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四章 ―― 夢と空の遺跡 ――
空 5 『傷心のユニコーン』
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⑥
ユニコーン種のテトラに連れられ、私はテーブルと椅子が置かれた部屋へと案内された。
奥はキッチンらしき一画に繋がっている。どうやらここで食事とかをしているみたい。
妖精《フェアリー》という名前のブタが何匹も動き回っていて、思い思いにじゃれ合ったり遊んでいたりしている。
なにこのファンシー空間。
妖精《フェアリー》達を愛でながら椅子に座ると、一匹の妖精《フェアリー》がティーポットを咥えて持ってきた。
その後ろには頭にティーカップをかぶった妖精《フェアリー》が二匹。あ、その後ろのやつはクッキーが入った器を頭に乗せてる。なにあれ。めっちゃ可愛い。
テトラいわく、妖精《フェアリー》は慣れてもらえさえすれば、色々と身の回りのお手伝いをしてくれるらしい。元々、お世話好きの性格をしてるんだって。
一通り、準備が終わり、テトラと向かい合って座り合う。私の方も自己紹介を終え、紅茶を口に含んだ後にテトラがきりだしてきた。
「もともと私はシャラク……第五区街で生まれ、そこで暮らしていたわ」
「第五区街《シャラク》? そんな遠くから来たの?」
私は行ったことがないけど、お母さんから聞いたことがある。
歩いて行ける距離じゃないし、飛んでも五日はかかるような場所だ。
「ブルシャンよりかは田舎だけど、特に不自由とかはなかった。きっと私はここで一生を過ごすんだ、って思ってた。ツガイと一緒にね」
「ツガイ……」
そうだ。魔族は常に二匹でワンセット。当然だけどテトラにだってツガイがいるはずだ。
「でもね、ある年、第五区街《シャラク》でちょっと厄介な疫病が流行っちゃったの。それで、私のツガイも病気になって死んでしまった。そう――」
テトラはもう一度紅茶を口に含んで続ける。
「私は片一羽《カタワレ》なの」
片一羽《カタワレ》。何かの事情でツガイを無くしてしまった魔族のことだ。
お母さんが言うには、他の片一羽《カタワレ》と心が結びつくらしい。
「じゃあ……今は別の誰かがツガイってこと?」
私の質問に、テトラは首を振る。
「その予定。……まだ、出会えてないの。だから、私には今、ツガイはいないわ」
テトラが言うにはこうだ。
別の誰かと心が繋がったテトラは、その相手の事が頭から離れない日々を送っていた。
顔も姿も分からない。けれども、その相手のことを好きでたまらなく、会いたくてしょうがなくなるらしい。
最初は、第五区街《シャラク》内を探したらしい。
同じように、生まれのツガイを病気で亡くして、片一羽《カタワレ》になってしまった魔族は沢山いたから、その中の一人にいると信じて探したらしい。
けれど、いつまで探しても見つからなかった。
テトラのツガイは第五区街《シャラク》にはいなかった。
けれど、テトラは諦められなかった。ツガイの愛情って、簡単に諦められるほど浅くはないみたい。
自分の心を見つめ直して、会いたい気持ちに身を委ねたら、いつのまにか旅に出てしまっていたらしい。
そして、ここへと辿り着いた。
「新しいツガイが、第三区街《ブルシャン》にいるってこと?」
「多分……。私もなんとなくしか分からないの。でも、確かに近づいている感覚はあるわ。多分、この辺りに私のツガイはいる」
テトラの物言いは確信めいている。私は魔族のツガイシステムが起こす感情が良く分からないんだけど、ツガイが魔族の絆を強く結びつけていることは理解している。
テトラがそう思うなら、ツガイはこの辺り……ブルシャンに住んでいるんだろう。
「じゃあ、探しにいかなきゃ!」
「うん……分かってる。けどね……駄目なの」
「駄目って? なんで?」
テトラはうなだれて、重ねていた手をもじもじしだす。
「……怖いの。ツガイに会うのが」
「怖い? へ? でも、テトラは未来のツガイに会いに来たんでしょ」
「そうなんだけど……近くまで来ちゃったら急に怖くなって……」
「だって……テトラが片一羽《カタワレ》なら、相手も片一羽《カタワレ》なんだよね。向こうだって会いたいと思っているはずなのに」
一体何を怖がることがあるんだろう。
両方好きで会いたいと思っているならとっとと会えばいいのに。
「違う。片一羽《カタワレ》の心に疑いは持っていないわ。そうじゃない……私が心配しているのは……」
冷めてしまったティーカップに目を移し、テトラはそれを手に取る。
カップがカタカタと震え、飲むのを諦めたのか元の位置に戻した。
「人の意識よ。私が心配しているのは」
「人の意識?」
魔族のツガイシステムから離れ、人間のように自由に恋愛できるようになった魔族のことだ。
「え、なんで人の意識が出てくるの?」
「だってそうじゃない。――だって……」
テトラはこんこんと語り出す。
未来のツガイが住んでいるはずの、第三区街《ブルシャン》に辿り着いたテトラは最初、沸き上がる気持ちに胸躍らせながら防壁の門をくぐろうとしたらしい。
けれど、そのときにふと、ある考えが浮かんできた。
私がこんなに好きなのに、相手はなんで私に会おうとしないんだろう、と。
遠く離れているといっても、翼のある魔族の力を使えば五日でたどり着ける距離。
相手も自分の事を好きで、会いたいと思っているのならば、動かないはずがない。
テトラはそこで考え込んでしまった。
そして、一つの考えが湧き出てしまった。
もしかしたら、相手は人の意識なんじゃないか。
その考えだった。
人の意識になった魔族の話は、魔族の間でほとんど伝わっていない。
魔族はツガイを愛するのが当たり前だからだ。
だから、人の意識になった魔族のツガイがどうなるのか、誰にも分からなかった。
ツガイの一方が人の意識になった瞬間、もう一方は片一羽《カタワレ》となって別の誰かを好きになるかもしれない。
けれど、一方が人の意識になっても、もう一方は片一羽《カタワレ》にならずそのまま同じツガイを愛し続けるかもしれない。
テトラの頭を過ぎった心配はそこだった。
自分は相手の事が好きだ。会って生涯ずっと一緒に過ごしたい。でも、向こうは違うかもしれない。人の意識になっていたのなら、自分が来たところで迷惑にしか感じないだろう。
新しく生まれたツガイの心を捨ててまで、人の意識の道を選んだんだから。
その疑惑が生まれた途端、テトラの足は固まってしまった。
「なんで! 会って確かめてみたらいいじゃん!」
「そんなことできない! だって……私はこんなに好きなのに、拒絶されるんだよ。ツガイに拒絶されたら、私はどうすればいいの! 会って一緒に暮らせない、って言われたら、私はその後、何を信じて生きていけばいいの。……ツガイは魔族の全てなのよ!」
「……それは、なんとなく分かるけどさ」
私だって、人間のころ、恋心を持っていた時代は拒絶されたらどうしようって気持ちが常にあった。
だから悠人とは近い位置から離れてしまったり、また近づいてみたりを繰り返していた。
「……でも、やっぱり私は、折角大事な存在の近くまで来たのに、会わないのはおかしいと思う」
「……私だって会いたい。でもどうしても探す勇気が出なかった。だから――」
テトラは考えた。
自分から探す勇気が出ないなら、向こうに見つけて貰えればいいんじゃないかと。
もし仮に、相手が片一羽《カタワレ》だったならば、相手だってテトラに会いたい気持ちが芽生えているはずだ。
何かしらの事情でブルシャンから出られないにしても、ずっと待っていれば、いつかは会いに来てくれるはずだ。
テトラはそう考え、近すぎず、遠すぎずのこの場所に、住まいを作ることを決意した。
そして、何年もの月日が経過した。
「そんなに!? え、じゃあ、その間ずっと相手の魔族は動きがないの?」
デリカシーの欠片もない私の質問に、テトラは頷いて返す。
「もう今は半分諦めてる。多分、私の相手は……人の意識になってるわ」
それは……確かにそうかもしれない。私は心の中でそう思ってしまった。
未来のツガイが近くにいると、テトラが感じているのなら、相手だってそう思っているはずだ。
なのに会いにいかないのはどう考えてもおかしいと思う。他の理由が思いつかないよ。
……でもこんなのおかしい。
だって、テトラは、きっといつか会いに来てくれると思ってここに住んでいたんだよ。
相手も片一羽《カタワレ》のはずだ、って信じて、何年も待っているんだよ。
自分が人の意識だからって、ほったらかしていい存在じゃないよ。
そんなの、元人間の私だって許せない。
「妖精《フェアリー》とも仲良くなって、生活も慣れてきたから……最近は片一羽《カタワレ》のまま、ここで過ごすのもいいかもって――」
「駄目」
「え?」
「絶対、駄目」
私は真っ直ぐ、テトラの目を見つめる。
「このまま中途半端に暮らしてたら、絶対駄目だよ。続けられるにしても、そうじゃないにしても、テトラの気持ちはそのままなんでしょ? 次に進められないまま、ずっとこのままなんて絶対駄目だよ」
「ノエル……」
「私、探してみる。テトラの相手、探してみるね!」
「へ!?」
戸惑うテトラを尻目に立ち上がる。
沸き上がる思いに身を委ねる。
「女の子を待たせておいて、知らんぷりするなんて卑怯。土下座ものだよ。探して連れてきて、ビンタした後にテトラにごめんなさいさせるから」
「そ、そこまでしなくても」
「大丈夫! 人の意識だったとしても、テトラ、綺麗だからきっと好きになるよ!」
なんか楽観的な考えな気もするけど、きっとそうだ。元人間の私がみても、テトラは綺麗だもん。自由恋愛だったとしても選ばれるよ。
テトラに勇気がないなら、私が変わりに探す。
ブルシャンで、テトラのツガイを見つけてみせる。
こんないい子をほったらかしてるオスめ。首洗って待ってろ。
私が白黒、ハッキリつけてやる!
ユニコーン種のテトラに連れられ、私はテーブルと椅子が置かれた部屋へと案内された。
奥はキッチンらしき一画に繋がっている。どうやらここで食事とかをしているみたい。
妖精《フェアリー》という名前のブタが何匹も動き回っていて、思い思いにじゃれ合ったり遊んでいたりしている。
なにこのファンシー空間。
妖精《フェアリー》達を愛でながら椅子に座ると、一匹の妖精《フェアリー》がティーポットを咥えて持ってきた。
その後ろには頭にティーカップをかぶった妖精《フェアリー》が二匹。あ、その後ろのやつはクッキーが入った器を頭に乗せてる。なにあれ。めっちゃ可愛い。
テトラいわく、妖精《フェアリー》は慣れてもらえさえすれば、色々と身の回りのお手伝いをしてくれるらしい。元々、お世話好きの性格をしてるんだって。
一通り、準備が終わり、テトラと向かい合って座り合う。私の方も自己紹介を終え、紅茶を口に含んだ後にテトラがきりだしてきた。
「もともと私はシャラク……第五区街で生まれ、そこで暮らしていたわ」
「第五区街《シャラク》? そんな遠くから来たの?」
私は行ったことがないけど、お母さんから聞いたことがある。
歩いて行ける距離じゃないし、飛んでも五日はかかるような場所だ。
「ブルシャンよりかは田舎だけど、特に不自由とかはなかった。きっと私はここで一生を過ごすんだ、って思ってた。ツガイと一緒にね」
「ツガイ……」
そうだ。魔族は常に二匹でワンセット。当然だけどテトラにだってツガイがいるはずだ。
「でもね、ある年、第五区街《シャラク》でちょっと厄介な疫病が流行っちゃったの。それで、私のツガイも病気になって死んでしまった。そう――」
テトラはもう一度紅茶を口に含んで続ける。
「私は片一羽《カタワレ》なの」
片一羽《カタワレ》。何かの事情でツガイを無くしてしまった魔族のことだ。
お母さんが言うには、他の片一羽《カタワレ》と心が結びつくらしい。
「じゃあ……今は別の誰かがツガイってこと?」
私の質問に、テトラは首を振る。
「その予定。……まだ、出会えてないの。だから、私には今、ツガイはいないわ」
テトラが言うにはこうだ。
別の誰かと心が繋がったテトラは、その相手の事が頭から離れない日々を送っていた。
顔も姿も分からない。けれども、その相手のことを好きでたまらなく、会いたくてしょうがなくなるらしい。
最初は、第五区街《シャラク》内を探したらしい。
同じように、生まれのツガイを病気で亡くして、片一羽《カタワレ》になってしまった魔族は沢山いたから、その中の一人にいると信じて探したらしい。
けれど、いつまで探しても見つからなかった。
テトラのツガイは第五区街《シャラク》にはいなかった。
けれど、テトラは諦められなかった。ツガイの愛情って、簡単に諦められるほど浅くはないみたい。
自分の心を見つめ直して、会いたい気持ちに身を委ねたら、いつのまにか旅に出てしまっていたらしい。
そして、ここへと辿り着いた。
「新しいツガイが、第三区街《ブルシャン》にいるってこと?」
「多分……。私もなんとなくしか分からないの。でも、確かに近づいている感覚はあるわ。多分、この辺りに私のツガイはいる」
テトラの物言いは確信めいている。私は魔族のツガイシステムが起こす感情が良く分からないんだけど、ツガイが魔族の絆を強く結びつけていることは理解している。
テトラがそう思うなら、ツガイはこの辺り……ブルシャンに住んでいるんだろう。
「じゃあ、探しにいかなきゃ!」
「うん……分かってる。けどね……駄目なの」
「駄目って? なんで?」
テトラはうなだれて、重ねていた手をもじもじしだす。
「……怖いの。ツガイに会うのが」
「怖い? へ? でも、テトラは未来のツガイに会いに来たんでしょ」
「そうなんだけど……近くまで来ちゃったら急に怖くなって……」
「だって……テトラが片一羽《カタワレ》なら、相手も片一羽《カタワレ》なんだよね。向こうだって会いたいと思っているはずなのに」
一体何を怖がることがあるんだろう。
両方好きで会いたいと思っているならとっとと会えばいいのに。
「違う。片一羽《カタワレ》の心に疑いは持っていないわ。そうじゃない……私が心配しているのは……」
冷めてしまったティーカップに目を移し、テトラはそれを手に取る。
カップがカタカタと震え、飲むのを諦めたのか元の位置に戻した。
「人の意識よ。私が心配しているのは」
「人の意識?」
魔族のツガイシステムから離れ、人間のように自由に恋愛できるようになった魔族のことだ。
「え、なんで人の意識が出てくるの?」
「だってそうじゃない。――だって……」
テトラはこんこんと語り出す。
未来のツガイが住んでいるはずの、第三区街《ブルシャン》に辿り着いたテトラは最初、沸き上がる気持ちに胸躍らせながら防壁の門をくぐろうとしたらしい。
けれど、そのときにふと、ある考えが浮かんできた。
私がこんなに好きなのに、相手はなんで私に会おうとしないんだろう、と。
遠く離れているといっても、翼のある魔族の力を使えば五日でたどり着ける距離。
相手も自分の事を好きで、会いたいと思っているのならば、動かないはずがない。
テトラはそこで考え込んでしまった。
そして、一つの考えが湧き出てしまった。
もしかしたら、相手は人の意識なんじゃないか。
その考えだった。
人の意識になった魔族の話は、魔族の間でほとんど伝わっていない。
魔族はツガイを愛するのが当たり前だからだ。
だから、人の意識になった魔族のツガイがどうなるのか、誰にも分からなかった。
ツガイの一方が人の意識になった瞬間、もう一方は片一羽《カタワレ》となって別の誰かを好きになるかもしれない。
けれど、一方が人の意識になっても、もう一方は片一羽《カタワレ》にならずそのまま同じツガイを愛し続けるかもしれない。
テトラの頭を過ぎった心配はそこだった。
自分は相手の事が好きだ。会って生涯ずっと一緒に過ごしたい。でも、向こうは違うかもしれない。人の意識になっていたのなら、自分が来たところで迷惑にしか感じないだろう。
新しく生まれたツガイの心を捨ててまで、人の意識の道を選んだんだから。
その疑惑が生まれた途端、テトラの足は固まってしまった。
「なんで! 会って確かめてみたらいいじゃん!」
「そんなことできない! だって……私はこんなに好きなのに、拒絶されるんだよ。ツガイに拒絶されたら、私はどうすればいいの! 会って一緒に暮らせない、って言われたら、私はその後、何を信じて生きていけばいいの。……ツガイは魔族の全てなのよ!」
「……それは、なんとなく分かるけどさ」
私だって、人間のころ、恋心を持っていた時代は拒絶されたらどうしようって気持ちが常にあった。
だから悠人とは近い位置から離れてしまったり、また近づいてみたりを繰り返していた。
「……でも、やっぱり私は、折角大事な存在の近くまで来たのに、会わないのはおかしいと思う」
「……私だって会いたい。でもどうしても探す勇気が出なかった。だから――」
テトラは考えた。
自分から探す勇気が出ないなら、向こうに見つけて貰えればいいんじゃないかと。
もし仮に、相手が片一羽《カタワレ》だったならば、相手だってテトラに会いたい気持ちが芽生えているはずだ。
何かしらの事情でブルシャンから出られないにしても、ずっと待っていれば、いつかは会いに来てくれるはずだ。
テトラはそう考え、近すぎず、遠すぎずのこの場所に、住まいを作ることを決意した。
そして、何年もの月日が経過した。
「そんなに!? え、じゃあ、その間ずっと相手の魔族は動きがないの?」
デリカシーの欠片もない私の質問に、テトラは頷いて返す。
「もう今は半分諦めてる。多分、私の相手は……人の意識になってるわ」
それは……確かにそうかもしれない。私は心の中でそう思ってしまった。
未来のツガイが近くにいると、テトラが感じているのなら、相手だってそう思っているはずだ。
なのに会いにいかないのはどう考えてもおかしいと思う。他の理由が思いつかないよ。
……でもこんなのおかしい。
だって、テトラは、きっといつか会いに来てくれると思ってここに住んでいたんだよ。
相手も片一羽《カタワレ》のはずだ、って信じて、何年も待っているんだよ。
自分が人の意識だからって、ほったらかしていい存在じゃないよ。
そんなの、元人間の私だって許せない。
「妖精《フェアリー》とも仲良くなって、生活も慣れてきたから……最近は片一羽《カタワレ》のまま、ここで過ごすのもいいかもって――」
「駄目」
「え?」
「絶対、駄目」
私は真っ直ぐ、テトラの目を見つめる。
「このまま中途半端に暮らしてたら、絶対駄目だよ。続けられるにしても、そうじゃないにしても、テトラの気持ちはそのままなんでしょ? 次に進められないまま、ずっとこのままなんて絶対駄目だよ」
「ノエル……」
「私、探してみる。テトラの相手、探してみるね!」
「へ!?」
戸惑うテトラを尻目に立ち上がる。
沸き上がる思いに身を委ねる。
「女の子を待たせておいて、知らんぷりするなんて卑怯。土下座ものだよ。探して連れてきて、ビンタした後にテトラにごめんなさいさせるから」
「そ、そこまでしなくても」
「大丈夫! 人の意識だったとしても、テトラ、綺麗だからきっと好きになるよ!」
なんか楽観的な考えな気もするけど、きっとそうだ。元人間の私がみても、テトラは綺麗だもん。自由恋愛だったとしても選ばれるよ。
テトラに勇気がないなら、私が変わりに探す。
ブルシャンで、テトラのツガイを見つけてみせる。
こんないい子をほったらかしてるオスめ。首洗って待ってろ。
私が白黒、ハッキリつけてやる!
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