我が家で一番美しいお顔の兄さまなのに、さっきから笑顔に恐怖しか感じない。
「やあ、こんにちは、カーティス、ヘイリー。どうしたの?年下の女の子相手にずいぶん気を張っているようだけど?うちの妹が可愛すぎて緊張しちゃった?」
とんでもないことを言いながら、握手を求めてグッと二人に近付く。
ちょっと角度を変えて、カレンブルク侯夫妻に背中を向けると、兄さまは二人にしか聞こえない声で囁いた。
「それとも、滅多に会えない両親の前では、普段の姿は出さずにいい子ちゃんしてるのかな?」
だから飛ばしすぎだって!兄さま!
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