[R18]2度目の人生でスローライフ?ハーレムだっていいじゃないか

白猫 おたこ

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第一章 拠点作り

第2話 : 静寂に響く斧音

――銀の木肌と、職人の布石――
 『Infinite Realm』の世界に降り立ってから、一週間が経過した。
 ケンタロウは、現実世界での仕事の合間、あるいは寝る前の数時間を惜しむようにこの仮想世界での「開拓」に捧げていた。

現実のレザークラフト工房でも、納期に追われる時期は寝食を忘れて没頭することがあるが、今の没頭はそれとは全く質の異なるものだった。
誰に強制されるでもなく、ただ自分の理想を形にするための贅沢な時間。

「ふぅ……。こいつは、なかなかいい筋をしているな」

 ケンタロウは額の汗を拭い、目の前に横たわる巨大な丸太を見つめた。
 彼が拠点に選んだ湖畔の森には、現実の針葉樹によく似た、しかしかすかに銀色の光沢を帯びた「銀鱗松(ぎんりんしょう)」が群生している。
非常に硬く、加工には骨が折れるが、耐水性に優れ、建材としては最高級の部類に入るだろう。
 普通のプレイヤーであれば、開始一週間もあればレベルを上げ、初期装備を整え、最初の街へと旅立っている頃だ。
しかし、ケンタロウがこの一週間で振ったのは、剣ではなく「手斧」だった。

「よし、次は枝打ちだ」

 ケンタロウは愛用の手斧を握り直す。
この手斧も、村の交易所で買った安物では満足できず、一昨日に自ら鍛冶場を借りて打ち直したものだ。
現実の革裁ち包丁を研ぐ感覚で、重心のバランスを調整し、刃先を極限まで鋭く磨き上げている。

 コン、コン、と小気味よい音が湖畔に響き渡る。
 木の抵抗感、斧が食い込む時の振動、そして弾ける木屑の香りが、100%の再現率で伝わってくる。
『健太郎』にとって、この作業は単なる「ゲームの作業」ではない。
一本の木と向き合い、その癖を読み、最適な角度で刃を入れる。それは、一枚の牛革から最高の一片を切り出すプロセスと何ら変わりはなかった。

「……あいつらなら、きっと『効率が悪い』って笑うだろうな」

 脳裏をよぎるのは、離婚した元妻や、かつて工房を去っていった弟子たちの顔だ。「もっと早く」「もっと大量に」。彼らはそう言った。
だが、健太郎の指先が納得しないものを世に出すことはできなかった。たとえ時代遅れと言われようと、それが彼の生き方だった。
 作業の合間、ふと昨日の狩猟で使った弓に目をやる。
 村長から譲り受けた古い弓は、弦を張り直し微調整を施したとはいえ、やはり本体の木材にガタが来ていた。
狙いを定めるたびに、僅かな歪みが指先に伝わってくる。

「……この弓も、早いうちに新調しないとな。次は『革』だけでなく、弦や芯材まで、すべてこの森の素材で一から作り上げるか」

 新たな「作るべきもの」をリストに加え、彼は再び斧を振るう。
 
 一本、また一本。
 伐採され、枝を払われ、表面を整えられた丸太が、拠点の予定地に積み上げられていく。
 彼はメジャーすら使わない。「職人の目」が、ミリ単位の誤差を許さずに木材の長さを測り取っていく。
 
 作業に没頭するあまり、腹が鳴った。
 ケンタロウは腰を下ろし、村で買っておいた干し肉を口にする。

「……味が薄いな。やっぱり自分で作るか」

 独り言をこぼしながら、彼は再び立ち上がる。
 レベルを上げるのが目的ではない。だが、腕が上がるのは、悪い気分ではなかった。
夕闇が迫り、湖面が深い藍色に染まるまで、職人の手は止まることがなかった。

【ケンタロウのスキル熟練度】
• レザークラフト:Lv.15 (20/100)
• 解体:Lv.10 (45/100)
• 木工:Lv.6 (20/100) [+95] Level Up!
• 鍛冶:Lv.5 (30/100)
• 採取・伐採:
• 伐採:Lv.4 (20/100) [+82] Level Up!
• 採取:Lv.3 (47/100)
• キャンプ:Lv.1 (70/100)
• 弓:Lv.1 (55/100)
• 短剣:Lv.1 (25/100)
• 建築:Lv.1 (30/100)
• 料理:Lv.1 (40/100)
• 追跡:Lv.1 (20/100)
• 体力向上(新規取得):Lv.1 (70/100) [+40]
• 目利き(新規取得):Lv.1 (35/100) [+35]
【新規取得スキル】
• 体力向上:連日の過酷な伐採作業により発現。
• 目利き:銀鱗松などの特殊な素材を、目視だけで正確に判別・計測することで発現。

【設定資料・状況の確認】
• 拠点建築状況:最高級建材「銀鱗松」の切り出しと加工が完了。
• 布石:村長の弓に限界を感じ、自作の「職人の弓」製作を視野に入れる。
• 食料:自家製干し肉(保存食)の製作を計画中。

――水辺の対話と、革剥ぎの刃――
【「皮」から「革」へ】
 拠点の骨組みが形を成した翌朝、ケンタロウがまず向き合ったのは、昨日仕留めたフォレスト・ディアの「原皮」だった。
 放置すれば腐敗し、ただの生ゴミと化す。それを永劫の耐用年数を持つ「革」へと昇華させるのが、職人の腕の見せ所だ。

「まずは、この冷たさが必要なんだ」

 ケンタロウは湖畔の清流に原皮を浸した。冷涼な水が、皮に残った余分な血を洗い流していく。
 彼は水に手を浸し、指の腹で皮の裏側を丹念に撫でた。
フォレスト・ディアの皮は、想像以上に繊維が緻密で、粘り強い。

「いい皮だ。……だが、これじゃあまだ『素材』にすらなっていない」

【道具の自作:スクレイパー(肉剥ぎ)】
 鞣(なめ)しの工程に入る前に、皮の裏側にこびりついた脂肪や肉片、汚れを完全に削ぎ落とす「裏漉し」が必要になる。
しかし、今持っている革裁ち包丁では刃が鋭すぎて、肝心の皮まで傷つけてしまう恐れがあった。

「道具がなけりゃ、作る。……それが職人だ」

 ケンタロウは焚き火の跡を使い、即席の鍛冶場を設けた。
村の交易所で手に入れた予備の手斧、その折れた刃の破片を火にくべ、赤らめる。

 銀鱗松の硬い切り株を金床代わりにし、石で叩いて形を整えていく。
 作り上げたのは、緩やかなカーブを描く、鈍い輝きの「肉剥ぎヘラ(スクレイパー)」だ。

「よし。これで、皮を傷つけずに余分なものだけを殺せる」

 自作の道具を手に、彼は何時間もかけて皮の裏側を削り続けた。
薄く、均一に。システムのアナウンスが響くが、今の彼にはその数値よりも、指先に伝わる皮の厚みの変化こそが重要だった。

【タンニンの探索】
 下処理を終えた皮を、今度は腐敗しないように固定させる「鞣し」の工程へ進める。
 ケンタロウが選んだのは、植物の渋みを利用するタンニン鞣しだ。

「このあたりなら、オークに似た木があるはずだ」

 目利きスキルを頼りに、彼は森の少し奥まった場所へ足を踏み入れた。
 見つけたのは、鱗のような厚い皮を持つ「アイアンオーク」。その樹皮には、良質なタンニンが凝縮されているはずだ。
樹皮を剥ぎ取る際、彼は偶然にも、傷ついた幹から染み出す「琥珀色の樹脂」を見つけた。

「……こいつは、いい。木工の隙間を埋める防水剤になるし、煮詰めれば強力な接着剤(膠)の代わりにもなるな」

 さらに、足元には独特の強い香りを放つ「月見草」の群生があった。
現実の薬草学に近い知識を持つ彼は、これが保存食を作る際の防腐剤や、皮の臭い消しに使えることを直感した。
 背負い袋を樹皮と薬草でいっぱいにし、ケンタロウは満足げに拠点へと戻る。
 夕日に照らされた湖畔には、銀鱗松の骨組みが静かに佇んでいる。
 その傍らで、いよいよ「革」への変貌が始まろうとしていた。

【ケンタロウのスキル熟練度】
• レザークラフト:Lv.15 (45/100) [+25] ※原皮の下処理
• 解体:Lv.10 (45/100)
• 木工:Lv.6 (20/100)
• 鍛冶:Lv.5 (60/100) [+30] ※肉剥ぎヘラの製作
• 採取・伐採:
• 伐採:Lv.4 (20/100)
• 採取:Lv.4 (15/100) [+68] Level Up! ※良質な樹皮・樹脂の発見
• キャンプ:Lv.1 (70/100)
• 弓:Lv.1 (55/100)
• 短剣:Lv.1 (25/100)
• 建築:Lv.1 (50/100) [+20] ※樹脂による補強の構想
• 料理:Lv.1 (40/100)
• 追跡:Lv.1 (20/100)
• 体力向上:Lv.1 (70/100)
• 目利き:Lv.1 (85/100) [+50] ※アイアンオークの判別
• 接着・加工(新規取得):Lv.1 (15/100) [+15]
【新規取得スキル】
• 接着・加工:樹脂や膠(にかわ)を扱い、素材同士を接合する技術。

【設定資料・状況の確認】
• 道具:自作のスクレイパー(肉剥ぎヘラ)を入手。
• 素材:アイアンオークの樹皮(タンニン源)、琥珀色の樹脂(接着・防水用)を確保。
• 状態:フォレスト・ディアの原皮が鞣しの準備段階へ。
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